コラム

2015年以前のコラム

■2017年10月10日 国際喘息学会(インターアズマ)日本北アジア部会が開催されました

 10月5日,6日の両日,熊本市にて第27回の国際喘息学会(インターアズマ)日本北アジア部会が開催されました。会長は前・熊本大学呼吸器内科教授の興梠博次先生でした。埼玉医大アレルギーセンター勢といたしましては呼吸器内科・小児科のスタッフが参加させていただきました。
学会前に開催されました役員会には小児科徳山研一教授と筆者呼吸器内科永田が出席いたしました。席上,来年度のインターアズマは日本北アジア部会のみとしてではなく,東京で4日間にわたって世界大会として日本が担当して開催されることが報告されました。欧米からも多くの参加者があることが期待されます。
 さて本学会では香港のLeung教授の招請講演,興梠会長のPresident lectureに続きまして,特別講演1として筆者が「Is allergen-immunotherapy necessary for management of asthma?」のタイトルで講演させていただきました。

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 現在の薬物療法では喘息が根治できないことが判明した今,アレルゲン免疫療法にかかる期待は大きいものがあります。日本では欧米や韓国に数十年遅れましたがようやくダニアレルゲン免疫療法が施行できるようになり,今後の普及に当センターとしても尽力してまいりたいと存じます。日本アレルギー学会が発行しているスギ花粉症とダニアレルギー(喘息,鼻炎)についてのふたつの「アレルゲン免疫療法の手引き書」は埼玉医大アレルギーセンター勢が主力で作成させていただいてもおります。講演のラストはいつものように本学キャンパスの写真をつかって締めくくらせていただきました。
 ランチョンセミナーでは英国サザンプトン大学のPeter Howarth教授が重症喘息の病態についてとくに免疫学的・分子遺伝学的面から豊富な情報を披露してくださいました。なおHowarth教授はそのまま10月10日には埼玉医大においでくださり,臨時特別アレルギーフォーラムとして御講演をしてくださることとなりました。
 午後の一般演題のポスターセッションにおいて,呼吸器内科の内藤恵里佳助教,内田義孝助教,杣知行准教授がそれぞれ発表されました。

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 内藤恵里佳助教は卒後まだ4年目ですが,アジア部会とはいえ早くも国際学会デビューです。受け答えも立派なものでした。本学卒業生でもあり,本学学生などは身近な先輩の活躍をお手本にしていってほしいものとおもいます。内田義孝助教は本年度春の米国アレルギー学会(AAAAI)ではすでに本場英語圏でのoral presentationまで経験されておられ,場数を踏んでおられるからか,非常に落ち着いた発表ぶりでした。現呼吸器内科の医局長でもありさすがの貫録(?)でした,このおふたりはそれぞれ喘息の気道炎症病態についての臨床研究でのご発表で,杣知行准教授が指導されたものでした。杣准教授は翌6日朝には一般演題口演の座長もご担当されました。難しい演題がならんでいましたが堂々とさばいておられました。
 6日午後には昨年の韓国アレルギー学会会長として,筆者を講演者として同国にお招きくださった,ソウル大学のSang Heon Cho教授が特別講演をしてくださいました。高齢者喘息についてのおはなしでしたが,社会の高齢化に伴い韓国でも大きな問題となってきていること,若年者と比較して免疫学的背景あるいは炎症病態などに差異があること,治療に難渋する場面が多いことなどを,アジアの喘息研究のエースのおひとりとして素晴らしい御講演内容でまとめておられました。
 前述いたしましたように来年の本学会は世界大会として日本が当番国となっての開催となります。当センターからも小児科・内科が力をあわせ,埼玉医大の,そして日本の喘息・アレルギー研究の力強さを示して参りたいものとおもっております。(文責:呼吸器内科 永田真)

