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原 著
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)の培養内皮細胞におけるCu2+Zn2+-SOD,Mn2+-SOD,NADPHオキシダーゼへの作用
後藤 誠一,井上 郁夫,林 健二
埼玉医科大学第4内科学教室
〔平成13年11月29日 受付〕
緒 言
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ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は,ステロイドホルモン受容体ファミリーに属し,糖・脂質代謝に関与する種々の標的遺伝子を調節している転写因子である1).げっ歯類,ヒトおよび両生類では3種類のPPAR,すなわちPPARα,Nuc1(PPARβまたはPPARδ),およびPPARγが報告されている.PPARαは,肝臓,網膜,消化管粘膜,腎臓の遠位尿細管,心臓,筋肉および褐色脂肪組織に発現することが報告されている2).また,PPARβ/δ/
Nuc1は,普遍的に発現し3),PPARβは両生類で,PPARδはマウスで,Nuc1は哺乳類で,それぞれ同定されている.一方,PPARγは脂肪組織で選択的に発現している転写因子で,脂肪細胞の分化と関連しているとの報告がある4).
PPARは種々の脂肪酸によって特異的に活性化されるが,PPARαは,エイコサペンタエン酸(EPA)のような多価不飽和脂肪酸(PUFA)および多くの高脂血症治療薬であるフィブラート系薬ベザフィブラート5),クロフィブラート,フェノフィブラート6)などにより活性化されることが報告されている.PPARγは,15-デオキシ-δ12,δ14-プロスタグランジンJ2(PGJ2)7-8),ならびにトログリタゾン9)およびピオグリタゾン10)のような種々の血糖降下薬であるチアゾリジン系薬により活性化される.しかし,PPARβ/δ/Nuc1選択的リガンドは,これまでに確認されていない.
最近,PPARαはロイコトリエンB4/アラキドン酸により生じた炎症の持続期間に影響を及ぼすことが報告され11),さらに,PPARγは,炎症反応と深く関与している腹腔マクロファージで強力に発現していることが報告されている12).これらの所見より,PPARαおよびPPARγは,動脈硬化および炎症性病変の病態生理学的変化になんらかの役割を果たしていることが示唆されている.
動脈硬化および炎症は,内皮細胞,血管平滑筋細胞,単球,好中球,リンパ球および血小板など種々の細胞が関与している.これらの細胞の中で,内皮細胞が血小板機能,凝固および血管の緊張に重要で,かつ中心的な役割を果たしており,炎症反応の初期病変として最近注目されてきている.興味深いことに,血管内皮の機能障害は動脈硬化の初期段階で生じており,特に高脂血症,高血圧,糖尿病,喫煙などの動脈硬化の危険因子がある場合に認めれ,それらが集族するとさらに著しく血管内皮の機能が低下すると言われている.最近,我々はPPARαが血管内皮細胞に発現し,デキサメタゾンおよびインスリンのようなホルモンにより制御されていることを報告した13).さらに,PPARαが肝臓でのCuZn-SODの発現と関連していることも明らかにした14).そこで,今回我々は,PPARαによる血管内皮細胞のCuZn-SOD,Mn-SOD,カタラーゼ,NADPHオキシダーゼの制御・調節が,PPARαの発現を変動させることにより,血管内皮細胞の酸化ストレスをどのように変化させるかを検討した.
材料と方法
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細胞の処理
ヒト培養臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)(lot♯31091)は,Cell Systems(Kirkland,Wash,USA)より購入した.これらの細胞が全て内皮細胞であることを確認するため,間接免疫蛍光顕微鏡検査により内皮細胞を第ヲ因子関連抗原でチェックした.HUVECは,10%ウシ胎児血清(FBS),HEPES(15
mM),酸性線維芽細胞成長因子(FGF)およびヘパリンを加えた培地(CS-4ZO-500(大日本製薬))にて培養した.培地は週2回交換し,HUVECは3週間以内に,2〜3回継代した時点で使用した.組織試料は直ちに液体窒素中で凍結し,全RNAを抽出するまで−80℃で保管した.
