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埼玉医科大学雑誌 第29巻第2号別頁 (2002年4月) T11-T28頁 (C) 2002 The Medical Society of Saitama Medical School
Thesis

造血器腫瘍におけるETV6(TEL)遺伝子異常に基づく発癌機構の多様性に関する研究

矢ヶ崎 史治

埼玉医科大学第1内科学教室
(指導:別所 正美教授)

医学博士 乙第796号 平成13年12月21日 (埼玉医科大学)


 目 次

第1章
序 論 T12頁
     
第2章
骨髄異形成症候群および急性白血病におけるt(5;12)(q31;p13)染色体転座切断点の解析とETV6-ACS2融合転写産物の単離 T12頁
 
第1節
 緒 言 T12頁
 
第2節
 対象と方法 T13頁
1.
対象症例 T13頁
2.
染色体解析 T13頁
3.
Positional cloning法 T13頁
4.
RNAの抽出と3'RACE法 T15頁
5.
5’RACE法 T16頁
6.
塩基配列解析と相同性解析 T16頁
7.
Northern analysisによるACS2の組織発現 T16頁
8.
RT-PCR法によるETV6-ACS2 転写産物とACS2-ETV6転写産物の検出 T16頁
 
第3節
 結果と考察 T16頁
1.
t(5;12)(q31;p13)染色体転座の血液学的特徴と転座切断点の解析 T16頁
2.
ETV6融合遺伝子とETV6転座相手遺伝子の全長cDNAの単離 T18頁
3.
MDS/AMLにおける ETV6-ACS2融合遺伝子の意義 T19頁
   
第3章
末梢性T細胞悪性リンパ腫におけるt(4;12)(p16;p13)染色体転座切断点の解析とETV6-FGFR3融合転写産物の単離 T21頁
 
第1節
 緒 言 T21頁
 
第2節
 対象と方法 T22頁
1.
対象症例 T22頁
2.
FISH法によるt(4;12)(p16;p13)転座切断点の解析 T22頁
3.
RT-PCR法によるETV6-FGFR3融合転写産物の検出 T22頁
4.
塩基配列解析と相同性解析 T22頁
5.
免疫組織染色 T22頁
 
第3節
 結果と考察 T22頁
1.
t(4;12)(q31;p13)染色体転座における転座切断点 T22頁
2.
ETV6-FGFR3融合遺伝子の単離と塩基配列解析 T22頁
3.
PTCLにおける ETV6-FGFR3融合遺伝子の意義 T24頁
     