■2017年6月30日 第50回アレルギーフォーラムが開催されました。

 2017年6月22日夕刻に、本学本院キャンパス第4講堂にて第50回アレルギーフォーラムが開催されました。梅雨のじめじめした空気とは裏腹に、大多数のみなさまにご参加いただき熱気あふれる勉強会となりました。
 特別講演は、慶應義塾大学医学部呼吸器内科専任講師の福永興壱先生より「重症喘息について臨床・基礎から考える」というテーマで御講演を賜りました。
 まず、本邦の気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の潜在患者数はそれぞれ約800万人、約530万人ととても多いものの、医療機関で実際に治療を受けている患者数は少ないと考えられるという現状についてお話しいただきました。広く知られている通り、吸入ステロイド療法のガイドラインによる提唱と普及に伴い、気管支喘息患者の救急受診は減少していますが、それでも多くの方が、苦しい思いをしていらっしゃるにもかかわらず、医療機関を受診されていないという事実に大変驚きました。また、実際に気管支喘息の診断が正しいものかどうかを常に念頭に置く必要があるということを、実例をもとにお話しされていました。また、気管支喘息患者のなかの約1/3の方が、症状が改善したのちに吸入ステロイドを中止してしまうとのことで、これは実際臨床の現場で患者さんにうまく説明が行き届いていないということを示唆するもので、ひとりの呼吸器内科医として筆者も責任を感じました。ついで重症喘息についての研究のなかで御高名なKeio-SARP(Severe Asthma Research Program)についてご説明いただきました。もともと、気管支喘息という病気はさまざまなフェノタイプがあり、そのフェノタイプ別で治療を考えていくというオーダーメイド治療をしていこうという見解があり、当アレルギーセンターなどで積極的に行っているアレルゲン免疫療法もその一端であります。そのフェノタイプを考えるうえで重症喘息患者を色々な臨床像から分類するという欧米のSARP研究があり、それをもとに慶應義塾大学グループで行っている御研究です。またAERD(Aspirin-excerbated respiratory disease)について、そして好酸球性副鼻腔炎の患者の鼻茸中の好酸球を用いた網羅的脂質解析を行い、局在における脂質メディエーター産生のパターンに多様性があるのではないかというお話をされました。脂質メディエーターのなかでもプロテクチンD1という好酸球で産生される物質に着目されており、これは抗炎症作用を有しますが、重症喘息患者の好酸球はプロテクチンD1をはじめとする15-LOX products産生が減弱していると思われるとのことでした。そしてアレルギー疾患の近年のトピックスである抗体製剤についてのお話があり、最後のtake home messageとして、症状が残っていることをきちんと医師に伝えられる患者は全体の16%しかいないというAWARE studyについてご説明いただき、患者さんから情報を引き出すことの難しさや大切さを痛感させていただきました。
 慶應義塾大学医学部においてBest Teacher Awardを受賞された福永先生ならではの、基礎研究のお話がありつつ、若手医師や研修医にとってもとてもわかりやすく大変勉強になる御講演で、あっという間に閉会となってしまいました。素晴らしい御講演を賜った福永興壱先生へこの場をお借りして感謝を申し上げます。
(文責 呼吸器内科 宮内幸子)

■2017年2月13日 アレルギー週間市民公開講座2017を開催しました。

 当センタースタッフが中心となり、公益財団法人日本アレルギー協会が主催する2017年度のアレルギー週間市民公開講座が2月4日土曜午後に開催されました。今回の会場は、当大学病院にとっては近接市であって、いわゆる医療圏のなかにある坂戸市の、坂戸駅前集会施設でありました。坂戸市はちょうどこの時期に「スギ花粉飛散量日本有数の地?」となることで全国的にも有名で、とくにスギ花粉症のかたはおそらくみなさんがとても憂鬱な気分になられているのではないかとおもわれました。気管支喘息や食物アレルギー、またスギ花粉症を含むアレルギー疾患は、正確な専門的管理・治療をおこなえばかなりの成果をあげることができますが、日本では専門医が少ない現状があります。そして厄介なことには、標榜自由制度のためにアレルギー専門医でないどころか、日本アレルギー学会員ですらない医療機関がアレルギー科を標榜していたりして、混乱に拍車がかかっています。市民講座の大きな意義はこういう患者さんに正しい知識をもっていただき、救済につなげることだとおもいます。そういった視点でまずは企画・司会担当の筆者がオープニングリマークスを述べさせていただきました
 そののち、「スギ花粉症」については埼玉医科大学病院耳鼻科客員教授の上條篤先生に、根本療法であるアレルゲン免疫療法についての解説をふくんだ御講演をしていただきました。次いで、「気管支喘息」については当センターOBの現・埼玉県立循環器呼吸器病センター医長の高久洋太郎先生が、各種の吸入ステロイド療法を中心とした薬物管理の重要性を含んだお話をいただきました。そして「食物アレルギー」につきましては埼玉医科大学小児科教授の徳山研一先生から、各種の臨床病型やそれぞれの注意点などをふくんだ丁寧な講義をしていただきました。それぞれのエクスパートの先生がたから市民向けのご講演を頂戴した次第で、いずれも、大変に好評でありました。
 聴衆のみなさんには15分の休憩時間の間に質問をかいていただき、それを集計して分担をきめさせていただいたのちに、ラスト45分間で各演者あるいは筆者がそれを読みながら回答する形式で、Q&Aのコーナーをもたせていただきました。

