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埼玉医科大学雑誌 第29巻第1号 (2002年1月) 52頁 (C) 2002 The Medical Society of Saitama Medical School

特別講演

主催 埼玉医科大学免疫学教室 ・ 後援 埼玉医科大学卒後教育委員会
平成13年9月21日 於 埼玉医科大学基礎医学棟4Fカンファレンスルーム

ハンセン病の疾患感受性と病型形成に関わる免疫機構

大山 秀樹

(岡山大学大学院医歯学総合研究科 病態制御科学専攻病態機構学講座歯周病態学分野)


 岡山大学の大山先生をお招きしてハンセン病の免疫学研究のトピックスを御紹介頂きました.先生は邑久光明園をはじめとするハンセン病療養所で長期間歯科診療にたずさわった経験をお持ちで,日米医学協力研究・結核ハンセン病部会の研究員も務めていらっしゃいます.
 同じ抗酸菌感染症でも結核患者のほとんどはM. tuberculosisに対して細胞性免疫応答を示しますが,ハンセン病患者においては,その疾患感受性の個体差に遺伝的要因が大きく関与し,その表現型は単一細菌によるものとは思えない幅広い病型スペクトルを有しています.らい腫型(L型)と類結核型(T型)のハンセン病はそのスペクトル上において両極に位置し,M. lepraeに対する細胞性免疫応答性の違いによって説明付けられます.
 IL-12は細胞性免疫応答を支持するTh1細胞の分化・増殖において中心的な役割を果たしIFN-γ産生を誘導するサイトカインですが,抗原提示細胞(APC)が産生するIL-12とそれに対するT細胞のIFN-γ産生とのバランスの個体差が,L型およびT型ハンセン病患者の細胞性免疫様態を説明づけるとも考えらます.実際,IFN-γ/ IL-12の値はT型患者に比べてL型患者が有意に低く,また,ハンセン病患者由来のT細胞が産生するIFN-γ量は,健常者由来のT細胞が産生するIFN-γ量に比べ有意に少ないことが分かりました.
 このIL-12に対するIFN-γ低産生性の原因を追求したところ,ハンセン病患者およびIL-12に対してIFN-γ低産生性を示す健常者群において,高頻度にIL-12Rβ1遺伝子の翻訳領域のcoding Single Nucleotide Polymorphisms(SNPs)が存在することが明らかになりました.つまり,1)IL-12存在下における活性化T細胞のIFN-γ産生能の違いは,ハンセン病に対する疾患感受性を規定するが,ハンセン病患者の病型成立機序に与える影響は少ないこと,2)この産生量,さらにはハンセン病に対する疾患感受性の違いはIL-12R遺伝子上の多型性に起因する可能性があることが示唆されました.
 このセミナーは免疫学講座が企画する「第1回免疫アレルギー学セミナー」でもありましたが,25名の先生方の御参加と活発なご討論を頂きました.この場を借りて御礼申し上げます.
(文責: 松下 祥)

(C) 2002 The Medical Society of Saitama Medical School