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第44号 2010.3.25
  
 
 

先進医療紹介
 手術と麻酔 ―悪性高熱症の検査の認可―
 麻酔科
 市原 靖子 ・ 菊地 博達

 

 
   
  
   



 手術を受ける時には必ず麻酔を受ける事になります。麻酔とは、痛みの刺激を与えても感じなくする方法です。全身麻酔は全身のどこに痛み刺激を加えても痛みを感じなくなるばかりでなく、手術中の意識を取り(眠らせる)、筋弛緩(手術を行ないやすくする)、有害な反射を予防することで患者さんの肉体的・精神的苦痛を取り除きます。現在日本における麻酔の安全性は世界の中でも有数ですが完全ではありません。麻酔関連による死亡率は飛行機事故による死亡率とほぼ同率、自動車事故の死亡率の約1/10とされています。しかし少しでも死亡率を低下させるため、麻酔科医は麻酔・手術中のあらゆる異常事態に対処出来るように
しています。たとえば学会等に参加し日々研修を積み、十分な監視装置(心電図など)と薬を用意し、麻酔を行なっているのです。

 

 

 ・悪性高熱症という病気
 

 患者さんの中には特殊な体質を生まれつき持っていて普段は健康に生活をおくっておられても、麻酔に使用される薬で他の人とは異なる反応を示す方もおられます。もともと患者さんの体質のため手術中に使う薬で高い熱を出す"悪性高熱症"という病気です。この悪性高熱症は遺伝性の筋肉の機能の異常が原因です。日常の生活で症状が出ることはありませんが、全身麻酔中使用する誘発薬品により発症します。誘発薬品は揮発性吸入性麻酔薬や筋弛緩薬などです。悪性高熱症はいわばこれら薬剤のひどいアレルギー患者と理解していただければ分かりやすいと思います。この病気の頻度は5万人から10万人に1人と言われています。しかし病気の素因を持った人が全身麻酔を受けることによって急速に症状が進行して適切な処置が行われないと死に至ります。特効薬としてダントロレンがあります。しかしそれがあっても死亡率は17.5%と高く、本人も麻酔科医も全く予期もせず手術中に症状が突如現れるため"麻酔科医の悪夢"とまでいわれています。この病気は血のつながった方で同じように手術中高い熱が出た方・突然亡くなられた方がいらっしゃる場合、悪性高熱症の素因を持つ頻度が高くなります。かつては斜視、眼瞼下垂、側彎症に関連があると言われていました。最近ではある特殊な筋肉の病気、真夏や運動中の熱中症、突然死の家系、(運動性)高C(P)K血症との関連が注目されています。

  
 ・素因を調べる検査はあるのですか?
 

 はい、あります。ただし現在確立した検査方法は筋肉を用いた検査で、侵襲的な検査である上に検査できる施設は限られています。当院でも平成21年10月に先進医療として認可されました。日本でこの検査ができるのは広島大学病院と埼玉医科大学病院の2ヶ所だけです。埼玉医科大学病院の場合、検査の希望があればまず麻酔科外来を予約受診していただき、詳しくお話をお聞きします。そして担当医が検査の必要の有無を判断します。必要な場合、筋肉の検査の前の検査をしていただき、今後の日程等を決めます。またご希望があれば埼玉医科大学ゲノム医学研究センター、国立精神神経センターと共同で遺伝子検査や病理検査.顕微鏡で筋肉の組織をみて筋肉の病気の有無等の検査.も行なっています。なお先進医療の費用に関しては、当科の研究費より一部負担を行い減免しております。詳しくは担当医にお聞きください。

  
 ・悪性高熱症の人は麻酔を受けられないのですか?
  そのようなことはありません。悪性高熱症を誘発する薬を避けて麻酔をしてもらえば良いのです。ただ素因があるかどうか知る事は大切です。なぜならその素因をあなたが持っているとしたらご両親のどちらかは素因を持っているはずです。また半分の確率でお子さんにも遺伝するからです。
  
 ・最後に
 
   
 

 悪性高熱症は発症すれば非常に死亡率が高い病気です。しかしこの病気の素因者であることさえわかっていれば発症を防ぐことが出来るのです。

 なお悪性高熱症についてのより詳しいことについては、
 
 埼玉医科大学麻酔科悪性高熱症ホームページ  http://www.saitama-med.ac.jp/uinfo/masui/MH-Index.html
 をご参照ください。

  
  
 
問い合せ先:麻酔科
049(276)1306
  
  
 
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38 Morohongo Moroyama-machi, Iruma-gun, Saitama, Japan.
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