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第18号 2002.1.1
   
 
 

子供のめまい
     神経耳科 伊藤 彰紀

   
 

子供に最も多いめまい

 

 子供に最も多いめまいに起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation: OD)があります。これは「身体」の発育に比べて循環器系や自律神経系などの「身体機能」の発育が未熟なために、急に立ち上がった時に必要な頭蓋内への急速な血液供給が間に合わない場合に発症します。いわゆる脳貧血状態です。
 症状は立ち上がった時の「眼前暗黒感」、「ぐらぐらするめまい、立ちくらみ」、「嘔気」、「頭痛」、「腹痛」などです。
 したがって、問診上で典型的な回転性めまいの訴えの場合にはOD以外の他のめまい疾患を考えるべきです。
 1974年に小児自律神経研究会が作成したODの診断項目は大症状と小症状の二つに大別されています。


大症状:
A 立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい
B 立っていると気持ちが悪くなる、ひどくなると倒れる
C 入浴時あるいは、嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる
D 少し動くと動悸あるいは息切れがする
E 朝なかなか起きられず、午前中調子が悪い

小症状:
a 顔色が青白い
b 食欲不振
c 臍疝痛(強い腹痛)を時々訴える
d 倦怠あるいは疲れやすい
e 頭痛をしばしば訴える
f 乗物に酔いやすい
g その他


 図に示したようにODの診断には血圧の起立試験が有用です。これは仰臥位での血圧と立位での血圧とを比較する検査方法です。ODの子供では立ち上がると血圧が急激に低下してしまいます。
 前述したように、この疾患は体が急に成長する時期に循環器系や自律神経系の成長が追いつかなくて起こる症状と考えられています。身体の発育と身体機能の発育との不一致から生ずる症状とも表現できます。したがって体の発育の良い、比較的身長の高い子供に発症しやすい傾向があります。特に学童期の発症が多く、特に10?15才の約5?10%に認められるとされています。
 また血圧が低下している午前中に発症しやすく、季節としては気温の上昇による血圧低下が起こりやすい春から夏にかけて頻回に起こります。数年間は発作を反復しますが、その後の身体機能の成長と共に次第に軽減していきます。ただし、女児では成人後にも症状が続く場合もみられます。
 軽症の場合には無治療で経過を見ますが、ODのめまい症状が強く頻発する場合には塩酸エチレフリン、メシル酸ジヒドロエルゴタミン、メチル硫酸アメジニウム、塩酸ミドドリンなどの昇圧剤の投与を行います。特に片頭痛が随伴する例ではメシル酸ジヒドロエルゴタミンがより有効と考えられます。

   
 

その他の子供のめまい

 

 その他、子供のめまいの原因としては学校や家庭でのストレスによる心因性めまい(心身症)、内耳炎(遷延性中耳炎、ムンプス感染)、てんかんなどがあります。さらに、原因不明の吐き気が持続したり、何となくふらついて体育が苦手になってきた場合などには脳腫瘍も鑑別のひとつと考えて脳波やCT・MRIなどの画像検査を行う必要があります。また大人の反復性めまいの代表であるメニエール病は内耳の病気ですが、以前には子供に稀なめまい疾患とされていました。ただし、最近では10歳以下の子供のメニエール病も散見されるようになりました。これは子供の生活環境が変化してきたためかもしれません。
 以上のように、子供のめまいとしては起立性調節障害が最も多いのですが、めまいの原因疾患には様々なものがありますから、子供がめまいを訴えたら耳鼻科(神経耳科)、小児科(小児神経)、内科(神経内科)などの神経の専門医の診察を一度受けることをお勧めします。

問い合せ先:神経耳科外来
  
電話 049-276-1291

 
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