 食物アレルギーの回避についてのご質問が非常に多かったとおもいます。また、どうやら非専門的な治療をお受けでお困りのかたもおられ、当方からアレルギー科を標榜していてもそれは自由標榜制度のゆえであって専門医を取得している医師のいる施設は非常に少ないこと、日本アレルギー学会の学会員でない医師ですらアレルギー科を標榜している施設があること(これ自体驚くべきことではありますが事実です)、そして「アレルギー専門医」とは例えば注射法の免疫療法や皮内テストを行っていたり、喘息管理にはピークフローなどをもちいていることなどをご回答いたしました。患者さんやご家族の日々の疑問についてのご質問が数々あり、大変に活発な会になったとおもいます。約2時間半があっという間にすぎてしまい、大変有意義な市民講座になったものと考えます。アレルギーに悩む坂戸市民を中心とした患者さんやご家族のみなさんに、少しでも正確な知識をつけていただき、お役に立てたのであればありがたいと考える次第であります。(文責 永田真)

■2016年10月25日「アレルギー・好酸球研究会2016」が開催されました。

 10月22日土曜、東京都千代田区の学術総合センターにおいて「アレルギー・好酸球研究会2016」が開催されました。本研究会は好酸球を中心としたアレルギー性炎症についての全国規模学術集会であり、今回で記念すべき30回目となります。かつては製薬企業さんが主催しておりましたが現在は“民間移行”を遂げまして、私ども埼玉医科大学アレルギーセンターが事務局として運営させていただいております。一般演題を公募しての学会形式で、今回は岩手医科大学呼吸器アレルギー内科主任教授の山内公平先生を学会会長として、約100名の参加者をお迎えして開催されました。
 一般演題数は過去最高の26演題を頂戴し、小規模学会のそれを凌駕するレベルに達しました。これはまさに会長山内教授の御人徳によるものとおもいます。内容的には従来からの好酸球の浸潤や活性化に関するin vitro研究をふくめ、臨床研究、あるいは動物実験での、アレルギー性炎症の成立機序あるいは治療に関する活発な研究演題が全国から寄せられました。埼玉医科大学アレルギーセンターからは、総合診療内科と呼吸器内科との共同研究で、総合診療内科の小林講師が好酸球性肺炎患者さんの気管支肺胞洗浄液の解析結果について、また野口医師がアレルギー疾患における好酸球の浸潤・活性化の新規の機序として、細胞外マトリックス蛋白であるペリオスチンの作用について報告いたしておりました。
 特別プログラムとして、教育講演では東京女子医科大学呼吸器内科の玉置淳教授から「肥満と喘息との関連性」についてご講演を頂戴しました。肥満・脂肪関連の各種サイトカイン群が気道炎症に効果をおよぼしえること、治療には薬物の強化とともに減量が重要であることなどをお話いただきました。
 Key Note Lectureとしまして米国のEric Bradford先生が抗IL-5モノクローナル抗体メポリツマブの重症喘息に対する治療効果について、お話をしてくださいました。ご司会は山内会長の岩手医科大学に所属される中村豊准教授が堪能な英語を披露されていました。
 特別講演としまして、山内会長のご司会のもと、本研究会のコアメンバーでもあります東北医科薬科大学教授の大野勲先生が「ストレスと喘息・アレルギーとの関連性」に関連して御講演をしてくださいました。学生の試験期間中には神経脳細胞が活性化してその結果気道炎症の悪化がみられる事象などについてのレビューや、同先生のお得意のげっ歯類をもちいたストレス負荷実験での喘息反応の悪化などを鮮やかにお話くださいました。
 終始活発なディスカッションが展開され、レベルの高い、充実した学術集会となりました。岩手医科大学の山内先生、中村先生をはじめ、関係した皆様には深謝いたしたいと存じます。
次年度の本研究会は千葉大学の中島裕史教授を会長として、同じ場所で2017年10月21日土曜に開催予定であります。好酸球性炎症についてのみならず、広くアレルギー性炎症の基礎あるいは臨床にご関心のある皆様のご参加をお待ちいたしております。
 本研究会のHPはhttps://www.sec-information.net/eosinophils/data/announce.htmlとなります。研究会名で検索していただいても簡単にでてくるとおもいます。アレルギー研究にご関心のあるかたにはどうぞご参照いただければ幸いかと存じます。(文責:永田真)

