従来の医学部では、内科学外科学というように学問体系ごとに医学を学んできました。
これを臓器別・系統別に統合し直したものが「6年一貫・統合教育」です。医学を学問体系ごとではなく統合的に学習することにより、医師となり患者さんに接した際、内科、外科等にとらわれることなく、多角的に診る目を養うことができます。また、増加の一途をたどる医学・医療の知識、臨床医として必要な技能と態度を効果的に修得することが可能です。
たとえば肝臓について学ぶときは、病理学、内科学、外科学というように、その臓器を中心にさまざまな角度からアプローチしていきます。そして、ひとつの臓器・系統についてスパイラルを描くように6年間を通して繰り返し学ぶことにより、効率的に知識の集約をし、それを医学に応用する能力を身につけることができます。「疾患を診断し、治療する」という実際の臨床現場を考えれば、学問体系で学ぶよりもはるかに実践的かつ現実的な学び方です。埼玉医科大学ではこの「6年一貫・統合教育」を毎年進化させ、常に最善のカリキュラムで学生の学ぶ意欲に応えています。
入学前に学んだ自然科学の基礎知識を医学に適用し、医科学を学ぶ上で必要な方法と態度を修得します。さらに論理的な思考と表現の技術を身につけ、自らテーマを決めて深く掘り下げることによって、自己学習のスキルを身につけます。
自然科学的な思考は医師にとって必須で、早い時期からの修得が後の基礎医学、病気の基礎的理解、臨床医学の学習に重要です。物理学と化学の視点から、人体機能の関係に深いテーマについて実験を行い、データの統計処理やまとめを経験することで科学的理解のプロセスを修得します。
生命現象の基本は細胞の活動を通して理解されます。分子レベルから人体全体のシステムレベルまで、さまざまな段階の生物現象を理解し、この後の、基礎医学、臨床医学の基本を築いていきます。
人体の構造と機能を学習するうえで基幹となる概念を理解します。臨床医学を学ぶための基盤として、人体の各器官系の構造と機能について理解し、また、遺伝に関する基礎的な知識を修得します。
1年次から4年次まで段階的に続く重要なコースです。すぐれた臨床医となるために、豊かな人間性、幅広い社会的・国際的視野、探求心と科学的思考能力を備えた医師となる素地を養います。また、臨床推論能力・臨床技能も修得していきます。
基礎医学から、臨床医学や社会医学への橋渡しとして設定されているコースです。臨床医学や社会医学を学んでいくうえで必要な基礎について学びます。主に病理学と薬理学の総論的事項、感染、免疫、疫学を学び、「ヒトの病気」コースへ発展させます。
臨床医学の基礎について学びます。5年時の臨床実習を円滑に行うために、診療に関する基本的な事項や臓器別ユニットで各分野の疾患について基本的な知識を学び、最後に臓器横断的な学習を行うことで、臨床医学の基礎的な知識・考え方を修得します。
常に社会的視野を持ち、医療・医学を通して国民の公衆衛生の向上に資するための知識を修得します。
外来、病棟など実際の臨床現場で、医師や他職種が行う医療行為や、各診療科における特徴的な手技・検査の場に参加します。実習を通して、医学生として備えておくべき基本的な臨床技能をはじめ、知識・技能・態度を修得していきます。
コース | ユニット | |
授 業 科 目 |
医科学への道すじ | 医科学入門,科学的思考と表現,自然科学の基礎,医科学の探索 |
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細胞生物学 | 細胞生物学 1, 2, 3, 実習 | |
人体の構造と機能1 | 人体の構造と機能 1-1, 1-2, 1-3 | |
人体の基礎科学 | 人体の基礎科学 1, 2 | |
良医への道1 | 行動科学と医療倫理,キャリアデザイン,臨床推論, 臨床入門, 地域医療とチーム医療、医学英語1, 2, 3, 選択必修 |
講義と実習のユニットがあります。講義では細胞生物学の基本的事項や免疫について学びます。実習ではグループに分かれ、DNAおよびタンパク質に関する、基本的事項を学習します。顕微鏡の扱い方や細胞分裂周期の理解とともに、グループ作業や発表などを通じた表現力を培います。人体の構造と機能コースやさらに上級学年の各コース各ユニットの学習に重要な内容です。
大学の初期課程において物理学、化学、そして数学(統計学)的視点を確実に身につけることは、その後の基礎医学や病気の病気の基礎的な理解、臨床医学の学習に必要不可欠です。