第4章
総括と結語 T24頁
     
謝 辞
  T25頁
参考文献
  T25頁



第 1 章 序 論

 造血器腫瘍では特異的染色体異常が定型的な病像を呈することから,分子生物学的な解析が進歩し,特に転座型染色体異常においては次々に責任遺伝子の単離と融合遺伝子の機能解析がなされ発癌機構の全容が解明しつつある.特に急性前骨髄球性白血病(APL)では,レチノイン酸受容体遺伝子異常に基づく発癌機序が分子生物学的に明らかとなり,寛解導入療法に大量レチノイン酸療法が導入されてから約90%の高い寛解率が得られるようになった.また慢性骨髄性白血病(CML)ではPh染色体と呼ばれるt(9;22)(q34;q11)転座が97%に認められ,22q11にあるbcr遺伝子と9q34にあるabl遺伝子が融合しbcr-abl融合遺伝子が発現することが知られている.CMLでは,このbcr-abl融合遺伝子が210 kdの融合蛋白に転写され細胞質内に局在し,融合蛋白におけるABLチロシンキナーゼ活性の恒常的活性化が癌化の原因と考えられている.近年,IFN抵抗性CMLに対してABL特異的チロシンキナーゼ活性阻害剤であるSTI571が高い細胞遺伝学的効果をもたらすこと1)が明らかになった.さらにSTI571のPh陽性急性リンパ性白血病(ALL)に対するin vitroにおける増殖抑制効果もKawaguchiらとの共同研究2)により明らかにされ,特定の遺伝子異常を標的とした治療法の確立は造血器腫瘍の予後をドラスティックに改善させると考えられる.従って,造血器腫瘍における分子生物学的な発癌機構を明らかにすることは新規の分子標的療法を開発する上で重要である.
 1994年,Golubらによりt(5;12)(q33;p13)を有する慢性骨髄単球性白血病(CMML)において12p13転座切断点に存在するTEL遺伝子(translocation Ets leukemia)と5q33上のPDGFβR遺伝子が融合し,キメラ遺伝子を発現していることが報告された3)TEL遺伝子はets DNA結合領域を有しets familyの一員としてETV6(ets translocation variant 6)とも呼称されている(以下ETV6と記す).ETV6遺伝子の存在する12番染色体短腕領域は様々な造血器腫瘍で欠失,転座が認められる.今日に至るまでETV6融合遺伝子を発現していることが判明している染色体転座は,小児preB急性リンパ性白血病(ALL)の25%を占めるt(12;21)(p13;q22)転座におけるETV6-AML14,5),t(9;12)(q34;p13)を有する pre B ALLにおけるETV6-ABL6),t(6:12)(q23;p13)を有する pre B ALLにおけるETV6-STL7),t(9;12)(p24;p13)を有するpre BまたはT ALLにおけるETV6-JAK2 8),t(12;22)(p13;q11)を有するAMLにおけるETV6-MN19),t(12;15)(p13;q25)を有する急性骨髄性白血病(AML)におけるETV6-TRKC10),t(1;12)(q25;p13)を有するAMLにおけるETV6-ABL2 11),CML急性転化時に認められるt(3;12)(q26;p13)におけるETV6-EVI112),t(12;13)(p13;q12)を有するAMLにおけるETV6-CDX213),t(4;12)(q11-q12;p13)を有するAMLにおけるETV6-BTL14),t(9;12)(q22;p13) を有する(骨髄異形成症候群)MDSにおけるETV6-Syk15),t(1;12)(q21;p13)を有するAMLにおけるETV6-ARNT16)がある.これらのETV6の転座相手遺伝子はいずれも造血発生,細胞分化および増殖に重要な役割を担っているのが特徴である.
 我々は,現在まで造血器腫瘍に認められた2種類のETV6関連染色体転座におけるETV6融合遺伝子の同定および融合転写産物の単離を行ってきた.本稿では,これまでの研究成果17-19)と過去の報告から,造血器腫瘍におけるETV6遺伝子異常による発癌機構の多様性を考察する.

第 2 章

骨髄異形成症候群および急性白血病におけるt(5;12)(q31;p13)染色体転座切断点の解析とETV6-ACS2融合転写産物の単離およびヒトACS2全長cDNAの単離17)

第1節 緒 言

 急性白血病における均衡転座型染色体異常では,転座切断点に位置する責任遺伝子が転座の結果,キメラ型融合遺伝子を発現して癌化に関与している頻度が高い.この際に片方の責任遺伝子が明らかになればRapid amplification cDNA end method(RACE法)により転座相手遺伝子およびキメラ型融合遺伝子の単離は比較的容易である.一方でMDSにおける染色体異常は5q-,7q-, 20q-,11q-,12p-等の欠失型染色体異常が多い特徴を有する.欠失型染色体異常ではKnudsonのtwo hit仮説により染色体欠失部位に癌抑制遺伝子が存在し,残存アリルの遺伝子変異が生じていると推測されてきた.過去の研究では5q-の責任遺伝子を明らかにするためにFluorescence in situ hybridization (FISH)法により5q-(5番染色体長腕部分欠失)を有する個々の症例の染色体標本でmappingを行い,共通欠失領域を狭める努力がなされてきたが,依然として,その領域は5q31上の約1.5Mbと広範囲20-22)であり責任遺伝子の同定は困難である.そこで我々はt(5;12)(q31;p13)転座を有するMDS/AML 3例で,12p13切断点が好発切断点であるETV6遺伝子内に存在すれば,5q-の共通欠失領域である5q31上の責任遺伝子を直接単離しうる可能性があると考え,FISH法により12p13切断点および5q31切断点の解析を行った.さらに本研究ではRACE法によりETV6融合遺伝子の単離を行い,ETV6転座相手遺伝子の全長cDNAの単離と組織における発現解析を行った.