European Respiratory Society (ERS) International Congress 2016  道中記

 9月3日から7日までの期間、ロンドンにおいてERS International Congressが開催されました。今回当科より自分の応募した演題がPoster discussionに採択されたため参加させていただける運びとなりました。このロンドンですが、26年前に徳山教授が留学し研鑽を重ねられた街であり、今年の2月からは当科医局員である古賀先生が留学し研究の日々を送っている非常に縁が深い(注:筆者は初訪問)土地でもあります。
 9/2 成田空港からロンドンのヒースロー空港へ。筆者はこれまで2回ほど海外学会に同行・参加させていただいたことがありますが、出発/到着時の空港であまり良い印象がありません。オーストラリアでは入国時に別室(取り調べ室?)へ連れていかれそうになったり、アメリカでは日本へ帰国する際にボーディングブリッジにいた麻薬取り調べ犬にスンスン嗅がれたり(1度スンスンして直ぐに興味を失ったため何事もなく解放されました)。今回もどうなることやらと一抹の不安を抱えながら空港行きのバスに搭乗しました。結果からすると問題なくロンドンに到着・入国することが出来ました。

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 9/3 朝から古賀先生と宿泊先ホテルで待ち合わせ。「ロンドンは電車の不具合のため“ All Change ! ”とのアナウンスがあって途中で突然降ろされて車両を乗り換えしなければならないことがしょっちゅうあった」。前日、移動時間に徳山教授がおっしゃっていた事態がこの日の朝から発生していました。ホテルのある沿線が車両不具合のため朝から閉鎖されていたのです。当初は地下鉄を乗り継いで会場に向かう予定でしたが、一駅分歩いて、学会会場付近まで続く路線の駅まで歩きます。結局、週末は駅が機能することは無く、学会期間中はこの距離を何度も歩いて往復するこ とになりました。会場はロンドン郊外西側にある建物で2駅にまたがって広がる大きな会場でした。我々以外の日本人の参加者もおり、喘息サマースクールに学生時代に参加していた森住先生(現在は徳島大学呼吸器内科に所属)にも偶然会うことが出来ました。

 初日は会場の設営途中で、開催されている内容は有料セッションやメンバーミーティングが主のため、この後は、曰く『濃縮された、無駄を極力省いた、徳山教授と古賀先生の合議によるディープなロンドン観光』を行いました(ピカディリーサーカスや大英博物館、コヴェントガーデン、中華街などを訪れましたが、詳細は省略します)。
 9/4 朝から学会会場へ。自分の発表するセッションは後日でしたが、どのような形で開催されているか確認するため教授と別行動で発表会場へ向かいます。ここで初めて知ったのです、Poster Discussionというセッションの恐ろしさを・・・。1時間ほど自分のポスター付近で質疑応答に答えた後、残りの時間で発表者一人一人が自分の発表の要点を説明。その後さらに質疑応答を行うというもの。しかもこの質疑応答時にはスライドやポスターの使用は皆無であり何も補助するツールが無い状況下、英語で話さなければならないということに。この後から気が気でない状態に陥りました。
 9/5 日中は学会を聴講。千葉大の先生や岡山大学の先生のポスター展示を手伝ったり発表を参考にさせていただきました。夕方から古賀先生の研究室へ。以前徳山教授が通っていたラボでもあります。ここに飾られていた写真を教授は感慨深く眺めた後、翌日の発表に向けて指導がきっちり入りました。

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 9/6 この日は朝1番で発表。開始15分前に会場に入りポスターの掲示を行います。最初の1時間はポスター傍に立ち見てくれた人からの質問にかろうじて答えます。残り1時間で件の要約発表/質疑応答が開始となりました。結論をいうと、一人ずつのディスカッションに時間がかかりすぎてしまい、自分の名前を呼ばれる前にtime upとなり、演壇に立つことはありませんでした。教授からは「“I came here to make a presentation from Japan !” とchair personに言ってこい!!」と冗談で言われましたが・・・。セッション終了時、Chair personを務めた二人は発表者全員の発表の場を与えられなかったことで明らかに意気消沈しているし、他の人に肩をたたかれながら「Don’t mind」なんて声かけられちゃっているし・・・。そんなこんな自分の発表は終了しました。この日の夜に古賀先生がお世話になっているImperial College の伊藤一洋先生と会食。現在の英国事情など色々とお教えいただき、大変楽しいひと時を過ごさせていただきました。伊藤先生、ありがとうございました。