本コースでは「人体の基礎科学」に関係の深いテーマを掲げて、物理学と化学の視点から少人数グループで実験を行います。統計的なデータ解析も含めてその後の検討を行うことで、科学的思考のプロセスを体験します。
医学学習への関心を高めるとともに、医学生として備えておくべき基本的な臨床技能および態度を修得します。体験学習では、3病院での病院見学実習、薫風園での高齢者との交流、光の家での心身障害者との交流、小中学校での学校教育体験を実施します。臨床技能の修得では、埼玉医科大学SP(模擬患者)会のご協力による、コミュニケーションの基礎演習、BLS(Basic Life Support)、バイタルサイン実習を行います。
コース | ユニット | |
授 業 科 目 |
人体の構造と機能1 | エネルギー系、調節系、情報系、構造系実習、物質系実習、機能系実習 1, 2 |
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病気の基礎1 | 病理総論、薬理総論、生体防御総論 | |
良医への道2 | 行動科学と医療倫理、キャリアデザイン、臨床推論、臨床入門、地域医療とチーム医療、医学英語、選択必修 |
エネルギー系、調節系、情報系、構造系実習、物質系実習、機能系実習1および2の7ユニットで構成され、臨床医学の基盤として、人体の各器官系の構造と機能および遺伝に関する基本的知識を、エネルギー系、調節系、情報系の3つのまとまりとして修得します。「すべての臓器・系統が統合されたものが人体」であり、エネルギー系、調節系、情報系の相互のつながりをしっかりと理解します。
臨床医学(「ヒトの病気」コース)への橋渡しとして設定されており、正常な人体の構造や機能に関する知識をもとに、臨床医学を理解するために必要不可欠な疾病に関する基礎的な知識の修得を目的とします。疾病の発生機序とその結果、薬物の薬物作用や代謝過程、免疫学と微生物学の基礎などを理解します。また各ユニットの実習においては、それぞれの基本的な手技を修得していきます。
医師として必要な知識を身につけなければならないほか、臨床推論能力・臨床技能も着実に修得していかなければなりません。「臨床推論」では、医療の実践において問題解決の筋道を考える力である臨床推論能力を育むため、症例を通して推論の基本を修得します。講義のほか、少人数制のスモールグループ学習においてグループ討論、情報の整理・統合・結論を導き出す力などを養います。
コース | ユニット | ||
授 業 科 目 |
病気の基礎2 | 感染、免疫、疫学 | |
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ヒトの病気1 | 臨床医学の基本 | 診療の基本 | |
臓器別の病気 | 呼吸器、循環器、消化器、血液、腎・泌尿器、生殖器、神経 | ||
総合的な病気 | 内分泌・代謝 | ||
良医への道3 | 行動科学と医療倫理、キャリアデザイン、地域医療とチーム医療、医学英語 |
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臨床実習1 | 導入クリニカルクラークシップ(Pre-CC)1-1,1-2,1-3 |
個々の臓器・系統に関する臨床医学の各論学習を容易とするため、各ユニットに共通する基本的な症候、検査、治療、についての概要を理解します。基本的な症候について、その病態と原因疾患の知識、医の倫理・人の死などを理解し、実際に行われる診療の流れを身につけます。4年次の後半から始まる臨床実習の準備段階として重要な学習で、幅広い診療視野の修得を目指します。
英文医学論文などの読解力は、医師として必要な最新の医学情報入手に必須の能力です。さらに、社会の国際化に伴い、他国の患者さんや医療関係者などとの接触・交流の場において、医療知識を踏まえて英語を用いる機会は増加しています。医学学習の中での英語の使用を習慣化し、継続的に英語力を高めていきます。
Pre-CCには診療科実習、医療面接実習、臨床推論実習、チーム医療実習、基本的診療技能実習があります。チーム医療実習の中でも、看護業務体験実習では、大学病院、総合医療センター、国際医療センターいずれかの病棟に配属され、4日間の実習を行います。その前に、バイタルサインの測定、車いす・ストレッチャー移送、感染予防を目的とした正しい手洗い法など看護業務の基礎的な技能を身につけます。
※CC:Clinical Clerkship(診療参加型実習)
コース | ユニット | ||
授 業 科 目 |
ヒトの病気2 | 臓器別の病気 | 感覚器、皮膚・運動器 |
---|---|---|---|