ベザフィブラートナトリウム(ベザフィブラート)はキッセイ薬品工業株式会社より提供された.ベザフィブラートは,最終濃度0.5μM,1μM,2μM,10μMまたは30μMで用い,培養細胞は上記薬剤と6時間,12時間および24時間インキュベートした.
逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)
PPARα,PPARβ/δ/Nuc1およびPPARγの発現レベルを検討するために逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を実施し,定量的RT-PCRによりいくつかの実験を実施した.市販のキット(Isogen,
Nippon Gene Co. Ltd., Toyama, Japan)を用いて,HUVEC (107細胞)から分離した全RNAを,オリゴ(dT)プライマーおよび市販のキット(GeneAmp
RNA PCR Kit, Perkin Elmer, NJ, USA)を用いてDNA合成のテンプレートとして用いた.逆転写反応は,42℃で15分間cDNAの合成を最大にした後,99℃で5分間加熱して終了させて実施した.得られたcDNAをPCRのテンプレートとして用いた.
PPARα RT-PCR用のオリゴヌクレオチドプライマーは,cDNA配列を増幅するためにデザインし,合成オリゴヌクレオチドプライマーは,Nippon
Flour Mills(kanagawa, Japan)より入手した.PPARαに使用したプライマーは,正のプライマーが5’-AGAACTTCAACATGAACAAGGTCA-3’,逆のプライマーは5’-GCCAGGACGATCTCCACAGCAAAT-3’.PPARβ/δ/Nuc1に用いたプライマーは,正のプライマーが5’-AGCAGCCTCTTCCTCAACGACCAG-3’,逆のプライマーは5’-GGTCTCGGTTTCGGTCTTCTTGAT-3’.
PPARγに用いたプライマーは,正のプライマーが5’-CCCTCATGGCAATTGAATGTCGTG-3’,逆のプライマーは5’-TCGCAGGCTCTTTAGAAACTCCCT-3’.CuZn-SODに用いたプライマーは,正のプライマーが5’-GGCGTCATTCACTTCGAGCAGAAG-3’,逆のプライマーは5’-GGCAATCCCAATCACACCACAAGC-3’.NADPHオキシダーゼの22-kdα-サブユニット(P22phox)に使用したプライマーは,正のプライマーが5’-GGTTGTGTGCCTGCTGGAGT-3’,逆のプライマーは5’-TGGGCGGCTGCTTGATGGT-3’.47-kd-サブユニット(p47phox)に使用したプライマーは,正のプライマーが5’-ACCCAGCCAGCACTATGT-GT-3’,逆のプライマーは5’-AGTAGCCTGTGACGTCGTCT-3’.67-kd-サブユニット(p67phox)に使用したプライマーは,正のプライマーが5’-CGAGGGAACCAGCTGATAGA-3’,逆のプライマーは5’-CATGGGAACACTGAGCTTCA-3’.グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)mRNAの発現を内部標準として測定した.
PCR反応は,変性温度は(94℃で30秒間)および伸展温度は(72℃で90秒間)で,アニーリング温度は(50℃で50秒間)で,増幅サイクル数は33サイクルで,それぞれ実施した.PCR産物は7.5%ポリアクリルアミドゲル(NPU-7.5タイプ,Atto,
Tokyo, Japan)で分離・泳動し,泳動後DNAを10μg/mlの濃度で臭化エチジウムにて染色した.mRNAのレベルと一致するバンドの強度は,紫外線(UV)ボックス画像システムを用いて評価した(Atto).
DNAシークエンシング
自動塩基配列決定装置(ABI PRISM 310 Genetic Analyzer, Perkin Elmer, Foster City, CA, USA)を用いてRT-PCR産物の直接塩基配列決定を行い,全てのDNA塩基配列は両側からのDNA鎖を読むことにより確認した.