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 学会内容ですが、メガスタディの発表も日本より活発な印象を受けました。特に、そのような発表の場合、それによるコストダウンがどれだけ期待できるか?という内容が常に盛り込まれていた印象を受けます。日本は皆保険であり、小児の場合ある年齢まで自治体の補助が受けられるためコストに関する認識が薄れがちですが、対費用効果も含めて医療なのだと学会を通じて再認識させられました。
蛇足ですが、ロンドンは言われているほど食事は不味くなく、いろいろな国の食事を楽しむことが出来ました。電車やバスの交通も整備されていて比較的住みやすいのでは?と感じられました。喫煙率と道路の汚さ(吸い殻のポイ捨てやゴミの散乱程度)を除けば。
(文責:小児科 盛田 英司)

■2016年9月24日 第26回 国際喘息学会日本・北アジア部会が開催されました。

 2016年9月17日から18日の合計2日間、福岡国際会議場で第26回国際喘息学会日本・北アジア部会が開催されました。この学会は2013年の第23回のときは呼吸器内科の永田真教授が会長となって東京で開催されたそうですが当時自分はまだ学生でした。今回、当センターでは小児科・呼吸器内科から一般演題また招待プログラムの司会・演者として多数が参加いたしました。台風接近で、飛行機の遅延等も心配され、両日共に大雨の中での開催とはなりましたが、プログラム自体は円滑に進行し、活況を呈しておりました。
 福岡国際会議場は博多駅から車で10分程度にあり、晴れていれば海辺の潮風香る広い綺麗な会場でした。

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  第1日目は外国からの招待講演が中心に行われました。特に印象に残った講演内容についてですが、シンポジウム1のAsthma in AsiaではGary WK Wong/Dae Hyun Lim の両先生方による喘息の疫学を中心としたご講演でした。アジア地域だけでなく、その他との地域との比較検討を踏まえ、喘息の動態変化や原因となるアレルゲンに地域差、環境差もあり、人種による影響だけでない事などのお話しがされました。特別講演1『AIT-Allergen Immunotherapy in Asthma:update 2016』ではGiorgio Walter Caronica 先生のお話ではアレルゲン免疫療法の皮下注射法(SCIT)/舌下法(SLIT)を中心とした、欧州と米国の差や、SCITにおける複数免疫療法の事や、また免疫療法製剤のなかでもメーカー間での製剤の違いなどがあるため一概に論じることはできないなどの話は興味深い内容でした。
 呼吸器内科の内田貴裕助教が行っている急速アレルゲン免疫療法の臨床研究の発表はポスター展示でした。当科に入院して行うSCIT急速導入療法で、ダニ(+スギ)の維持量迄を短期間に行うもので、今後の課題として、適切な維持量の設定やスギ併用の是非を含む、安全性や効果がテーマになっていくと思われます。今後の研究での評価が注目されます。内田貴裕先生は筆者の1級先輩でまだ卒後4年目ですが、堂々たる発表でのご活躍で、とても頼もしく感じました。

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 第2日目、当アレルギーセンター長である永田真教授(呼吸器内科)が特別講演3として、『Patient-centered にみた気管支喘息の包括的管理』というタイトルで招待講演をされました。内容については、患者個人の喘息のフェノタイプを考慮し、各々に合った喘息の治療が必要である事を、アレルゲン回避が非常に有効な症例など具体的な成績を通しての説明がありました。アレルゲン免疫療法の意義についてや、LPS(エンドドキシン)による好酸球浸潤を示す研究データを含む重症喘息の悪化のメカニズムなどの当センターでの研究成果など、筆者にも大変わかりやすくお話しをしていただきました。最後のスライドでは当センターが事務局で運営しています「アレルギー・好酸球研究会」(2016年10月22日が次回研究会)のアナウンスもされていました。

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 小児科の徳山研一教授はシンポジウム「喘息診療に活かす検査」でご司会を担当されていました。学生時代に講義で教えていただいた徳山先生がこのような学会で座長をされていることを嬉しくおもいました。また小児科の植田穣先生は、ミニシンポジウムに選ばれての口演で、呼吸器内科との共同研究の「ダニアレルゲンによる好酸球の直接的な活性化」についてのご発表をされていました。アレルゲンとしての感作状況とは無関係に、ダニが好酸球機能の刺激因子として直接活性化をおこしてしまうという内容で、非アトピー喘息の患者さんでも室内塵のなかのダニを吸入してしまうと、喘息増悪を生じ得るというショッキングな内容で注目を浴びていました。呼吸器内科の中込講師は、呼吸器内科と総合診療内科との共同研究である、好酸球が細胞外マトリックス蛋白であるペリオスチンに接着してしまうこと、この反応は好酸球の活性化を引き起こすことを発表されていました。
 今回の学会は専門分化された国際学会で、国内で海外の著名な先生方の講演を聴ける貴重な経験、勉強をさせていただきました。その中で埼玉医大勢は大活躍で、母校が喘息・アレルギーの臨床や研究では日本では代表的な施設であるということはとてもよくわかりました。アレルギー治療も今後、今ある対症療法に加え、各患者さん個人に合ったフェノタイプ等考慮したオーダーメイド治療の時代へと進んでいくものと感じました。学会内容を聞き、アレルギーの分野は今後もさらに発展していくと思いました。
(文責 呼吸器内科 家村秀俊)