統合的な病気 | 感染、免疫、腫瘍、画像、母体・胎児・新生児、小児、精神、救急・麻酔 | ||
社会と医学 | 疾病の予防と対策、環境と健康、社会 | ||
良医への道4 | 行動科学と医療倫理、地域医療とチーム医療、医学英語 | ||
臨床実習3 | クリニカルクラークシップ(CC)Step1 呼吸器内科、心臓内科、内分泌・糖尿病内科、 リハビリテーション・緩和医療・在宅医療、腎臓内科、 血液内科、リウマチ膠原病内科、消化器内科、神経内科、 産婦人科、小児科、総合診療内科、神経精神科、消化器外科、 心臓外科、呼吸器外科、整形外科、脳神経外科、眼科、 耳鼻咽喉科、皮膚科、泌尿器科、検査・病理・輸血、 麻酔科、放射線科、救急科、選択科、特別演習 |
地域社会における健康関連事象に関する課題について学び、その現状を把握して専門職種との連携や地域医療の重要性について学ぶユニットです。1~4年次までの4年間、多様な地域医療の実践家の講義を交えて、ヒューマンケアをベースとして、地域で求められる医師像について考え、社会科学的、予防医学的な心を持って地域医療に貢献できる臨床医となるための素養を育みます。
Pre-CC2には診療科実習、地域医療実習、臨床推論実習、臨床病理実習、基本的診療技能実習があります。診療科実習では3病院の診療科に行き、臨床現場で症候をベースに学びます。
併せて臨床推論実習では、症候のグループ討論や、臨床問題の演習によって問題点を抽出、情報を整理・統合して結論を導き出す能力を養います。また、本格的な臨床実習に向けて基本的診療技能を修得します。患者さんへの配慮、身体診察法や基本的臨床手技などを少人数グループに分かれ実習します。年末には、その学習成果を問う共用試験OSCEが実施されます。
※OSCE:Objective Structured Clinical Examination(客観的臨床能力試験)
コース | ユニット | |
授 業 科 目 |
臨床実習3 | クリニカルクラークシップ(CC)Step1 呼吸器内科、心臓内科、内分泌・糖尿病内科、 リハビリテーション・緩和医療・在宅医療、腎臓内科、 血液内科、リウマチ膠原病内科、消化器内科、神経内科、 産婦人科、小児科、総合診療内科、神経精神科、消化器外科、 心臓外科、呼吸器外科、整形外科、脳神経外科、眼科、 耳鼻咽喉科、皮膚科、泌尿器科、検査・病理・輸血、 麻酔科、放射線科、救急科、選択科、特別演習、クリニカルクラークシップ(CC)Step2 |
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臨床実習で患者さんから学ぶ一方で、臨床症例を題材に臨床推論能力を徹底的に鍛えるのが特別演習です。ここでは重要な症候について、病院群の中から学生の意見も取り入れて選抜された教員が臨床症例を提示し、学生はクリッカーで能動的に参加しながら、鑑別診断を行い、検査計画や治療計画を考えていきます。クリッカーによる回答結果は即座に提示され、自分の理解度が確認できます。
コース | ユニット | |
授 業 科 目 |
臨床実習4 | クリニカルクラークシップ(CC)Step2 |
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総合学習 | 総合学習A,B,C、達成度評価 |
学生が診療に参加する高度な臨床実習です。指導医と一緒に患者さんを担当します。コミュニケーション能力、地域医療、チーム医療、リサーチマインドについての学びを深めます。全員が少なくとも1クール(4週)は大学指定の学外実習施設で実習をします。さらに、学生の希望をもとに、例年約1/6の学生は1クール学外(海外も含む)実習を行っています。
令和2年度より共用試験化される「臨床実習後OSCE」は、医学知識の応用力、理解に基づく臨床技能を評価する試験で、この試験に合格することは卒業要件でもあります。約2年におよぶ臨床実習を通して身につけておくべき臨床能力、すなわち医療面接、身体診察、情報から診断を導く臨床推論力、さらには症例のプレゼンテーションなどの能力が重要視されます。4年次の共用試験臨床実習前OSCEに比べて実践的な内容です。
国家試験出題ガイドラインに準拠した症例提示形式の授業で、6年間の総復習と弱点の補強を行います。7月までは医療総論、内科総論/各論、9月からは専門性の高い診療科の授業を展開。卒業試験後に臨床実習の総チェック。医師国家試験では臨床問題が重要視されるため、必須の症例を提示し、実践的な授業を実施します。なによりも臨床推論能力を高めるシミュレーションにつながっています。