泌尿器科

解説

• 尿の結晶が成長すると尿路結石になります。上部尿路結石（腎結石、尿管結石）と下部尿路結石（膀胱結石、尿道結石）に分類されます。上部尿路結石が全体の90％以上を占めます。
• 腎尿管結石はありふれた病気です。日本人男性では7人に1人が、女性では15人に1人が一生に一度はこの病気の診断を病院で受けます。好発年齢のピークは男性は40歳代、女性は50歳代です。
• 結石の成分はカルシウムを含むことがほとんどです。動物性タンパク質、塩分、果糖の摂取などが関係するといわれています。肥満、糖尿病、高血圧といった生活習慣病の患者さんに尿路結石症が多いことが示されています。また日本人男性の結石患者さんでは特に肥満が多いことが報告されています。
• 大きさが10mm以上の尿管結石や、発症後1-2か月をたっても自然に排斥されない尿管結石では、腎機能の悪化や感染のリスクがあるため結石を除去する治療が勧められます。また10mm以上、あるいは症状を伴う腎結石も治療をお勧めすることが多いです。

治療方法

• 体外衝撃波結石破砕術（ESWL）：体外で発生させた衝撃波によって体の中にある結石を破砕する方法です。多くは無麻酔での治療が可能です。当院では１泊２日の入院での治療を行っています。治療が成功するかどうかは結石の大きさ、腎臓内での位置、体表から結石までの距離などに影響されます。
• 経尿道的結石破砕術（TUL）：尿道から細い内視鏡（尿管鏡）を腎臓へむけて挿入し、尿管や腎臓の結石をレーザー装置などで破砕する方法です。治療に用いる機器の開発により、近年進歩を遂げています。ほとんどの結石の位置と大きさでESWLよりも治療の成功率が高いですが、３泊４日程度の入院と麻酔を必要とします。
• 経皮的結石破砕術（PNL）：おもに2cm以上の大きな腎結石に対して行われる方法です。体表から腎臓へ向かって5-10mmのトンネル（腎瘻）を作成し、尿管鏡よりも太い内視鏡（腎盂鏡）を挿入し、結石をレーザーや超音波、あるいは圧縮空気式装置などで破砕する方法です。当院では成功率を高めるため、体位を工夫して経尿道的破砕術を併用して行うことがあります。ESWLやTULと比較すると入院期間の延長や外科的な処置を必要とするような合併症の頻度が高く、具体的には敗血症、出血、他臓器損傷などが起きることがあります。

解説

• 日中にトイレが近い、夜間の睡眠中にトイレに起きるといった症状だけでは過活動膀胱ではありません。
• トイレが近いだけでなく、急に起こる我慢できないような強い尿意（尿意切迫感）があるときに、過活動膀胱と診断されます。切迫性の尿失禁の症状を伴うこともあります。
• 膀胱炎などの炎症、膀胱結石などの尿路結石、膀胱がんや前立腺がんなどの悪性腫瘍でも同様の症状がでることがあります。症状が急に始まった場合や強い場合は病院で検査を受けることをお勧めします。
• 過活動膀胱の原因として神経の病気（脳血管障害を含む脳疾患や脊髄疾患など）や前立腺肥大症（男性の場合）などがあります。明らかな原因を特定できない場合も多く、血流障害などの加齢による膀胱の変化が関与していると考えられています。

治療方法

• 行動療法（カフェイン摂取の制限や減量など）や薬物療法が治療の中心です。これらを３か月以上継続しても効果が不十分な場合は難治性の過活動膀胱と診断されます。
• 難治性過活動膀胱に対して磁気刺激療法、ボツリヌス療法、仙骨神経刺激療法を当院で受けることができます。詳細は担当医にお尋ねください。

解説

• 男性の尿道の周りにある前立腺が大きく（良性の過形成）なることで起こる病気です。
• 排尿に関係するさまざまな症状の原因となったり、膀胱結石、尿路感染症、腎不全などを引き起こすことがあります。

治療方法

解説

• 骨盤臓器脱：女性骨盤の筋肉がゆるむことで、支えていた膀胱、子宮、直腸が下がって腟の出口から出てくる病気です。
• 腹圧性尿失禁：尿道を支えている筋肉や靭帯がゆるんだり、膀胱出口のしまりが悪くなることなどが原因となります。
• 間質性膀胱炎：膀胱を原因とする慢性の骨盤部の痛みや不快感があり、強い尿意や頻尿などの症状を伴っているにもかかわらず、原因となるような細菌・結石・腫瘍などが見当たらない場合に診断されます。
• 尿道憩室：尿道のまわりに膿がたまる袋ができる病気です。先天性・後天性があります。症状がないこともありますが、痛みを伴う感染をくりかえしたり、尿が出にくくなる場合は、日常生活に支障をきたします。
• 膀胱腟瘻、尿管腟瘻：子宮摘出などの骨盤手術や放射線治療の影響で、おなかの中に漏れてきた尿が腟から体の外に出てくる病気です。日夜を問わない尿もれやおねしょなど、とても困る症状の原因となります。

治療方法

• 骨盤臓器脱：当院の女性骨盤底医学センターと連携してペッサリーなどの保存的治療や腹腔鏡下仙骨腟固定術などの手術治療を行っています。
• 腹圧性尿失禁：減量などの生活指導や骨盤底筋体操による理学療法が中心です。改善しない場合は尿道の後ろにテープを回し、腹圧がかかった時に尿道が動くのを防ぐTVT手術を行います。下腹部の左右に1センチほどの小さな切開を入れ、メッシュ状のテープを挿入します。
• 間質性膀胱炎：根本的な治療はありませんが、保存的治療と薬物治療を組み合わせることで症状を緩和させます。症状が強い場合は膀胱内に薬物（ジメチルスルホキシド）を注入したり、内視鏡的な膀胱水圧拡張手術、病変部の切除・焼灼手術を行っています。
• 尿道憩室：経腟的な手術による切除を行っています。ただし尿道腟瘻、尿失禁など合併症や再発のリスクがあります。
• 膀胱腟瘻、尿管腟瘻：根治手術によって失禁を改善させます。手術の成功率を上げるために、原因となった子宮手術から３カ月程度あけて行う場合があります。

解説

• 前立腺がんに対する手術後の腹圧性尿失禁には、年齢・肥満・骨盤底筋の解剖などの患者さん側の因子、神経や尿道括約筋の温存など手術手技に関連する因子が複雑に関与すると考えられています。
• ロボット手術を中心とした手術技術の進歩は目覚ましいものがありますが、術後の尿もれが良くならない患者さんが今でも一定の割合でいらっしゃいます。

治療方法

• 術後に骨盤底筋体操を６か月以上続けていても、昼間はほとんどすべての尿がもれてしまう場合、また術後１年以上たっても尿パッドを１日３枚以上必要とする場合は手術治療の適応と考えられます。
• 手術は人工尿道括約筋の植え込み術を行います。尿道にシリコン樹脂でできたカフを巻きつけ、尿道括約筋の代わりに排尿をコントロールします。
• 海外では標準的な治療として普及しており、前立腺全摘手術の後、約３％の患者さんがこの手術を受けているというデータもあります。日本では2012年より保険収載されていますが、現在までに人工括約筋埋め込み術を受けたのは、この手術を必要としている患者さんの1/3にも達していないと考えられています。
• 手術の浸透率が海外と比較して低い理由として、尿失禁に悩む患者さんだけでなく、前立腺手術をおこなった医師もこの手術の認知や理解が十分でないことも挙げられています。
• 当科では2019年以降コンスタントに本手術をおこなっており、多くの患者さんから術後に満足の声をいただいております。