コラム

2014年以前のコラム

■“よくわかる子どもの喘鳴診療ガイド −喘鳴を科学する−”を出版しました

 このたび、“よくわかる子どもの喘鳴診療ガイド −喘鳴を科学する−”(徳山研一:編集、診断と治療社:発行)“を出版いたしましたので紹介させていただきます。
 本書は日常診療上遭遇することの多い“喘鳴”にスポットをあて、的確な診断や治療のためのガイドブックというコンセプトで作成いたしました。実地医家や研修医のみならず小児の呼吸器やアレルギーを専門とする先生方も読者対象とし、喘鳴の発生機序とその多様性、診断・治療上の留意点など喘鳴の基礎から臨床まで網羅した内容としました。
 本書の刊行にあたっては、足立雄一先生(富山大学)、高瀬真人先生(日本医科大学多摩永山病院)、藤澤隆夫先生(三重病院)に編集協力者になっていただき全体の構成についてご助言いただきました。また執筆に当たっては、呼吸器・アレルギー分野の本邦における第一人者の先生方からご快諾をいただきました。埼玉医科大学関係では当小児科教室のアレルギーグループメンバーである植田、盛田、板野、古賀のみならず、小児外科の古村教授、耳鼻咽喉科/ アレルギーセンターの上條准教授、埼玉医科大学国際医療センターの住友教授・安原先生に分担執筆いただきました。諸先生方の協力で迅速に刊行することが出来た次第です。
 本書の企画意図について、以下に“序文”の抜粋を示します。医療関係者の方々におかれましては、本書を是非ご一読いただきご意見・ご批判いただければ幸いです。

よくわかる子どもの喘鳴診療ガイド


序文
−メカニズムを理解して喘鳴の治療を科学する−

 子ども、特に年少児では、よくゼーゼーやヒューヒューといった呼吸に伴う雑音、すなわち喘鳴が聴取されます。これは気道がもともと狭いためで、様々な原因で起こります。そのため原因の鑑別診断が重要なのですが(それによって治療方針も変わります)、必ずしも十分な鑑別がなされていない場合がみられます。
 例えば、ゼーゼーするので、即喘息と診断され喘息治療薬が投与されるといったことは少なくないようです。それで症状が改善すればよいのですが、効果がないのに同じ治療が継続されていることがあります。このような状態に不安を感じ、セカンドオピニオンを求めて受診される患児ご家族が時にいらっしゃいます。実際受診時の聴診ではゼーゼー聴こえるのですが、鼻水を垂らしていて口腔内の視診では後鼻漏があり、鼻汁を吸引してあげるだけで喘鳴がすっきり消失、などという場合も少なからずあります。このような症例で考えられる問題点は、喘鳴の原因が適切に診断されていないことに加え、治療効果がなかったにもかかわらず診断を再考しようとせず漫然と治療を継続していたということです。
 一方診断は正しくても喘鳴に対する治療がovertreatmentなのではないかと思われることがあります。例えば、重症な喘息発作で入院した子どもに初期治療をしっかり行うことは大切なのですが、呼吸困難がすでに消失している時期にゼーゼー(ほとんどは wheezes ではなくrhonchiです)が続くという理由で全身ステロイドなどの強力な治療が依然として行われているような場合です。症例によりますが、ぜんそく発作の回復期には気道過分泌の結果生じた分泌物が残るため喘鳴は長引くものです。このような症例に全身ステロイドをまだ続ける必要があるでしょうか?
 こういった喘鳴の診断・治療にまつわる問題が生じる背景として以下のようなことが考えられます。1つは喘鳴をきたす疾患を鑑別するということに慣れておらず、ゼーゼーしている患者さんに対しては、通り一遍の対応・治療方法で済ましている場合です。一方、喘鳴の原因疾患は正しく診断されているのですが、喘鳴の発生機序の多様性については考慮されず、とにかく喘鳴が聴こえている間は原因疾患の治療を画一的に継続する、という場合があるかもしれません。喘鳴の治療に当たっては、喘鳴の出現する機序は単一ではなく、それぞれの喘鳴の病態に応じて必要な治療法が異なることを認識しておく必要があります。即ち、喘鳴の出現機序を目の前にいる患者さんごとに頭の中で整理しながらその場その場でベストな治療法を選択していく必要があります。しかしながら、現在までこれらの点を踏まえた医学教育が充分なされてきているとは思えません。
 そこで、子どもの喘鳴を診察する機会のある先生方(小児科医、こどもを診察する小児科以外の先生方、あるいは研修医の方たち)を対象に、喘鳴発生の機序を考えた喘鳴性疾患の解説書を刊行したいと考えました。−以下、略−
喘鳴の診療は画一的でなくその場その場で適切な対応は異なってくると思われます。また正解は必ずしも一つとは限りません。個々の症例の喘鳴の原因診断や治療を決めるのは読者である先生方自身です。本書を参考に個々の症例の治療法についてのベストアンサー を考えていただければと思います。本書は喘鳴性疾患について新たな視点から解説したフロンティア的な出版物のため、喘鳴の分類法などについてはまだまだ改変すべき点があろうかと思います。またエビデンスが不十分で、経験的な記述にならざるを得なかった内容もあります。これらの点を含め、色々とご意見・ご批判いただければ幸いです。
 喘鳴はone of the common signs ですが、日常診療において適切な対応が必ずしも行われていない現状があります。現在,医学の領域では様々な診療ガイドラインが作成され、効率的な診断・治療が求められています。 “喘鳴”という症状に対して,本書がより科学的な診療を行うための一助となれば幸いです。