PPARs, CuZn-SOD, Mn-SOD,カタラーゼおよびp47phox, p67phox, p22-phoxのウエスタンブロッティング
それぞれの蛋白発現を評価するため,ウエスタンブロッティングを実施した.2次抗体はAmersham ECLキットを用いて検出した.処理済試料を10%ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)に適用し,ニトロセルロース膜(Millipore)に半乾燥ブロッティングを用いて転写し,さらに,膜をTBS-Tween/5%スキムミルクで一夜処理し,ヤギ-抗ヒトPPARs,
CuZn-SOD, Mn-SOD,カタラーゼおよびp47phox, p67phox抗体とともに1時間インキュベートした.ヒトPPARs, CuZn-SOD,
Mn-SOD,カタラーゼおよびp47phoxに対する抗体は,それぞれSanta Curz, Binding Site, Transduction Laboratoriesより得られ,p22phoxの抗体は大阪大学生化学,谷口直之先生より提供していただいた.洗浄後,膜を2次抗体とともにインキュベートし,検出は化学発光検出システムを用いて実施した.
ヒト全長PPARαおよびRXRαのクローニング
ヒト全長PPARαおよびRXRαの開始コドンと終始コドンを含んで,ヒト全長PPARαおよびRXRαが得られるようにプライマーを設定し,ヒト肝臓細胞のライブラリーより精製した.さらに,PCR産物を制限酵素NotI/SalI
によりpCI-neo 哺乳類発現ベクター(Promega, WI, USA)に挿入し,形質変換させた大腸菌に導入した.アンピシリン耐性コロニーを培養し,得られたpCI-neo
哺乳類発現ベクターを上記のシークエンサーにて塩基配列を確認し,ヒト全長PPARαおよびRXRαを得て,それぞれ pCI-neo-PPARα, pCI-neo-
RXRαとした.
ベザフィブラートのPPARαの転写活性
PPARαの促進剤であるベザフィブラートが,実際,PPARαの転写活性を増加させるかを検討した.転写因子であるPPARαが結合する領域(direct
repeat 1: AGGTCA( 1 )AGGTCA)を含む,細胞内レチノール結合蛋白IIのプロモーターをラット全血より調整したゲノムDNAより精製し,ルシフェラーゼ遺伝子の上流のKpn
I/Nco I (pGL3-Basic) (Promega, WI, USA)に挿入し, pCRBPII-Lucとし,TfxTM-50
Reagent(Promega, WI, USA)を用い,マニュアルに従いpCI-neo-PPARαとpCRBPII-Lucをヒト腎由来293 T 細胞にトランスフェクトした.転写活性はRenillaルシフェラーゼベクター(pRL-TK)
(Promega, WI, USA)で補正し,ベザフィブラートを添加していない転写活性をコントロールとして表した.
PPARα過剰発現によるCuZn-SOD,Mn-SOD,カタラーゼおよびp47phoxの発現ヘの作用
血管内皮細胞でのPPARαの作用をさらに確認するため,血管内皮細胞にpCI-neo-PPARαを遺伝子導入した.3 μgのPPARαをTfxTM-50Reagent
(Promega, WI, USA)を使用し,1×106 個のHUVEC/100-mm dishにマニュアルにしたがってトランスフェクトした.トランスフェクト24時間後,培養液中にベザフィブラートを添加し,さらに24時間反応させた.遺伝子導入後,PPARαの蛋白発現をウエスタンブロティングにて評価し,PPARαが過剰発現された血管内皮細胞において,上記した酸化ストレスに関連する酵素の蛋白発現レベルを評価した.
統計解析
パラメトリックなデータは,平均値±SDで表した.群間差はSchefféのF検定により評価した.
結 果
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10%FBSで処理をしたHUVECにおけるRT-PCRによるPPARαの発現をPPARβ/δ/Nuc1およびPPARγ遺伝子mRNAの発現と比較した.PPARαの遺伝子発現は,PPARβ/δ/Nuc1の1/2で,PPARγのそれと比較して2倍強かった(Fig.
1-AおよびB).