■2016年5月11日 センター長が韓国アレルギー学会で講演しました

5月6日から7日にかけてソウル市において、2016年韓国アレルギー・喘息・臨床免疫学会(The Korean Academy of Allergy Asthma & Immunology)の学術総会が開催され、センター長が招待されて重症喘息治療についての講演をしてまいりました。

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写真の右側は学会抄録誌、左側は当日会場の案内板で、ハングルの雨嵐のなか、筆者(永田)の名前が辛うじてMakoto NAGATAと読み取れ、たしかに自分の招待講演が組まれているということをどうにか認識できる状況でありました。

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写真上は会長のソウル大学アレルギー科のCho教授。英語が堪能なだけでなく相当の程度の日本語もお話しになるので大変びっくりしました。とても紳士的な、国際人でありました。

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挨拶にきてくれた若手医師がいました。3年前に筆者が会長をさせていただいた「第23回国際喘息学会日本北アジア部会」(東京)の際にシンポジストとしてお招きしたソウル大学のSong先生でした。当センター構成員の本学総合診療内科小林威仁講師と交流があり、今回はその研究仲間である筆者への表敬訪問のようなかたちで、礼儀正しく3年前の謝辞をおっしゃってくださいました。さすがに「東方礼儀国」と思った次第でした。

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自分は「重症喘息治療の新規アプローチ」ということで50分間話をさせていただきました。Th2免疫反応のブロック戦略、好中球性炎症の治療の可能性、すでに存在している抗IgE抗体療法の新規効果、等につきまして、埼玉医大から情報発信してきたいくつかの論文データをまじえ、韓国語はできませんので英語で話をいたしました。冒頭に、埼玉医大の近所にはみなさんのご先祖さまが神様としておられて守って下さっている、と高麗神社さんの話などをいたしましたところ、多少なりとも好感をもってくださったのか、まずまず円滑に英語で笑いをとることはできました〜。

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講演のあと、単独行動でしたが観光らしきものもさせていただきました。写真左は戦争記念館で、ゆっくりみると半日以上はかかるような壮大な博物館。古代三国時代のそれこそ高句麗の戦争の目を見張る展示などから、写真で示す朝鮮戦争で実際に使われた兵器や戦闘機などの展示等々、大変に興味をひくものばかりでありました。韓国の若者たちは学会で日本人よりも元気よく英語でディスカッションに加わってくる場面をよくみてきましたが常に戦争の可能性とともに生きてきたことや、あるいは徴兵制とも無縁ではないのかもしれないともおもいました。写真右は李王朝時代の宮殿のひとつキョンボックンという名所で、これまた壮大なスケールに歩き疲れ果てた次第です。

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最後にごはんのはなしをしますと、宿泊は米国資本のヒルトンだったのですが、朝食バッフェを周囲の方のパターンを真似してとっていたら肉だらけになってしまいました〜(写真上左)。また最後に空港で「プルコギと冷麺セット」をたべましたが冷麺が茶色いカタマリででてきてびっくり!「どうせよちゅうんじゃ〜」と思っていたらウエイトレスさんがこれを細かくハサミで切りにきてくれてまたびっくりでした〜。韓国は近くて遠いというか、いろいろ勉強をさせていただいた学会でした。昨年秋にもWorld Allergy Congressがたまたまソウルでの開催で、その際も招待講演のたぐいでおじゃましており、2回目でしたのでいろいろと楽しむこともできました。多くの先生がたと名刺交換などもいたしましたし、隣国とは切磋琢磨しつつ、ともに今後もアレルギー研究の進展のためにも交流を深めてまいりたいと存じます。(文責 永田真)

■米国アレルギー・喘息・免疫学会(2016)