(文責:徳山研一)

■World Allergy Congress 2015の御報告

 2015年10月14日から17日の合計4日間、本邦の隣国、韓国ソウルにてWorld Allergy Congress 2015が開催されました。同国では今年初めにはMARSの流行がみられ、予定通り開催されるか心配しておりましたが、流行も終息し無事に開催されたことにまず安心した次第です。本邦でも肌寒くなってきている頃でしたので、緯度の高い韓国ではさぞ寒かろうと防寒対策をしっかりしていきましたところ、現地では天候に恵まれ、長袖では少し暑く感じるほどでした。
 会場のCoexコンベンションセンターは江南区にある大変広い施設であり、WACの会場以外にもイベントが多数開催されており、参加初日は迷子になってしまいました。
 筆者はあいにく日本での仕事の都合で第2日目からの参加となりましたが、第1日目には当アレルギーセンターの長である永田真教授(呼吸器内科)が『New Horizons Session』にて『Immunotherapy for Japanese Cedar Pollinosis』というタイトルでアレルゲン免疫療法についての招待講演をされました。ご講演を聴かれた日本の他大学の参加者によると、英語にも関わらずなんと会場の笑いを誘って盛り上がりをみせていたそうです。内容については本邦でようやく認可され、様々な施設で開始され始めているスギの舌下免疫療法についてのお話が中心で、まさにセッションの名にふさわしい新たな展望に期待する免疫療法についての内容であったようです。

