埼玉医科大学病院HOME > 病院ニュース > 埼玉医科大学病院ニュース第35号

埼玉医科大学病院/病院ニュース/埼玉医科大学病院ニュース第35号

 
第35号 2006.9.1
   
 
 

足裏のほくろは要注意?
     皮膚科診療科長(教授) 土田哲也

   
  1.「ほくろ」とは?
 

 一般用語の「ほくろ」を医学用語にあてはめれば「色素細胞母斑+α」になると思われます。「色素細胞母斑」は、「メラノサイトというメラニンを作る細胞の良性腫瘍」ですので、ここでは「ほくろ≒メラノサイトの良性腫瘍」として話を進めます。

   
  2.「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」
 

 では、「良性腫瘍」とは何でしょう。人間の体は細胞から成り立っていますが、人の体全体を統制のとれた細胞社会とみなした場合、その秩序社会から逸れて別の社会を作って勝手に増える細胞の塊が「腫瘍」です。
 腫瘍には良性と悪性の二種類があります。「良性腫瘍」は局所にとどまって、まだそれなりの秩序を残してゆっくり増えていくのに対して、「悪性腫瘍」は周りの迷惑は顧みずでたらめに増え、挙句の果てにはリンパ管や血管といった管を通路にして他の臓器にまで飛んでいってしまう(転移)無鉄砲なやからです。

   
  3.「ほくろ」と「メラノーマ」
 

 メラノサイトの良性腫瘍が「ほくろ」、悪性腫瘍が「メラノーマ」です。
 メラノーマは、すべての悪性腫瘍の中でもその無鉄砲ぶりは際立っており、転移を起こしやすいことで有名な悪性腫瘍です。

   
  4.「メラノーマ」の原因は?
 

 腫瘍は、細胞の中の司令塔であるDNAの異常により生じます。DNA異常は細胞の性格や顔つきまで変えてしまいます。DNA異常によるメラノサイトの性格変化が少なく、まだ元の細胞社会と共存して暮らせるのが良性腫瘍である「ほくろ」です。
 一方、メラノサイトのDNAに重大な異常が重なり、恐るべき自己中心的な細胞の集まりとなって、もはや共存は不可能になったものがメラノーマです。
 一般的に、DNAを傷つけるきっかけになるものは、化学物質、ウイルス、電磁波(紫外線、放射線)、物理的刺激など様々なものがあります。

   
  5.メラノーマと紫外線
 

 メラノーマの出来易さには人種差があり、白人にずっと多く生じます。白人と日本人の皮膚色の違いは、メラノサイトが作るメラニンという色素の量・質・分布の違いによります(メラノサイトの数に人種差はありません)。メラニンは細胞の中で紫外線などの電磁波を吸収し、DNAが傷つかないように働いています。白人ではこの紫外線防御作用が弱いことが、メラノーマの出来易さに関係します。

   
  6.足裏のメラノーマ
 

 日本人は、紫外線が関与するメラノーマは少ないのですが、足裏のメラノーマが全体の3割にものぼります。「何故、足裏なのか」について明確な解答はできません。ただし、足裏の中でも殆どは土踏まず以外の体重がかかる部位に発生することから、繰り返す外傷などの物理的刺激(前述したDNAを傷つける要素の一つ)も関係する可能性があります。

   
  7.足裏のほくろは要注意?
 

 足裏のほくろは10〜20人に1人位はあります。そういった良性のほくろが途中からメラノーマに変わる可能性はかなり低いと考えられています。殆どの例では、メラノーマは最初からメラノーマだということです。「足裏のほくろは要注意」と言われているのは、「足裏のほくろはメラノーマに変わりやすい」というよりも、「日本人では足裏にメラノーマができることが多く、しかも最初は一見普通のほくろのように見えるので要注意」という意味です。

   
  8.どのように診断するか
 

 肉眼診断が最も重要です。良性のほくろとの見極めには、ABCDルールが参考になります。(1)A(asymmetry):非対称の形、(2)B(border irregularity):不規則な境界、(3)C(color variegation):色むら、(4)D(diameter):大きな直径。良性のほくろはそれなりの秩序をもってゆっくり増殖する一方、メラノーマの細胞はでたらめに旺盛に増殖するため、それはABCの不規則性、Dの大きさに表れてきます。

   
  9.ダーモスコピーという診断方法も役立ちます
 

 ダーモスコピーは、単なる拡大鏡ではなく、皮膚を透かしてみる検査法です。皮膚の表面にゼリーを塗って光をあててみると、皮膚表面の乱反射がなくなって光が奥にはいっていくために、肉眼ではみえない構造が透けてみえます。この手技は良性のほくろとメラノーマの見極めに大変有用です。しかも、傷つけない検査という利点があります。足裏では、良性のほくろは皮膚の溝を中心に色がつくのに対し、メラノーマでは皮膚の丘(溝と溝の間)に色がついているという大きな違いがあります。

   
  10.足裏に黒い病変をみたら
 

 心配があれば、皮膚科を受診して下さい。少なくとも足裏に大きさが7mm以上の黒っぽい病変がある時は一度確認してもらった方がよいと思います。7mmが一つの目安になっているのは、7mmを超えた病変ではメラノーマの確率が高くなることが第一ですが、一方では7mm程度の大きさであればもしメラノーマだとしても早期の病変ですので、その時点でも十分間に合うという意味もあります。

問い合せ先:皮膚科外来
TEL 049−276−1292

 

 
Saitama Medical University Hospital
38 Morohongo Moroyama-machi, Iruma-gun, Saitama, Japan.
Copyright 2006 by Saitama Medical University Hospital.All rights reserved.

埼玉医科大学病院HOME > 病院ニュース > 埼玉医科大学病院ニュース第35号