 2016年度の米国アレルギー・喘息・免疫学会(American Academy of Allergy, Asthma & Immunology, AAAAI)が3月4日から3月7日まで、ロサンゼルスで開催されました。アレルギーセンター外来の東館への移転など忙しい中、スタッフの協力もあり、呼吸器内科から私が、ポスター発表して参りました。アレルギー関係の研究者は、最近はヨーロッパアレルギー学会に参加しているのか(昨年はバルセロナ、今年はウィーン)、今年は特に内科系の参加者が少なかったように思います。筆者は、重症喘息と健常人の好中球またはLPS刺激好中球の、好酸球基底膜通過反応誘導の比較について発表してきました。
 埼玉医大にお世話になってから、AAAAIは毎年参加させていただいておりますが、毎年刺激を受けて帰ってきます。根底にアレルギーの原因となるアレルゲンの研究があり、アレルゲン免疫療法のセッションがほぼ毎日あり、またアレルギーの機序にせまる免疫に関する研究が多数あります。
 私は数年前にウィスコンシン大学に留学させていただき、ライノウィルスの研究をしましたが、今回の学会でもライノウィルス関連の報告も目立ちました。ライノウィルスCの受容体が同定されましたが、その遺伝子変異は小児の重症喘息増悪を誘導しやすいという報告もされており、喘息の病態形成における役割も参加者の興味を引くところとなりました。また昨年、ピーナッツアレルギーのリスクのある子供では、生後6か月から5年間ピーナッツを摂取するほうが、回避するより、ピーナッツアレルギーが予防されるとするLEAP studyが発表されましたが、今年はさらに摂取を1年中止(回避)してもその効果が維持されることが報告されました(LEAP-On study)。さらに、すべての子供を対象にした場合も、生後3か月から、母乳と併用して、6種の食物摂取(牛乳→卵、ピーナッツ、セサミ、魚→小麦)を6か月程度継続すると、卵アレルギーとピーナッツアレルギーが抑制されることが報告され(EAT study)、食物アレルギーのマネージメントに対する考え方が変わりつつあります。
 今回はとうとう、学会が一日減ってしまいました。5年前も書かせていただきましたが、学会の規模が小さくなってきています。ただいつもは半日くらい観光するのですが、学会の内容も濃縮されており、今年はコンベンションセンターにこもりきりでした。縮小しながらも、学会としての質を維持されているのは大変な魅力で、また来年も参加したいと思いました。(文責中込一之)

■2月22日 第44回アレルギーフォーラムが開催されました

 2016年2月18日、スギパウダーがしずかに舞い降りる毛呂山の里では「第44回アレルギーフォーラム」が開催された。今回は耳鼻咽喉科が担当させていただき、関西医科大学から小林良樹先生をお迎えした。演題名は「気道アレルギーに対するトータルケア―Airway Medicine―」である。講演について触れる前に小林先生について少しご紹介させていただきたい。小林先生は関西医科大学の耳鼻咽喉科・気道疾患部門に所属されているが、生粋の呼吸器内科医である。関西医科大学では耳鼻咽喉科の朝子先生と共同して気道アレルギー疾患の診療にあたられている。ご存じのように好酸球性副鼻腔炎と気管支喘息は上気道・下気道と部位は異なるが非常に性質が似ておりOne airway, One diseaseの代表的疾患といえる。双方をトータルにケアすることが疾患のコントロールには非常に重要なのである。個人的なことになるが、私は、以前は鼻副鼻腔を中心に診療していたが、気道疾患をトータルに学ぶことが重要と考え、現在、埼玉医科大学のアレルギーセンターにて研鑽を積んでいるが、小林先生は呼吸器内科の経験を経て副鼻腔炎を診察されていることになり、「上から下」と「下から上」と方向は違うが終着駅は同じであり何か親しみを感じる。
 さて、今回のご講演では、「どのように気道アレルギー疾患を総合的に治療していくかについて」解説していただいた。特にキュバールなどの吸入ステロイドの使用方法についてご教授いただいた。気管支喘息が合併している好酸球性副鼻腔炎症例においては、鼻副鼻腔ポリープのコントロールが困難な症例が少なからず存在する。このような症例では、吸入ステロイド薬であるキュバール®を、スペーサーを用いて口から吸入し、そして鼻から呼出すると、鼻腔にも吸入ステロイド薬が沈着しポリープの縮小効果が得られるというものである。我々も耳学問で以前から吸入ステロイド薬を鼻から呼出する方法を患者にすすめることがあったが、正直、“これは効いた”と実感できる症例を経験したことがなく、その有効性については半信半疑であった。しかし、小林先生は@吸入時にスペーサーを使用すること、A呼出時に3〜4秒程度かけてゆっくり呼出すること、この2点が大事であると述べられた。ただし、時間をかけすぎると効果が減弱するので適切な呼気流量を守ることが重要とのことである(後ほど確認したところによると、パウダー製剤であるパルミコートやアズマネックスなどのタービュヘラー、ツイストへラーでは、スペーサーは使用できないが、できるだけ吸入速度を早くし粒子のエアロゾル化率を上げることによって、同様の呼出方法で効果が得られるとのこと)。その事象について流体力学を応用したコンピューターシュミレーションにて確認するなど、非常にアカデミックな内容であった。また、気管支拡張薬であるβ刺激薬は、下気道のみならず上気道においてもステロイド抵抗性を解除する働きを持つことを解説された。最後に、抗IgE抗体、抗IL-5抗体そして免疫療法を用いたトータルケアについても触れられた。これらはすべて、上・下気道双方をトータルに治療する「Airway Medicine」という考えに立脚しているという話に感銘を受けた。
 今、はるか秩父の山々から毛呂山の里まで風に運ばれ、しずかに舞い降りるスギパウダーも上の気道から入り、そして下の気道にもその魔の手をのばそうとしている。やはり、気道は鼻から肺までつながっているのである。受講された皆さんも、気道を総合的に診療することの素晴らしさを再確認できたのではないでしょうか。もし、研修医の先生方がこのコラムを読んでいたら、是非我々と一緒に診療してみませんか?埼玉医科大学アレルギーセンターで。
(文責 耳鼻咽喉科 / アレルギーセンター 上條 篤)