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 第2日目は朝早くから人種も様々な多くの方々がメイン会場に集まり、国際学会独特の熱気に包まれていました。アメリカのGurjit Khurana Hershey先生の『The Statewide Ohio Pediatric Asthma Repository Collaborative』というご講演ではオハイオ州での小児喘息調査について学ばさせていただき、続いて、『Viral Exacerbation of Asthma』のセッションではオーストラリア、アメリカ、トルコの先生方から喘息の急性増悪について最新の知見をご講演いただきました。特に最初の『The Mechanisms of Viral Induced Asthma Exacerbation: Lessons from Childhood Asthma Cohort』というご講演ではライノウイルスC群に感染した子供で、より多く重症な喘鳴がみられるとのお話があり当センターの中込一之先生(呼吸器内科)の研究と通じる部分がありました。次いで『Social Consequences and Evidence- Based Medicine and Immunotherapy』のセッションでは、イタリア、シンガポール、アメリカの先生方がアレルゲン免疫療法の皮下注射法と舌下法の利点・欠点などを含め免疫療法のお話をしてくださいました。やはりどちらの方が優れているという結論ではなく、さらに研究が必要であると締めておられました。
 第3日目はまずアメリカのDean Metcalfe先生の『The Identification and Treatment of Patients with Monoclonal Mast Cell Disorders』にてMastocytosisについて診断基準や治療などについてのご講演を拝聴し、普段あまり目にすることがない疾患ですが大変勉強になりました。また、午前中には日本アレルギー学会によるシスターシンポジウムも開催され、千葉大学免疫学の中山俊憲先生、理化学研究所の小安重夫先生らのご講演を拝聴させていただきました。新たにTpath2細胞と定義されたIL-5を特異的に大量に産生するTh2リンパ球について、またNK細胞についての基礎的なご講演であり難しくも大変興味のある内容でありました。
 午後には筆者もポスターセッションにて発表いたしました。内容は気管支喘息の喀痰中細胞成分による臨床像についてです。光栄にも本邦でも御高名な先生方に足を運んでいただき、かなり緊張しましたが、今後の研究に対するご指摘を頂戴することできました。

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 喘息以外には皮膚疾患や小児分野など様々な内容で、数百題の一般演題の発表が行われていました。
 第4日目は朝から本邦でご活躍の先生方が座長をお務めになられておりました。『Anaphylaxis through the Life Cycle』のセッションでは、近年日本でもアレルギー学会にてガイドラインが作成されたアナフィラキシーについての内容でした。このセッションも参加者が非常に多く、海外でも注目度の高い内容であると肌で感じることができました。幼児から妊婦や高齢者などそれぞれのアナフィラキシーについての原因や治療法についてなど臨床に直結する内容でした。午後はポスターセッションに足を運びました。前日同様、ポスターセッションも内容が多岐にわたり、非常に勉強になりました。当アレルギーセンターでは小林威仁先生(総合診療内科)も『ATP, a danger signal, activates human eosinophils via P2 purinergic receptors』というタイトルで御発表され、外国の先生方と積極的に御討論されていました。
 学会にて勉学に勤しんだだけではなく、せっかくの機会ですので少しばかり観光もさせていただきました。永田先生、杣先生(呼吸器内科)とユネスコ世界文化遺産に認定されている昌徳宮に行ってきました。1405年に景福宮の離宮として建立された李氏朝鮮の宮殿であり、日本の梨本宮家から嫁ぎ、大韓帝国最後の皇太子李垠の妃となった李方子もこの宮殿で暮らしたという日本としても縁のある宮殿です。後苑という広大な庭園は普段は一般開放されておらず、ツアー時のみ立ち入ることができますが今回運良くツアーに参加でき、紅葉しかかった緑豊かな森のなか、木々に囲まれた趣のある楼閣などを眺めながらの散策は大変素晴らしかったです。また、後苑に存在する、くぐると年をとらないという言い伝えがある不老門をくぐりましたので是非ご利益を賜りたく思っています。そのあとでは韓国料理の本場のサンゲタンなどを戴き、大変美味しいおもいもさせていただきました。

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 このように全体的に大変意義のある体験をさせていただきました。やはりアレルギーは新生児から高齢者までを対象に多くの疾患が存在する分野であり、まだまだ発展途上の事象も多く、全世界で研究者たちが日々研鑽を積んでいると実感されました。自分のような若輩者も少しでもその手伝いができるよう進歩していきたいと考え、帰国の途につきました。(文責 呼吸器内科宮内幸子)

■第42回 アレルギーフォーラムが開催されました(2015年9月11日)

