PDFファイル
(164 K
B)

※ダウンロードデータはAcrobat Reader4.0でご覧いただけます。
PDF版を正式版とします。
HTML版では図表を除いたテキストを提供します。HTMLの制約により正確には表現されておりません。HTML版は参考までにご利用ください。


埼玉医科大学雑誌 第29巻第2号 (2002年4月) 166頁 (C) 2002 The Medical Society of Saitama Medical School

特別講演

主催 埼玉医科大学心臓血管外科・呼吸器外科 ・ 後援 埼玉医科大学卒後教育委員会
平成14年1月7日 於 埼玉医科大学心臓病センターカンファレンスルーム

留学について

尾 本 正


(Department of Thoracic and Cardiovascular Surgery Heart Center NRW, Bad Oeynhausen, University of Bochum, Germany)


1.国際交換留学生制度について
 医学部における国際交換留学生制度は,卒前教育内容そのものを国際的レベルに引き上げる推進力となるであろう.交換留学生制度は,(1)生徒自身が外国人と議論する習慣を身につけるきっかけになる事,(2)医学の勉強の刺激になる事,(3)将来の留学計画の良い経験となる事,など利点は非常に多い.
 しかし,その一方で一部の学生は日本の医学部の卒前教育の問題点を指摘してゆくことになる.大学側は教育制度の見直しに対しても柔軟な姿勢を取ることを求められる(語学教育や臨床講義の見直し,3ケ月の留学制度の単位化).

2.留学の種類について
 留学には研究留学と臨床留学とがあり,日本人の多くは研究留学である.
 研究留学の外面的利点は,研究業績を持つことができるということである.日本の場合には研究のみに没頭する時間が限られている事,研究設備が不十分である事から,質の良い欧米の研究室に留学する方が,自分の研究論文を海外の一流雑誌に掲載する機会を持てる.また,臨床を離れて研究だけに費やす時間は,海外で言う“安息年”という機能を持ち,その医師自身の医学体系を形作る良い時間となる.
 臨床留学の利点は,ニカ国分の基礎的臨床訓練を経験したことになるので,臨床能力の幅が広がると言うことである.しかしながら,外面的には, “語学力がより高い”,という点でしか評価しにくい.それは,良い臨床医を評価するのは非常に困難であるという事に似ている.臨床留学をする日本人が少ないのは,米国においては難易度の高い試験を要する事,ヨーロッパにおいては新たな言語を学ばなければならない事が障壁となっている.
 “留学してから多くの本を読むようになった”,という留学生が非常に多い.それは留学中の方が圧倒的に自由な時間を持てるからであろう.多くの本を読みながら日本の医学について考える,という事が留学の本質であるのかもしれない.

3.留学における費用
 先進諸国はいずれも物価が高くなっており,収入源のない留学生にとっては非常に厳しい状況になっている.米国の大都市であれば,留学予算として700万円を必要とするであろう.米国研究室の留学生への補助は年々厳しくなっている.奨学金の用意,あるいは大学からの補助が必要であろう.

4.留学の基本的技術
(1) 細かな自己紹介を暗記しておく(履歴,家族構成,趣味など).
(2)挨拶をはきはき行う(相手がしなくても,自分からする).
(3)清潔な服装を心がける.
(4)微笑みを忘れずに(不機嫌な顔をしても孤立するだけ).
(5)恥をかくことに慣れる.
(6)食事のマナーを学ぶ(マナーが出来ないと家に呼べない).
(7)名前を覚える.

(C) 2002 The Medical Society of Saitama Medical School