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埼玉医科大学雑誌 第28巻第4号 (2001年10月) 186頁 (C) 2001 The Medical Society of Saitama Medical School

特別講演

主催 化学療法談話会 ・ 後援 埼玉医科大学卒後教育委員会

平成13年6月19日 於 埼玉医科大学第四講堂

エビデンスに基づくがん化学療法

渡辺 亨

(国立がんセンター中央病院内科医長)


 わが国のほとんどの病院で,悪性腫瘍に対する抗がん剤を用いた化学療法は各診療科で個別に行われているのが実情である.しかしながら,抗がん剤のように副作用が強く,一旦誤った使い方がなされると重大な事態を引き起こす可能性がある薬剤による治療は,抗がん剤に関する広い知識と深い経験を有する専門医が,整った医療環境の下で細心の注意を払って行うべきものである.理想的には米国のmedical oncologyのような専門的診療科がこれを担当するのが望まれるが,わが国ではmedical oncologyの専門医は極端に少ないのが現状である.今回お招きした国立がんセンター中央病院内科の渡辺亨先生は,わが国を代表するmedical oncologistの一人で,本学の卒後教育委員会後援の学術集会で『エビデンスに基づくがん化学療法』という特別講演をしていただいた.
 渡辺先生は,先ず安全で効果的な抗がん化学療法のための12か条を示し,その一つ一つについて具体的な解説を加えられた.12か条を列記すると,(1)正しい診断は正しい治療の第一歩である,(2)可能な限り正確な予後の予測を行う,(3)治療の目標を設定する,(4)説明は患者本人に行う,(5)治療の選択はエビデンスに基づいて行う,(6)薬剤の個性とレジメンの個性を知る,(7)副作用の時期と種類を予測する,(8)検査の目的をよく考える,(9)判断は柔軟に,体制も柔軟に,(10)まれな疾患ほど要注意〜肉腫は過誤のもと,(11)個人のミスはシステムで防ぐ,(12)適応と限界を知る,というものであった.これら全ての項目とそこで話された内容は,本学附属病院で行われている診療に直ちに適応されるべき重要なものばかりであった.
 今回の特別講演は,本学附属病院におけるがん化学療法を包括的に検討するために設立された「化学療法談話会」の第1回集会を記念して行われたものであるが,われわれに今後の指針を与えるものとして極めて有意義なものであった.

(文責 別所正美)


(C) 2001 The Medical Society of Saitama Medical School