 2015年9月11日、埼玉医科大学病院内講堂において第42回アレルギーフォーラムが開催されました。今回の演者は国立成育医療研究センターの大矢幸弘先生でした。
 皆さんご存知ですか?乳幼児期からのスキンケアが後にアトピー性皮膚炎や食物アレルギーに大きな影響を及ぼすかもしれないということを。
スキンケアを乳児期から施行することで食物特異的抗原への反応やアレルギー発症が抑制されたというデータが近年相次いで報告されています。このため現在では、炎症を起こしている部位(皮膚)からアレルゲンが体内に侵入しやすくなっているため特異的IgE抗体が産生されやすくなり色々なアレルギー疾患(食物アレルギーや喘息など)が発症しやすくなっているという考えが主流になっています。
 「食物アレルギーは母親の食事制限で発症回避可能か?」という疑問に関しては、妊娠時期や授乳中の母親の食物摂取制限は子供の将来的な食物アレルギー発症を抑えられないということが海外の研究データで示されています。また、「食べさせたことが無いのに、うちの子供は初めて食べたものでアレルギー反応が出たのだけれど?」とお思いになる親御さんも少なくないと思います。しかし、本人が食べていなくてもご家族に食べている方がいませんか?食物アレルギーの抗原感作は腸管からだけではなく、経皮感作が重要なようです。例えば鶏卵に関してですが、本人は食べたことが無い・食べていない状態であっても住んでいる家で鶏卵が調理されていると、家の中の埃の中に鶏卵の抗原が混入しています。これが、赤ちゃんの皮膚炎症部位から体内に侵入し抗原感作が成立してしまうとのことでした。大矢先生は食物アレルギー発症を予防するために重要なことは『経皮感作を防ぐ』、即ち『皮膚の炎症を抑制する/コントロールすること』『アトピー性皮膚炎の治療をしっかり行うこと』であることを強調されていました。
 興味深い症例として同じような抗原感作、皮膚症状、病状経過をとっていても、生後4か月から治療した患児と生後11か月から治療(主にスキンケア中心)をうけた患児では、前者は治療開始後特異的IgEが低下し、被疑食品摂取可能となったのに対し、後者では特異的IgEはむしろ高値を示したままで被疑食品摂取によりアレルギー症状を誘発した、即ち食物アレルギーが確立してしまったとのお話をされました。もちろん個人差や環境因子すべてが同じ条件ではないので皆が皆そうなるとは言えませんが、『早期治療・早期介入』で食物アレルギー発症は予防可能な可能性を示されました。
 食物アレルギーの発症予防はアトピー性皮膚炎の発症予防・早期治療が重要な役割を果たすことから乳児期のスキンケアがかなり重要なようです。成育医療センターのデータではスキンケア実施群は未実施群と比較し2歳時点でのアトピー性皮膚炎発症率を40%ほど低くすることが出来たようです。中間解析時点で有意差が生じたというお話でしたからかなりの有効性と思います。
 昨今話題の食物アレルギーですが、発症を防ぐのは「食物を摂取しないこと」ではなく、小さいころから『しっかりスキンケアを行い皮膚の炎症を抑制すること』のようです。そのためにも適切な外用薬治療が必要です。中途半端な薬の使い方では皮膚の炎症は完全に抑制されず、むしろ増悪する恐れもあります。外見からは赤みなどが見つからなくても皮下での炎症は継続しているため、きれいな状態になっても数日間に一度は抗炎症薬を使用する『Proactive療法』の紹介もありました。
 今回のお話し、特にスキンケアについて興味を持たれた方は是非当センター外来にご相談ください。

