アレルギーセンター

アレルギーセンター
アレルギーセンター
Allergy Center
患者さんのニーズに応えるため各診療科と連携し
専門性の高いアレルギー診療を提供します。

診療内容・専門分野

センターの特徴

気管支喘息、食物アレルギー、花粉症・アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患は、重症例を含め増加しています。互いに合併しやすい特徴があり、治療を別々に行うのではなく、患者さんの立場にたった包括的な診療が求められています。埼玉医科大学病院では、2005年から日本の大学病院で初の「アレルギーセンター」が開設されています。本センターでは、患者中心の診療、また地域の患者さんのニーズに応えるため、呼吸器内科と小児科を基盤に、皮膚科、耳鼻科、眼科と連携して、先端治療をふくむ専門的でかつ包括的な診療を行っています
 
主な診療範囲は、気管支喘息、慢性咳、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎、花粉症、アトピー性皮膚炎、ハチアレルギーなどです。原因となるアレルゲンを、プリック(皮膚)テストや血液検査を用いて明らかにします。アトピー性喘息、アレルギー性鼻炎やスギ花粉症に対しての根本治療であるアレルゲン免疫療法や、各種のアナフィラキシーの決定打的治療であるエピネフリンの自己注射システムなどの専門的医療サービスを、提供させていただきます。(主に小児科では)食物アレルギーに対して食物経口負荷試験を行い、食物アレルギーの診断及び管理を行っております。局所麻酔薬アレルギーに対しては、薬剤のチャレンジテストをしております。当センターで長期方針が決定できれば、ご紹介元になるべくお返しすることを推進いたしております。専門医の管理が必要な重症の患者さんや、特殊治療を必要とする場合などは、当センターで継続的に診療させていただきます。
 
なお、従来から皮膚科が診療してきた疾患、例えば、アトピー性皮膚炎や薬疹、金属アレルギーなど単独の場合は皮膚科に受診されてください。同様に、純粋な耳鼻疾患は、まず耳鼻科に受診されてくださいますよう、お願いいたします。

埼玉医科大学病院の包括的アレルギー疾患診療システム

主な疾患

気管支喘息

気管支喘息は、気管支のアレルギー疾患です。症状は、夜間および早朝に多い咳、喘鳴(ヒューヒューする)、呼吸困難です。気道でアレルギー反応が起きて、慢性的に腫れている状態、つまり慢性炎症性の病気です。家のホコリのなかにたくさんあるダニに対して、アレルギーを示すことが多く、その他に花粉、毛のある動物、カビ(真菌)類もアレルギーをおこす原因(アレルゲン)となります。アレルギーをおこす悪玉の抗体は「IgE」と呼ばれるたんぱくの一種です。IgとはImmunoglobulinの略で「免疫グロブリン」という免疫を担うたんぱくです。ダニアレルギーの患者さんは検査などをしますと、ダニに対するIgE抗体がみつかります。そこにダニを多くふくむほこりを吸うと、気道でアレルギー反応が生じ、気道には好酸球と呼ばれる白血球の一種が集まってきます。集まった好酸球が、気道を腫れさせたり、収縮させたり、敏感にしてしまう物質をまき散らして、患者さんを苦しめているのです。また、気道が慢性的に腫れているところに、各種の刺激(冷気、運動、受動喫煙、カゼをひくなど)が加わると症状を誘発します。

対策で重要なことは、アレルゲンを増やさないこと、受動喫煙などの刺激を回避することなどの環境整備です。代表的なアレルゲンのダニを増やさないためには、換気をよくして毎日清掃すること、カーペットをひかないこと、布製のソファーや座布団などの使用を回避することなどが重要です。真菌(カビ)の場合も同様です。喫煙は患者さんご自身が禁煙する必要があることは当然ですが、受動喫煙も強い刺激となります。ご家族に喘息の発症があった場合には、ぜひ、ご一家をあげての完全禁煙をおすすめいたします。
治療薬でもっとも基本的なものは、吸入ステロイドです。特に気管支拡張薬との「配合剤」が活躍しています。症状を予防し、生活をよい状態に維持してコントロールするには、規則正しく使用することが基本です。ただし吸入療法は対症療法です。喘息を治してくれるわけではなく、吸っている間はよくても、やめるとほとんどの患者さんは再発してしまいます。そこでアレルゲン免疫療法のような、体質改善の治療を行うことがあります。

アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎は鼻で起きるアレルギー疾患です。症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまりで、アレルギー性結膜炎を合併し、目のかゆみを伴うこともよくあります。通年性と季節性があり、通年性では主にほこりの中のダニが、季節性では春先にスギやヒノキが原因となります。春の花粉症には、ハンノキなどのカバ科の花粉症もあり、これは、リンゴなどのバラ科の果物による食物アレルギーの原因にもなります。そのほか初夏からはカモガヤなどのイネ科、また秋の花粉症としてはブタクサやヨモギなどのキク科、の花粉症があります。

対策は、喘息と同じように、アレルゲンを増やさないことが重要です。ダニアレルギー性鼻炎に対する対策は喘息と同じです。スギ花粉症に対しては、花粉飛散情報に注意し、外出時にマスクやメガネを使うこと、表面が毛羽立った毛織物などの衣服の使用は避け、帰宅時には衣服や髪をよく払ってから入室すること、飛散の多いときはふとんや洗濯物の外干しは避けることが重要です。

治療は抗アレルギー薬や点鼻ステロイドを使います。またダニまたはスギに対するアレルゲン免疫療法はアレルギー性鼻炎の標準治療で、とても良く効きます。薬剤治療に抵抗性のある場合は手術治療を選択することもあります。

食物アレルギー

近年食物アレルギーが急増しています。主な原因は、鶏卵、牛乳、小麦でしたが、年齢によって種類や順位が異なってきています。近年、幼児期の木の実類アレルギーが増加していますし、果物アレルギーも激増しています。

ハンノキ、ブタクサ、ヨモギなどによる花粉症では、花粉に交叉性のある果物などの摂取後に口のなかがかゆくなるなどの「花粉-食物アレルギー症候群」がしばしば見られます。またカニやエビなどの甲殻類、イクラなどの魚卵類、魚類、ソバ、肉などによる食物アレルギーも見られます。小麦アレルギーでは、小麦摂取後に運動することで発症する「小麦依存性運動誘発アナフィラキシー」という食物アレルギーが知られています。甲殻類や桃などの果物でも同様のことがみられます。近年は、美容関連の食物アレルギーも増加しており、例えば、スキンケアでおこるハチミツなど使用した食物成分のアレルギー、フィッシュコラーゲン含有化粧品使用後の魚アレルギーなどがみられます。さらに魚に寄生する寄生虫のアニサキス、小麦粉などの中に混入したダニによるアレルギーも知られています。

治療はアレルゲン回避が原則ですが、小児では食物経口負荷試験によって摂取しても安全な量を確認し、その量を継続して摂取していくことで、体がその食物に慣れていき(耐性獲得)、将来的には摂取量を増やしても症状が出ないようになっていく方法も行っています。

また、アレルギー症状が出現したときの治療は大切です。症状の程度に合わせて治療を行います。じんましんやかゆみに対しては、抗ヒスタミン薬を使い、症状が重篤で、全身に及び急速に進行するアナフィラキシーではアドレナリンの筋肉注射が必要になります。アナフィラキシーを起こす可能性のある患者さんは、日常生活でアナフィラキシー反応が生じたときに自分で注射することのできるアドレナリン自己注射薬(商品名エピペン)の処方を受けることができます。当センターでは、どのようなときにどのような治療が必要なのか、アドレナリン自己注射薬の使い方を間違えないように、医師や看護師により繰り返し説明しています。

さらに、アナフィラキシーを起こしやすくさせる増強因子を避けることが重要で、運動、入浴、疲労、ストレス、飲酒、かぜ、非ステロイド系鎮痛解熱薬の摂取などが、アレルゲンの摂取と重ならないように気を付けましょう。
アナフィラキシーを起こしやすくさせる”増強因子”
  1. 運動
  2. 疲労、ストレス、睡眠不足
  3. かぜ
  4. 月経(前)
  5. 温度差(高くても低くても)、湿度
  6. 飲酒
  7. 非ステロイド系鎮痛解熱薬
  8. 入浴
  9. 感作されている花粉アレルゲンへの大量曝露
食物アレルギーで花粉症のかたに気をつけていただきたい食品
花粉季節 花粉 交差反応がある植物性食品
ブナ目 カバノキ科 シラカバ属・ ハンノキ属 シラカンバ
ハンノキ