第2節 対象と方法

1. 対 象
 対象症例の臨床血液的特徴をTable 1に示す.
2. 染色体解析
 患者骨髄細胞を,colcemid(GIBCO-BRL, Tokyo, Japan) 0.01 μg /ml, 10% fetal calf serum添加 RPMI培養液で 37℃,24時間,培養した.培養後は常法に従って低張処理し,G分染法により核型解析を行った.染色体核型表記法はInternational System for Human Cytogenetic Nomenclature (ISCN 1995)23)に従った.
3. Positional cloning法
(1)ETV6遺伝子および5q31のgenome構造
 ETV6遺伝子のgenomeの全長は約240 kbで,12p13上の D12S1697 から D12S98 の間に位置している(Fig. 1).8つのexonより構成されるがexon 1Aプロモター領域にはSP1とAP2 転写因子結合部位があり1500塩基上流にCpG islandが存在する24).染色体転座によってETV6上で発生する遺伝子再構成はETV6の全長が240 kbと長いことから,通常のSouthern blot解析では検出が困難であり,我々は12p13転座切断点の解析にFISH法によるpositional cloning法を用いた.FISH法は直接,異常染色体上に目的の遺伝子を含有するprobeをhybridizeし,probeからの蛍光シグナルを蛍光顕微鏡下で染色体上に観察しうるという利点を有している(Fig. 2).現在,Genome projectにより,ヒト染色体は断片化され,YAC(Yeast artificial chromosome)(CEPH mega YAC library,Riken, Tsukuba, Japan),やP1ファージ,PAC(P1-derived artificial chromosome),BAC(Bacterial artificial chromosome)などにクローン化され,染色体上に配列されている.YACでは1 Mb以上の染色体断片をクーロン化することが可能で,さらにP1,BAC,PAC,cosmidでは数100 kb から数10 kbのクローン化が可能であり目的に応じて利用される.今回は,ETV6遺伝子の全長を含有するYAC964c10 25)およびETV6の各exonを含有するcosmidクローン18)をP. Marynen博士(Leuven University, Leuven, Belgium)より供与を受けFISH解析のprobeとして使用した.5q31転座切断点の解析には5q31上に存在するYAC854g6,YAC886a12,YAC880g9(CEPH mega YAC library,Riken, Tsukuba, Japan)およびEdward M. Rubin博士(Human Genome Center, Lawrence Berkeley National Laboratory(LBNL), California)によって同部位に配列されたP1/PAC contig 26)の供与を受け,切断点を含有するクローンを検討した.使用したクローンの染色体上の存在部位をFig. 1に示す.
(2)FISH 法
YAC DNAの抽出とAluPCR法
 YAC single colonyをAHC培養液で30℃,3日間,振盪培養した.菌体を回収したのち,Yeast Lytic Enzymeを用い酵母菌を溶解しPhenol/Chloroform法でDNA分画を精製した.得られた全酵母DNAから選択的にYAC由来DNAを得るためLedbetterらの方法27)に従いinter ALUおよび inter L1-ALU polymerase chain reaction(PCR)法を用い,ヒト染色体由来DNAを増幅した.すなわち,ヒトgenomeには300塩基からなるAlu Iで切断される配列を有するfamilyが存在し,コンセンサス配列で87%の相同性がある.Alu配列はヒトgenomeに約100万コピー存在しているため(4-5 kb DNAあたり1回出現する),alu配列に対するコンセンサス primerにより酵母DNA100ngより特異的にヒト由来DNAをExpand Long Template PCR System(Boehringer Mannheim, Mannheim, Germany)を用いて増幅した.用いたprimerを以下に示す.
CL1: 5’-TCCCAAAGTGCTGGGATTACAG-3’
CL2: 5’-CTGCACTCCAGCCTGGG-3’
153Alu5’: 5’-GTGGCTCACGCCTGTAATCCC-3’
154Alu3’: 5’-TGCACTCCAGCCTGGGCAACA-3’
450Alu5’: 5’-AAAGTGCTGGGATTACAGG-3’