文責  小児科 盛田英司

■ アレルゲン免疫療法についての市民公開講座が開催されました

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 2015年5月23日埼玉医科大学かわごえクリニックで、「アレルゲンの根本治療」であるアレルゲン免疫療法についての市民公開講座が行われました。公益財団法人日本アレルギー協会と鳥居薬品株式会社の共催ですが、全国に先駆けて、我が国初めての「アレルゲン免疫療法に関する市民講座」が、アレルゲン免疫療法のメッカである埼玉医大関連施設で行われたことは、大きな意味があります。初めての試みでもあり、どのくらいの方が来場いただけるか不安でありましたが、合計198人(!!!)と、予想をはるかに上回り、会場に入れず、立ち見の方がでるくらいでした(写真1)。我々も、アレルゲン免疫療法に対する期待をヒシヒシと感じることができました。
 アレルゲン免疫療法は、病気の原因アレルゲンを少量から開始し、徐々に増量させながら投与し、過剰な免疫反応を弱めていき、症状が起こりにくくする治療法です。体質改善的な治療法で、唯一の原因療法であり、治癒をもたらす可能性があります。今回の市民講座では、センター長永田教授の司会のもとで、食物アレルギー、喘息、花粉症におけるアレルゲン免疫療法についての講義がありました。
 はじめに国立相模原病院小児科の佐藤さくら先生による「食物アレルギーにおける経口免疫療法」についての講義が行われました(写真1)。食物アレルギーの診断から、生活指導、治療、社会問題、さらに研究中である経口免疫療法の話まで、幅広いお話がなされました。
 次に中込が「気管支喘息におけるダニアレルゲン急速免疫療法」についてお話ししました(写真2)。当センターでは、夏以降にダニ(+スギ)アレルギーに対する急速免疫療法を入院で行う予定です。短期集中的に毎日数回の注射を行うことで、目標維持量まで到達しやすくなり、効果が発現しやすくなります。さらに入院で行うため、安全性も担保できます。適応は、ダニが原因の、アレルギー性鼻炎または軽症から中等症の気管支喘息です。希望される方はアレルギーセンターに受診いただければと思います。
 最後に本学耳鼻科上條篤准教授が「スギ花粉症の舌下免疫療法」について講義されました(写真3)。 スギ花粉症の診断から、舌下免疫療法の意義や実際についてのわかりやすい話でした。
 その後、休憩の間に質問をかいてもらい、最後の30分で、我々が質問を読みながら回答する形で、Q&Aコーナーを行いました(写真4)。50以上の質問があり、結局45分かかりました。どの講演も好評であり、質疑応答は活発で、とても有意義な市民講座でした。今後、同様の市民講座が全国的に行われると思います。(文責中込一之)

