ゲノム医学研究センターの役割と展望
 ヒトゲノム解読計画は、人類が月面への着陸を目指したアポロ宇宙計画に次ぐ20世紀最大のプロジェクトとして、1990年にスタートし2000年6月にその概要版の完成が発表され、最終的に2003年4月14日に解読完了の発表がなされた。この結果からヒトの遺伝子は約30,000個程度と推測されたが、その後の研究でタンパク質非コードRNAも非常に多く発現されていることが証明され、これらを含めると正確な遺伝子の数について言及することは非常に困難であると考えられている。ヒトゲノムは30億塩基対の情報から成り立っており、これらの情報がすべて解読されたことにより、医学生物学の研究手法は大きな転換期を迎えた。一方でこれらの塩基配列が解読されても遺伝子の正確な機能や生体内での働き、病気との関連についてはまだまだ未解明の部分が山積しており、世界中でゲノムに書かれた遺伝子の機能について探索するプロジェクトが進行している。このような世界的情勢の中で、ゲノム医学研究センターは、「ゲノム情報に基づく遺伝子医学の総合的研究・開発」を目指して2000年に設立された。ヒトゲノムプロジェクトの終了宣言の後、ポストゲノム時代の流れとして遺伝子の機能を網羅的に調べる機能ゲノミクスの流れが盛んになり、その手法論として遺伝子転写産物を網羅的に調べるトランスクリプトーム解析や、タンパク質の網羅的解析であるプロテオーム解析、代謝産物の網羅的解析であるメタボローム解析などが盛んに行なわれるようになってきた。またこれらのトランスクリプトーム、プロテオームあるいはメタボロームの相互関係解明を目指したネットワーク解析あるいはパスウエイ解析という手法論も盛んになりつつある。当ゲノム医学研究センターではこのような潮流をしっかりと捉えつつ、真に医学の発展に向けた研究を推進するために、研究員一同、日夜研鑽を重ねている。初代所長を務められた村松正實前所長のもとに集まってきた新進気鋭の部門長が中心となって、各部門の特色を生かした研究を推進するとともに、新しく設立された国際医療センターを中心とする臨床家とともに医療の現場における病態の解明・診断への応用・あるいは治療への応用を目標として、綿密に連携をとって研究を進めているところである(トランスレーショナリサーチ:TR)。当ゲノム医学研究センターでは、メタボリック症候群、骨代謝疾患、がんなどの病気を中心としてその病態の解明をめざしつつ、iPS細胞あるいはES細胞などのリソース開発、遺伝子導入ベクターの開発なども積極的に行ないながら、臨床研究開発に結びつくような基礎研究開発を展開している。また2005年に設立された知財戦略研究推進部門と積極的に連携することにより、研究開発に対する知財の確保に努めるとともに、外部TLOとも積極的に連携を進めることにより、産学官連携研究の推進を目指している。初代所長が目指された、若い研究者が切磋琢磨することにより独創的研究を生み出す土壌作りを継承すると共に、研究の成果を積極的に世界へ発信していきたいと考えている。これまで同様の温かいご支援をお願いすると共に、今後益々の御指導、御鞭撻を心よりお願いしたいと思っております。

2008.6月
ゲノム医学研究センター
所長 岡崎 康司

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