451Alu5’: 5’-GTGAGCCGAGATCGCGCCACTG-3’
PCRの条件は95℃で2分間変性後,95℃で1分,50℃で30秒,68℃で7分を30サイクル行い,伸長反応は68℃,10分とした.電気泳動で効率良く増幅されたものを確認し標識反応に用いた.
(3)BAC, P1, cosmid クローンからのDNA抽出
 Single colonyを選択的抗生剤添加LBもしくはTB培養液で37℃,18時間,振盪培養し,培養液の吸光度がA550=1.3−1.5になった時点で集菌した.DNA抽出はQIAGEN plasmid kit(QIAGEN,Tokyo, Japan)を用いた.
(4)Probe labeling
 上記の方法により抽出されたDNA 1μg をNick Translation Kit(Boehringer Mannheim, Mannheim, Germany)を用いてbiotin-11-deoxyuridine triphosphate もしくは digoxigenin-dUTPで標識した.ethanol沈殿法にてcarrier DNA(salmon sperm DNA 2μg , tRNA 4μg )と共に精製しホルムアミドで200-250 ng/5μl に調整した.また5および12番染色体に対するCEP12 Spectrum Green Alpha Satellite DNA probe(Vysis, IL, USA), D5S23 probe(Oncor, Gaithersburg, MD)を併用した.
(5)Hybridization
 スライド上に蒸気固定された染色体標本を70℃,30分ハードニングし2xSSC/0.1% tween 20で37℃,30分処理後,70%, 80%, 100%(各2分)のアルコール上昇系列で脱水処理した.続いて70%ホルムアミド/4xSSC(pH 7.0)で75℃,5分変性処理し4℃の70%, 80%, 100%のアルコール上昇系列で脱水処理した.ホルムアミドで予め2μg /μl に調節したCot1 DNA(GIBCO-BRL , Tokyo, Japan)をprobeDNAの5倍量を加え,75℃で5分変性処理し,これに等量のhybridization buffer(4xSSC, 20% 硫酸デキストラン,20% BSA)を加えた.37℃30分間プレアニールした後,スライド上で37℃で18時間ハイブリダイゼイションした.引き続き37℃,50% ホルムアミド/4xSSCで5分3回,4xSSCで10分3回,洗浄した.
(6)Two color detection
 2%BSA/4xSSCでブロッキングしたのち,一次反応液で37℃,30分処理し37℃,0.05% Tween 20/4xSSCで3回洗浄.二次反応液で37℃で30分処理し,同様に洗浄後,三次反応液で37℃,30分処理し洗浄後DAPI antifade solution 10μl で封入した.反応液の調整法を以下に示す.
一次反応液: 2%BSA 1mlに対してavidin-FITC 10μlを加えミリポアフィルターで濾過
二次反応液: 1%BSA, 2% rabbit serum混液1 mlに対してanti-avidin- FITC 10μl を加えミリポアフィルターで濾過
三次反応液: 1%BSA, 2% rabbit serum 混液1 mlに対してavidin-FITC 10μl とanti-dig rhodamine加えミリポアフィルターで濾過
DAPI antifade solution:1μl のDAPI原液1μl(1μg /ml)(Vysis, IL, USA)に7μl のantifade solution (Vysis, IL, USA)と20xSSC 2μl を加える.
 シグナルの観察は蛍光顕微鏡下で(E-800, Nikon, Japan)を行い,判定には少なくとも10個以上のmetaphaseを供した.
4. RNAの抽出と3’RACE法
 患者の同意を得て取得した骨髄単核細胞よりguanidium thiocyanate法28)に従って,total RNAを抽出した.ETV6融合転写産物をFrohmanらの3’RACE法29)を用いて行った.RACEの原理をFig. 3に示す.すなわち既知の配列を有するoligo dT hybrid primerを用いてfirst strand cDNAを作成しETV6の5’非翻訳配列特異的primer(E10F1)およびoligo dT hybrid primerの既知領域に対するQ0 primerでPCR法を用いETV6関連転写産物を一次増幅する.更に特異性を高めるためETV6各exon特異的primer(E93F1等)とQ1 primerによりnested PCRを行い電気泳動でPCR産物のサイズを推定した.転座がETV6 intron(n)で発生しているとすると,exon(n)に対するprimerまで見られるbandでexon(n+1)に対するprimer用いた場合に消失するものが,求めるETV6融合転写産物である.目的のPCR産物を泳動ゲルより切り出してサブクローニングし塩基配列解析に供した.3’RACE法に用いたprimer,cDNAプールの作成法およびPCR反応の条件を以下に示す.