オオバヤシャブシ
バラ科 リンゴ、モモ、サクランボ、イチゴ、ナシ、ウメ、ビワ
マタタビ科 キウイ
セリ科 ニンジン、セロリ、フェンネル、クミン、コリアンダー
ナス科 トマト、ジャガイモ
クルミ科 クルミ
そのほか マメ科:大豆(豆乳)・もやし
ピーナッツ、へーゼルナッツ、ブラジルナッツ、ココナッツ
裸子植物 スギ ヒノキ ナス科 トマト
イネ科 カモガヤ
オオアワガエリ
マグサ
ウリ科 メロン、スイカ
ナス科 トマト、ジャガイモ
そのほか バナナ、オレンジ、セロリ
キク科ブタクサ属 ブタクサ ウリ科 メロン、スイカ、ズッキーニ、キュウリ
バショウ科 バナナ
キク科ヨモギ属 ヨモギ セリ科 セロリ、クミン・コリアンダーなどのスパイス、ニンジン
そのほか キウイ、ピーナッツ

関連診療科

治療方法・検査方法

治療方法を全て開く
アレルゲン免疫療法
方法
重症アレルギー疾患に対する抗体療法
方法
アナフィラキシーの自己治療システム“エピペン”
方法
局所麻酔薬アレルギーに対するチャレンジテスト
方法
食物経口負荷試験
方法

診療スタッフ

永田 真(呼吸器内科教授)喘息、アレルギー性疾患、アレルゲン免疫療法
中村 晃一郎(皮膚科教授)アトピー性皮膚炎、じんましん
徳山 研一(小児科客員教授)小児喘息、アレルギー性疾患
上條 篤(耳鼻咽喉科客員教授)アレルギー性鼻炎、好酸球性副鼻腔炎・中耳炎
杣 知行(呼吸器内科教授)喘息、アレルギー性疾患、アレルゲン免疫療法
中込 一之(呼吸器内科教授)喘息、アレルギー性疾患、アレルゲン免疫療法
小林 威仁(総合診療内科准教授)喘息、アレルギー性疾患、アレルゲン免疫療法
板澤 寿子(小児科准教授)小児喘息、アレルギー性疾患
内田 義孝(呼吸器内科准教授、病棟医長)
細川 悠(耳鼻咽喉科講師)
盛田 英司(小児科講師)
古賀 建史(小児科講師、非常勤)
小川 俊一(小児科助教、非常勤)
岡田 慶介(小児科助教)

診療実績

  2020年度 2021年度 2022年度
内科 新患患者数 198人 192人 223人
内科 外来患者数 8,314人 7,924人 7,926人
小児科 外来患者数 1,938人 2,580人 2,724人
皮膚科 合同診 95人 32人 33人
エピペン処方 153件 164件 155件
プリックテスト 35件 30件 40件
食物負荷試験指導(小児) 153件    
呼気NO 1,266件 514件 613件
モストグラフ 2件 0件 0件
キシロカインテスト 4件 6件 4件
免疫療法
 新規導入
840件
33件
901件

830件

抗IgE抗体療法 244件 228件 188件
抗IL-5抗体療法 244件 236件 213件
抗IL-5α受容体抗体療法 141件 157件 173件
抗IL-4/IL-13受容体抗体療法 33件 48件 38件

業績

2022年 アレルギーセンター業績

著書
原著
総説
書籍編集企画
学会主催
学会・学会関連学術集会招待演者
講習会
学会発表(一般演題)
テレビ・ラジオ出演
講演
一般市民講座

アレルギー専門医取得支援プログラム

当センターは日本アレルギー学会の認定するアレルギー専門医取得のための研修施設です。学内外を問わず、専門医取得希望のある医師に、専攻生などで参加いただければ取得機会を提供いたします。月に2回のセンター内での小勉強会、また年に6回の学内講演会「アレルギーフォーラム」で知識の習得をサポートします。
詳細は永田favre4mn@saitama-med.ac.jpにご連絡ください。
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