■2016年度アレルギー週間市民公開講座を開催しました。

 埼玉県は“スギ花粉症のメッカ”であり、例年この時期に当センタースタッフの企画によって公益財団法人日本アレルギー協会主催の「アレルギー週間市民公開講座」の埼玉地区の講座を担当・開催いたしております。本年は第22回アレルギー週間の行事として、「アレルギー週間市民公開講座2016 〜正しい知識が治療の第一歩です。あなたも参加してみませんか〜」という正副タイトルを冠して、2016年2月6日土曜午後、さいたま市の大宮ソニックシティにおいて開催いたしました。筆者(アレルギーセンター長永田)が企画・司会を担当いたしました。
 会に先立ち、まず筆者がオープニング・リマークスを述べさせていただきました(写真1)。近年は、日本で普及が遅れていたアレルギーの根本治療「アレルゲン免疫療法」がようやく日本でもラインアップがそろってくるなど、アレルギー領域の治療の発展はめざましいので、あやしげな民間療法などに頼らず、正しい治療を受けてほしいということを申し述べました。

写真1

 そののち、まず「スギ花粉症」について本学耳鼻科・アレルギーセンターの上條篤准教授が、基本的な診断、アレルゲン回避指導や薬物治療について、さらに最新のアレルゲン免疫療法である舌下免疫療法の話題までを含めて講義を担当されました(写真2)。とくに注目の舌下アレルゲン免疫療法につきましては、筆者が責任編集者をつとめた日本アレルギー学会の「スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引き」の著者(制作委員)のおひとりでもあり、実際的な解説をわかりやすく、そして大変にていねいにされていました。

写真2

 ついで「気管支喘息」については県内の大ベテランで気道疾患の第一人者である自治医科大学附属さいたま医療センター呼吸器内科教授の小山信一郎先生からご講演を頂戴しました。小山先生は特にペットの喘息におよぼす影響を中心に、非常に興味深いお話をしてくださいました。
 さらに「食物アレルギー」について県内で小児領域を中心に精力的に食物アレルギーの診療にあたられておられる、いわつき小児科クリニック院長の戸塚隆太先生から、わかりやすいご講演を頂戴しました。
 15分の休憩時間の間に質問をかいてもらって集計し、ラスト45分間で各演者あるいは筆者がそれを読みながら回答する形式で、Q&Aのコーナーをもたせていただきました(写真3)。

写真3

 この日はどの講演も好評であり、また活発な質疑応答が行われ、約2時間半があっという間にすぎてしまい、ご参加くださった市民のみなさんにとっても、大変有意義な講座になったものと考えます。当アレルギーセンターは国際的な情報発信などもすすめつつ、こういった市民講座などの活動を通じて地元埼玉県のアレルギー診療の啓発・向上にも、今後ますます努力してまいりたいと存じます。
 最後に本市民講座の開催にあたり後援して下さり、また当日の会場係り等々でお骨折りをくださいましたふたつの製薬企業さん、アストラゼネカさんとアステラス製薬さんにこの場をお借りして感謝を申し上げたいとおもいます。
(文責:永田 真)

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