Primers
QT: 5’-CCAGTGAGCAGAGTGACGAGGACTCG-AGCTCAAGCTTTTTTTTTTTTTTTTTT-3’
Q0: 5’-CCAGTGAGCAGAGTGACG-3’
Q1: 5’-GAGGACTCGAGCTCAAGC-3’
E10F1: 5’-GAGAGATGCTGGAAGAAA-3’
E93F1: 5’-GGAAAAACCTGAGAACTT-3’
 Total RNA 5μg をQT hybrid primer 50 ngを用いて,常法に従いMuMLV-reverse transcriptase 200 u(GIBCO-BRL, Tokyo, Japan)により逆転写しTEで 1 mlに調整し,cDNAプールとした.Extend Long Template PCR System(Boehringer Mannheim)を用いてQ0およびE10F1 primerでFirst PCRを施行した.PCRの条件は92℃で2分間変性後,94℃で20秒,57℃で30秒,68℃で7分を30サイクル行い,伸長反応は68℃,10分とした.PCR反応液をTEで1 mlに希釈して 1次PCR産物とした.Second PCRはQ1およびE93F1 primerを用い1μl の1次PCR産物よりFirst PCRと同様の条件でSecond PCRを施行した.
5.5’RACE法
 ETV6融合新規遺伝子のcDNA5’断片を得るため5’ RACE 法を施行した.予め 5末端に既知配列が付加してあるMarathon-Ready cDNA for human bone marrow(Clontech, Palo Alto, CA)を用いて,前述の3’RACE法により単離したETV6融合新規遺伝子の配列に対する特異的primer UP3R(5’-CAAAACCAGCTGTCTCTGAAGATGGAGTA-3’)および AP1 and AP2 primerを用いて,PCR法を施行した.
6.塩基配列解析と相同性解析
 RACE産物およびRT-PCR産物はTA cloning法を用いてpCRIIベクター(TA Cloning System Version 1.3, Invitrogen, Tokyo, Japan)にcloningし,dye terminator法により,それぞれ数クローンABI 310 DNA sequencer (Applied Biosystems, Urayasu, Japan)で解析した.得られた塩基配列はBLAST server at NIH(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)上でGenBank (blastn)データベースに登録されている既知の配列と相同性の解析を行った.
7. Northern AnalysisによるACS2の組織発現
 5’RACE法により単離された全長ACS2 cDNA(p3ACS2)を EcoR1 消化して作成した2.5-kbのACS2 cDNA断片をメガプライムDNA標識システム(Amersham International Plc.)を用いて[α- 32P]dCTP(New England Nuclear)で放射線標識し,multiple-tissue RNA filters(Human MTN; Clontech, Palo Alto, CA)に18時間,hybridizeした.常法に従いクエン酸溶液で洗浄後 Kodak XAR-5 film に−80℃,48時間感光した.
8. Reverse Transcription(RT)-PCRによる ETV6-ACS2 転写産物とACS2-ETV6転写産物の検出
 患者total RNA 1μgから常法に従ってRT-PCR法により検出した.使用したprimerは以下のとおりである.
ETV6-ACS2 融合転写産物に対するprimer:
(case 1): E93F1 および UP3R
(cases 2 および 3): TEL-E1(5’-GAGACTCCTGCTCAGTGTAGCA-TTAAG-3’)および ACS2R2(5’-CTCGGCTTGCTTACGCTTTG-3’)
ACS2-ETV6 融合転写産物に対するprimer:
ACS2F2(5’-CTATCCGCTACATCATCAAT-3’)および EAS536(5’-TTCAATGGTGGGAGGGTTAT-3’)
PCRの条件は94℃で2分間変性後,94℃で20秒,58℃で20秒,72℃で90秒を35サイクル行い,伸長反応は72℃,10分とした.

