PDFファイル
(199KB)
※ダウンロードデータはAcrobat Reader4.0でご覧いただけます。
PDF版を正式版とします。
HTML版では図表を除いたテキストを提供します。HTMLの制約により正確には表現されておりません。HTML版は参考までにご利用ください。


埼玉医科大学雑誌 第28巻第1号 (2001年1月) 30頁 (C) 2001 The Medical Society of Saitama Medical School

特別講演

主催 埼玉医科大学総合医療センター・後援 埼玉医科大学卒後教育委員会
平成12年9月18日 於 埼玉医科大学総合医療センター小講堂

ミレニアム・プロジェクトについて

外口 崇

医薬品機構研究振興部


1.医薬品機構研究振興部の業務
 医薬品機構の業務は,研究,調査,救済事業であり,新薬開発,治験相談,研究振興,救済給付など多くの分野で支援活動に当たっている.

2.ミレニアム・プロジェクト
  これは,平成 11 年 12 月 19 日内閣総理大臣の決定により定められたものであるが,それは我が国にとって重要性,緊急性の高い情報化,高齢化,環境対応の三つの分野について技術革新を中心とした産学官共同プロジェクトを構築し,明るい未来を切り開くコアを作り上げようとする構想である.これらのプロジェクトは「21世紀の科学技術」についての意見募集,革新的な技術開発の提案公募の実施を行いながら国民参加のプロジェクトの展開を目指している.
  情報化については@教育の情報化A電子政府の実現BIT 21 の推進があり,高齢化については,@個人の特徴に応じた革新的医療の実現(ヒトゲノム)A豊かで健康な食生活と安心して暮らせる生活環境(イネゲノム)B高齢者の雇用の実現の大規模な調査研究があげられる.また,環境対応については@地球温暖化防止の次世代技術の開発・導入Aダイオキシン類,環境ホルモンの適正管理,無害化の促進およびリサイクル技術の開発B循環型経済社会構築のための大規模な調査研究があげられている.

3.ヒトゲノム・再生医療
  2004年度を目標に痴呆,ガン,糖尿病,高血圧等,高齢者の主要疾患遺伝子解明に基づく,オーダーメイド医療を実現し,画期的な新薬の開発に着手する.また,生物の発生などの機能解明に基づく,拒絶反応の無い自己修復力を利用した骨,血管などの再生医療を実現する.

4.健康で安心して暮らせる高齢化社会
  医療分野ではオーダーメイドの医療,予防,新薬を開発し,再生医療に力を注ぐ.食料分野では機能性食品,病害虫抵抗性作物の開発することを目指す.

5.ゲノム解析とゲノム創薬
  10 万の遺伝子のうち,まず発生頻度の高い3万の遺伝子の解析を早期に完了し,15 万個を目標に SNPs(一塩基多型)を探索解明し,痴呆,ガン,糖尿病,喘息,慢性関節リウマチ,骨粗鬆症などの関連遺伝子を解明する.
  その解析を基に標的遺伝子産物(レセプター・酵素)の選択,候補化合物最適化,前臨床・臨床試験と進めていく.

6.必要な民間と共同研究と特許管理の課題
  ミレニアム・プロジェクトは公平,透明性の高い民間からの参画が必要で,研究者の目的と企業戦略との整合性が必要である.また,特許管理も重要で,特許担当者の確保,国際出願の経費,権利侵害・訴訟への対応が必要である.
(文責 安倍 達)


(C) 2001 The Medical Society of Saitama Medical School