ベザフィブラートによって,FBSを含む培地でのHUVECのPPARαのmRNA発現がcontrolに比較して有意に増加した(Fig. 2).また,ベザフィブラートによって,FBSを含まない培地でのHUVECのPPARαの蛋白発現が,12時間で最大であったが,FBSを含む培地では,12から24時間処理した場合が最大であった(Fig.
3).さらに,ベザフィブラートによるPPARαの蛋白質レベルの濃度依存性を検討したところ,12時間後,FBSの有無に関わらず,2μMで最大の発現量を示した(Fig.
4).さらに,ベザフィブレートによるPPARα/RXRαの転写活性を検討したところ,濃度依存的にその転写活性も増加した(Fig. 5).
PPARαの蛋白発現および転写活性を増加させるベザフィブラートは,HUVECにおいて,活性酸素の消去系酵素であるCuZn-SODのmRNA(Fig. 6-AおよびB)および蛋白(Fig.
6-C)発現を増加させた.
活性酸素の産生系酵素である酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)を添加したところ,NADPHオキシダーゼの22- kDa α-サブユニット(p22phox),47-
kDa α-サブユニット(p47phox),67-kDa α-サブユニット(p67phox)の遺伝子発現は増加したが,ベザフィブラートを併用するとその発現量はPMA添加に比較して低下した(Fig.
7).
さらに,PPARαを過剰発現させたHUVECでは,ベザフィブラート存在下でPPARαの蛋白量は増加するが,同時にCuZn-SOD,Mn-SODの蛋白質レベルが有意に増加し,p22phox蛋白質レベルは著しく低下した(Fig.
8).
考 案
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今回の我々の成績により,血管内皮細胞でPPARαの他に,PPARβ/δ/Nuc1およびPPARγも発現することが示唆され(Fig. 1),PPARαのリガンド/促進因子であるベザフィブラート(Fig.
2および3)によって,血管内皮細胞のCuZn-SODおよびMn-SODの発現が誘導され,NADPHオキシダーゼの発現が低下することが明らかとなった(Fig.
4, 6および8).
過剰な活性酸素は,炎症および虚血状態など,病的状態に関連する多くの組織傷害のメディエータとして重要な役割を果たしている.活性酸素は,CuZn-SODおよびMn-SODなどの消去系酵素と,NADPHオキシダーゼなどの消去系酵素のバランスによって調節されている.
内皮細胞自身,O2−およびH2O2を放出し,過剰な活性酸素は,内皮細胞で発現するCuZn-SOD,Mn-SOD,カタラーゼにより代謝され,結果的にH2OおよびO2になる.なかでも,CuZn-SOD,Mn-SODは選択的に活性酸素を捕捉することが知られている.外因性CuZn-SODを投与することは用量依存的に組織に対し有毒であることが報告されているが15),Wangら16)は,最近,内因性CuZn-SODの過剰な発現によって,虚血組織の傷害が防止されたことを報告している.さらに,Wangらは,ヒトCuZn-SODを過剰に発現させたトランスジェニックマウスの内皮細胞で,CuZn-SODの発現が増加したと述べている.さらに,Fangら17)も,内因性CuZn-SODの過剰発現によって,内皮細胞による酸化された低密度リポ蛋白質の上昇が阻害されることを報告した.以上の結果は,内因性CuZn-SOD活性を上昇させることで,アテローム硬化性変化を防止することができることを示している.
さらに,CuZn-SODおよびMn-SODは,活性酸素を捕捉することで,一酸化窒素(NO)の生物学的半減期を延長することも報告されている18-19).Davdaら20)は,PPARαの誘導の影響が少ないオレイン酸が,in
vivoで内皮型一酸化窒素シンターゼ(NOS)の活性上昇を認めないことを報告しているし,Okudaら21)は,PPARαを誘導するEPAはHUVECからのNOの産生を増大させることも報告している.以上,NOの産生の増加は,PPARα活性化によるCuZn-SODおよびMn-SODの誘導に関連している可能性がある.しかしながら,preliminary
dataではあるが,我々はPPARαを活性化するフィブラート系薬で処理することにより,内皮細胞のニトロチロシン含有量が低下することも明らかにしている.ニトロチロシンの生成は,傷害された組織で生じるペルオキシ亜硝酸に起因すると思われ,過剰なNOがスーパーオキシドと相互作用してペルオキシ亜硝酸を生じることによる.以上の結果よりフィブラート系薬は,内皮型NOSを高め,さらに,過剰に産生されたNOを抑制させる作用を有していることも示唆している.フィブラート系薬が,誘導型NOSをも抑制している可能性も考えられる.