第3節 結果と考察

1.t(5;12)(q31;p13)染色体転座の血液学的特徴と転座切断点の解析
 今回我々が検討しえた t(5;12)(q31;p13)転座は,症例1および3で,初診時より認められ,好塩基球増多を伴うMDSや好酸球性白血病という血液学的特徴を有していた.症例2においてもAML第2再発期に好酸球増多を伴ってt(5;12)(q31;p13)が出現し,且つ同一染色体上でt(12;19)(p13;q?)が認められた.以上よりt(5;12)(q31;p13)を有するMDS/AMLは好塩基球や好酸球増多といった特徴的臨床像を有し,特異な疾患群を形成している可能性があると考えられた.以前よりETV6関連転座では好酸球増多を伴うことが報告されている3,11)が,Matsushimaらによって好酸球増多を呈するMDSと5q-との関連30)が,Riouxらによって家族性好酸球増多症における5q31遺伝子座の関与31)が報告されている.これらにおける責任遺伝子が好酸球および好塩基球の共通前駆細胞レベルでどの様に関与しているのか今後の検討が必要である.
 12p13および5q31切断点のFISH解析による結果をTable 2に示す.12p13切断点は全ての症例でYAC964c10の分割シグナルがder(12)およびder(5)に認められることから転座切断点はETV6内に存在することが示唆された.さらにETV6の各exonを含有するcosmidを用いた解析では,exon 1 を含有する179A6のシグナルがder(5)に,exon 2を含有する50F4のシグナルがder(12)に残存して認められ,症例1および3ではETV6のintron 1A内に転座切断点があることが判明した.さらに症例2では179A6および50F4のシグナルをder(5)t(5;12)およびder(19)t(12;19)上に認め(Fig. 4A),exon 3を含有する2G8ではder(12)t(5;12)およびder(19)t(12;19)上に認められた.次いでETV6 exon 4-5を含有する184C4を用いるとder(12)t(5;12),der(12)t(12;19)およびder(19)t(12;19)にそれぞれシグナルが認められ(Fig. 4B),症例2における12p13の転座切断はt(5;12)転座ではETV6 intron 2で,t(12;19)転座ではETV6 intron 4-5の間で発生していると考えられた. 
 5q31切断点は全例でYAC854g6内に存在し,さらに症例2と3ではH20内に,症例1では BAC127M13内に存在していた(Fig. 4C,D).Fig. 1で示すように,YAC854g6は1.33MbでIL4IL5IRF1IL3GM-CSF等のサイトカインクラスターを含有するクローンであり,我々の転座切断の検討からはH20はYAC854g6の最もセントロメア側のBAC127M13とBAC257H16の間に存在すると考えられた.またH20とBAC127M13は200kb以内に近接して存在していること26)から,5q31切断点は全例で同一遺伝子内に存在している可能性があると考えられた.MDS/AMLに好発する5q-の共通欠失領域には3つの候補が挙げられている.Nagarajan 20)やZhao 26)らは,その一つとしてIL9からEGR1間に存在するD5S479 からD5S500の領域を MDSからAMLへの病態移行に関与する共通欠失領域であると報告している.我々がFISH解析に用いたYAC880g9はこの近傍に存在しているが,本転座における5q31切断点はYAC880g9よりセントロメア側に位置しており,この共通欠失領域には存在しないと考えられた.
2.ETV6融合遺伝子と新規ETV6転座相手遺伝子の全長cDNAの単離