■2015年3月26日、第40回埼玉医科大学アレルギーフォーラムが開催されました。

 今回は東北文化学園大学 医療福祉学部 リハビリテーション学科 言語聴覚専攻 教授 松谷幸子先生から「好酸球性中耳炎はアレルギー性疾患か?」というテーマで御講演を賜りました。松谷先生は、好酸球性中耳炎を発見された先生であり、今回御講演を拝聴できたことは貴重な経験でした。今回の講演は、疾患概要、問題点、治療法、疾患名の由来についてなど、非常に興味深いものでした。
 好酸球性中耳炎とは、簡単に説明しますと、耳漏所見がニカワ状(ゼリー状)であり、耳漏・中耳粘膜への多数の好酸球浸潤を呈する慢性中耳炎のことです。「中耳に起こる喘息」であると申し上げるとわかりやすいかと思います。滲出性中耳炎型、慢性穿孔性中耳炎型、肉芽型に分類され、その80%が両側性であるとのことです。主症状は耳閉感、耳のかゆみです。通常の慢性中耳炎と比較すると穿孔が大きいという特徴もあり、細菌感染を起こしやすく、伝音難聴の程度が高度になる場合もあります。肉芽型はより重症度が高く、難聴のみならずめまいや顔面神経麻痺なども合併することがあるそうです。
 問題点ですが、@ニカワ状(ゼリー状)の耳漏が非常に除去しにくいことA感音難聴を合併することBANCA関連血管炎性中耳炎との鑑別に苦慮することC経過が長く、確立された治療法がないこと。中でもやはり最大の問題点は再燃を繰り返し聾を来す可能性のある疾患ということだと思われます。@のため、一人一人に費やす処置時間が長くなってしまうことも一つの課題であるとのことでした。Bに関しては、難治性中耳炎の代表として、ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)がありますが、中でも特にチャーグストラウス症候群との鑑別が困難であり、それぞれの予後にも違いがあるため、耳鼻科医としては苦慮するところであります。さらに、Cに関しては、経過の長い疾患であることは、患者さんに不安を与えドクターショッピングをしてしまう方が多くいるとのこと。これがさらに難治を引き起こす原因であろうということもお話いただきました。
 治療法としては、ヘパリン点耳・洗浄、抗アレルギー剤、抗体治療、鼻洗浄・ステロイド点鼻、そしてやはり確実なのはステロイド治療とのことでした。ケナコルトを鼓室内に注入する方法が第1選択とのことでした。全身ステロイド治療の適応症例は、高度な肉芽を伴うもの、末梢血の好酸球の割合が高いもの、難治である感染を伴うもの、急激発症の感音難聴を伴うものであるとのことでした。ステロイド全身投与後ステップダウンし、局所ステロイド療法に持ち込めれば理想的だとのことでした。
 疫学についてもお話くださいました。好酸球性中耳炎は50〜60代をピークに女性に多い疾患です。肥満は重症化因子だそうです。気管支喘息の合併は90%に認め、アスピリン喘息やアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎の合併もあります。特にアスピリン喘息合併例は要注意とのことです。気管支喘息の重症度が高く、喫煙者で気管支壁の肥厚がある人には中耳炎を合併しやすいとのことでした。70〜80%に慢性副鼻腔炎も合併しており、中耳炎も含めてOne airway one diseaseとして解釈される疾患であるとのことです。頻度は0.05〜0.12人/10万人/年とのことですが、難治性であるため加算的に増加傾向にあります。
 以上より、難聴・耳閉感があり、耳がかゆく、喘息悪化時に耳の状態が悪化し、ステロイド治療が奏功するような方にはこの疾患を疑うということになります。
 ここからが発見者からこそ聞ける大変興味深いお話でした。好酸球性中耳炎はそもそも、粘膜そのものに治癒機転がなく、耳漏がなかなか改善しない難治性中耳炎ととらえられており、他の中耳炎と区別すべきだと主張されていたわけですが、元をたどるとこのような症例は1947年のKochから報告があり、1967年にIgE発見の報告がなされる以前からこの疾患に関しては、アレルギー性中耳炎としての報告がいくつか出ていたとのことです。しかし、全身のIgEが必ずしも高値なわけではなく、耳管周囲の状態も悪くなく、さらに副鼻腔炎術後に発症するという特徴から、I型アレルギーに対する治療法を用いていては治癒しないということ、局所に好酸球浸潤が高いことなどが徐々にその特徴としてとらえられていきました。そこで最終的に松谷先生らが好酸球性中耳炎とう名称を提唱されたそうです。しかし昨今では、貯溜液内にはIgEが血清の10倍ほどに上昇していることなどもわかり始め、局所アレルギーという概念に含まれるのではないかという知見も示されました。重症化する前にオマリブマブという抗IgEモノクローナル抗体使用でその後のステロイド使用量を抑えることもできるそうです。
 以上の様に、病気の発見から治療、今後の展望までという壮大なテーマをとてもわかりやすくお話してくださいました。最後に、訓示として、「今目の前にある難題は、明日の教科書である」という内容のお話をしてくださいました。自分自身も、今後の診療において、常に探求心を持って日々過ごしていかねばと心新たにさせられた貴重な御講演でした。
(文責 吉川沙耶花)

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