最近,我々は,PPARαのリガンド/促進因子であるベザフィブラートが,in vivoにおける肝CuZn-SOD遺伝子の発現と肝PPARα
mRNAレベルとが有意に正の相関を示すことを報告したが14),今回の我々の結果から,内皮細胞においても,活性酸素を捕捉するCuZn-SODに加えて,Mn-SOD遺伝子の発現も,PPARによって制御されていることが明らかとなった.Kimら23)は,すでにCuZn-SOD遺伝子の1.5
- kb上流領域のクローンを作成し,ペルオキソーム増殖因子活性化受容体の反応領域(PPRE)が,CuZn-SOD遺伝子上流の797領域にあることを明らかにしている.したがって,PPARαリガンド/促進因子は,CuZn-SOD遺伝子の転写を,PPREに結合することによって活性化させる可能性が考えられる.実際,PPARαのリガンド/促進因子を培地に加えることにより,内皮細胞のCuZn-SOD遺伝子の発現は増加し,その蛋白発現も増加した(Fig.
6).今回我々の成績は,CuZn-SOD遺伝子のみならず,Mn-SOD遺伝子の発現も,PPARαによって制御されている可能性を示唆しており,今後,Mn-SOD遺伝子の上流領域の解析も必要と思われる.
活性酸素は消去系酵素とともに産生系酵素によっても調節を受けていて,最近になり血管内皮細胞および血管平滑筋細胞での活性酸素の産生系酵素としてNADPH
oxidaseが注目されている.NADPH oxidaseは,そのサブユニットである細胞質型のp47phox とp67phox が,膜結合型糖蛋白のgp91phoxとp22phox
に結合することによって活性酸素を産生する24).血管内皮細胞および血管平滑筋細胞でのNADPH oxidaseの詳細な働きは明らかではないが,我々の検討では,PMAで刺激された状態において,ベザフィブラートの投与により,血管内皮細胞のp22phox,p47phox,p67phox
のmRNAレベルは有意に低下するとの結果が得られている.また,動脈硬化の強い血管での血管内皮細胞および血管平滑筋細胞のp22phoxの発現は増強しているとの報告もある25).フィブラート系薬の抗動脈硬化作用の一部は,スタチン系薬の抗動脈硬化作用の如く26),血管内皮細胞および血管平滑筋細胞での過剰なNADPH
oxidaseの活性の鎮静化作用による可能性もある.しかしながら,血管壁でのPPARとNADPH oxidaseとの関わりについては,まだ詳細には検討されてはいない.今後,NADPH
oxidaseのサブユニットであるp22phox をはじめとして,その他のサブユニットであるp47phox,p67phox,gp91phoxの調節機構の解明が必要となる.
結 論
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PPARαのリガンド/促進因子であるベザフィブラートは,PPARαの過剰発現したHUVECでCuZn-SOD,Mn-SODの蛋白発現を増加させ,p22phox,p47phoxの蛋白発現は低下させた.以上より,血管内皮細胞におけるPPARαは,活性酸素産生・消去系に関与する酵素に作用し,動脈硬化抑制作用を有していることが示唆された.
謝 辞
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稿を終えるにあたり,御指導御高閲を賜りました埼玉医科大学第四内科学教室片山茂裕主任教授に深謝いたします.また,本研究に御協力を頂きました佐藤さわ子実験助手ならびに渡辺こずえ実験助手に感謝いたします.
文 献
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