ゲノム科学部門
概要 研究概要
 

 2003年4月にヒトゲノム塩基配列の完全解読が達成され、その後モデル動物として重要なマウスやラットのゲノムの塩基配列も決定され、時代はまさにポストシーケンスの時代、機能ゲノム学の時代に突入しています。遺伝子の塩基配列が決定されても、ゲノム上のどの部分が本当の遺伝子であるかは、まだ完全には同定されていません。ましてすべての遺伝子の機能の解明は、まだまだ今後の課題であります。当部門では、次世代シーケンサーやDNAマイクロアレイなどを用いたゲノムワイドな解析と、遺伝学的なアプローチから疾患遺伝子の同定や病態解明を行っています。
ゲノム科学部門の研究の大きな柱の一つとして、ミトコンドリア呼吸鎖異常症を対象に、次世代シーケンサーなどを用いた解析により原因遺伝子を同定し、患者細胞等の検証実験を通して疾患発症メカニズムの解明を目指しています(図1)。
もう一つの柱としては、脂肪細胞分化あるいは骨芽細胞分化時の転写制御ネットワークを解明して、メタボリック症候群や骨粗鬆症などの生活習慣病の病態解明ならびに、これらの病態改善のための創薬標的の描出や診断マーカーの開発を目指しています。また、糖尿病の再生医療への応用を目指し、iPS細胞や体細胞の線維芽細胞や脂肪由来細胞から高効率で安全性の高い膵β細胞・膵島の作製・ゲノム医学的解析・機能評価を行っています。
さらに、我々が近年独自に発見した消化管由来生理活性遺伝子に注目した研究も進めています。この生理活性遺伝子は糖尿病や膵臓β細胞と関連することが判明しており、これを標的とした基礎研究から臨床応用の可能性を模索する研究を行うことで、糖尿病治療あるいは膵β細胞の再生医療に画期的なブレークスルーを開くことを目指しています。
このようなヒトの疾患に迫る研究を積極的に展開することにより、基礎研究と臨床研究の橋渡しを目指しています。

図1

図1

 

図2

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スタッフ スタッフ
■教 授(部門長)  奥田 晶彦
■講 師  松本 征仁, 水野 洋介
■助 手  八塚 由紀子
■特別協力研究員  シー チャーン リム
■大学院生(博士課程)  ヌルン ナハール ボルナ, 湯本 愛実
 塘田 健人, 林 直樹, 伊神 英治
■特任研究補助員  清水 千春, 石田 道子, 大久保 桃絵
■客員教授  須田 立雄, 岡﨑 康司
■客員准教授  豊島 秀男
■客員講師  今井 敦子
■共同研究員  佐藤 毅
テーマ 研究テーマ
1)
ミトコンドリア呼吸鎖異常症(MRCD)の原因遺伝子の解明
 
1-1)
全エクソン解析やミトコンドリアゲノム解析、微細染色体異常の解析によるMRCD原因遺伝子の同定
 
1-2)
MRDCD患者細胞などを用いたMRCD原因遺伝子とミトコンドリア機能異常の関連の解明
2)
生活習慣病・多因子疾患(メタボリックシンドローム・糖尿病・骨粗鬆症など)における遺伝子ネットワークの描出とその遺伝的素因の解明
 
2-1)
多分化能を持つ間葉系細胞を用い、脂質代謝と骨代謝に関連する遺伝子の転写制御ネットワークの描出と病態解明、治療への応用
 
2-2)
生活習慣病、多因子疾患の病態におけるncRNA(非コードRNA)やmiRNA(マイクロRNA)の意義の探索
3)
糖代謝疾患、糖尿病の再生医療を目指した膵β細胞・膵島の再生ゲノム医学研究
 
3-1)
ヒトiPS細胞からの膵β細胞と膵島の再生誘導系による、化合物スクリーニングやシングルセル解析を用いたβ細胞の再生促進経路の解明
4)
生活習慣病の改善に働く新規標的遺伝子の探索・機能解析
 
4-1)
生理活性ペプチドを標的とした糖尿病治療戦略の検討および臨床応用へ向けた分子基盤の解明
 
4-2)
遺伝子改変モデルマウスの表現型解析
 
4-3)
iPS細胞から膵β細胞への分化誘導に対する効果
5)
臨床診断・治療を視野に入れたトランスレーショナル・リサーチ疾患遺伝子同定,診断マーカー開発,テーラーメード医療および新規生理活性物質の探索
文献 主要文献
Borna N.N, et al. Novel mutation in TAZ causes mitochondrial respiratory chain disorder without cardiomyopathy. Journal of Human Genetics in press, (2016)
[PMID:28123175]
Yamashita-Sugahara Y, et al. An inhibitor of fibroblast growth factor receptor-1 (FGFR1) promotes late-stage terminal differentiation from NGN3+ pancreatic progenitors. Scientific Reports 6: 35908, (2016)
[PMID:27786288]
Okazaki Y, et al. IARS Mutations Cause Growth Retardation with Prenatal Onset, Intellectual Disability, Muscular Hypotonia, and Infantile Hepatopathy. Am J Hum Genet 99:414-22, (2016)
[PMID:27426735]
Imai A, et al. Dried blood spots for newborn screening allows easy determination of a high heteroplasmy rate in severe infantile cardiomyopathy. International Journal of Cardiology 221:446-449, (2016)
[PMID:27409572]
Kohda M, Tokuzawa Y, Kishita Y, et al. A comprehensive genomic analysis reveals the genetic landscape of mitochondrial respiratory chain complex deficiencies. PLOS Genet 12(1) e1005679, (2016)
[PMID:26741492]
Iseki H, et al. Combined Overexpression of JARID2, PRDM14, ESRRB, and SALL4A Dramatically Improves Efficiency and Kinetics of Reprogramming to Induced Pluripotent Stem Cells. Stem Cells. 34(2):322-33, (2016)
[PMID:26523946]
Kishita Y, et al. Intra-mitochondrial methylation deficiency due to mutations in SLC25A26. Am J Hum Genet 97(5):761-8, (2015)
[PMID:26522469]
Nakachi Y, et al. Gene expression profile of the neonatal female mouse brain after administration of testosterone propionate. J Sex Med. 12:887-96, (2015)
[PMID:25630233]
Okazaki Y, et al. COQ4 mutations cause a broad spectrum of mitochondrial disorders associated with CoQ10 deficiency. Am J Hum Genet 5;96:309-17, (2015)
[PMID:25658047]
FANTOM Consortium and the RIKEN PMI and CLST (DGT). Gene regulation. Transcribed enhancers lead waves of coordinated transcription in transitioning mammalian cells. Science. 347: 1010-1014, (2015)
[PMID:25678556]
  【主要文献詳細】
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