 上述したFISH解析により症例1ではETV6内の切断点はintron 1A内にあると考えられるので,我々は3’RACE法によりETV6 exon 1特異的primerで増幅されexon 2特異的primerで増幅し得ない短い転写産物を単離し,塩基配列解析を行ったところ,ETV6 exon1に融合するalu配列を含んだ未知の遺伝子配列を得た.実際には,このクローンはoligo dT hybrid primerがimmatureなETV6融合mRNA内に存在するalu配列内のpoly A を認識して増幅したものと考えられた(Fig. 3C).この未知の配列の内alu部分を除いた塩基配列に対するprimerを設定し5’および3’RACE法により得た多数のクローンのフラグメント解析を行い,転座相手遺伝子の完全長cDNAの3150bpの塩基配列を得た.また開始コドンと終止コドンを含む完全長cDNAを含有するクローンをp3ACS2として単離した.本遺伝子は相同性解析の結果,Fujinoらによって報告されているラットのAcyl CoA Synthetase 2遺伝子(ACS232)とcDNAレベルで98%,アミノ酸レベル95%の相同性を示すことから,ヒトホモログと考えhuman ACS2と名称しGenbankに登録した(accession no. AF099740).塩基配列解析結果を(Fig. 5)に示す.さらに我々のFISH解析よって5q31切断点を含有することが判明したP1クローン H20はFrazerらにより塩基配列が決定(Genbank accession no. AC005217)されており26),H20内には74kbにわたってACS2の19個のexonと3’非翻訳領域をコードする5 個のexonが存在することが判明した(Fig. 1).さらにヒトのmultiple tissue blotを用いたNorthern解析ではACS2の発現を脳,胎生肝,骨髄で 高レベルに認め,脳では7.0と2.7 kbの,骨髄では3.4kbの胎生肝では3.4 と 8.2 kbの転写産物を認めた.胎生肝は胎生期造血の主座であり,骨髄と合わせて,ACS2は造血において重要な役割を担っていると考えられる(Fig. 6).Fujinoらはin vitroにおけるラットACS2の酵素活性を検討し,ACS2その他のACS familyに比してドコサヘキサエン酸(DHA)に対するアシル化活性が特異的に高いことを報告している32).脳にDHAが豊富に含まれていることを考慮すると,ACS2はDHAの代謝に選択的な役割を担っているとも考えられる.
3.MDS/AMLにおけるETV6-ACS2融合遺伝子の意義
 FISH解析およびETV6融合遺伝子であるACS2 cDNAの単離の結果から,個々の症例における至適primerを設定し,RT-PCR法でETV6-ACS2 融合遺伝子の発現を解析したところ,全ての症例でETV6-ACS2融合遺伝子の発現を確認した(Fig. 7).得られた増幅産物の塩基配列解析 (Fig. 8)から 症例1ではETV6のexon 1にACS2の3’非翻訳領域が融合しており127個の短いアミノ酸配列をコードしているが,Swiss prot databaseにおいて相同性のある配列は存在しなかった.症例2ではETV6のexon 2がACS2 のexon 11に融合し, 症例3ではETV6のexon 1がACS2 のexon 1に融合していたが,どちらの転写産物もフレームシフトにより早期に終止コドンが出現し機能的蛋白への翻訳は不可能と考えられた.症例3では 短いETV6-ACS2転写産物も認められたが,これはGT-AG rule に従ってACS2内のexon 1とexon 2の間で選択的スプライシングによって生じたものと考えられた.
 一方,ACS2-ETV6転写産物は 症例1および2に共に認められたが症例2では2種類の長短ACS2-ETV6転写産物が存在した.短い産物ではACS2のexon 9 がETV6 exon 3に融合していたが, 長い産物はスプライスされる前の ETV6のintron 2 にあたる配列を含有していた.これらの結果からt(5;12)(q31;p13)転座により生ずるETV6-ACS2転写産物は機能的蛋白質をコードしないと考えられた.また症例1で認められたACS2-ETV6転写産物も3’非翻訳領域を欠失していることから,融合ACS2 mRNAの細胞内分布や寿命に与える影響があるものと推定される.
 以上よりt(5;12)(q31;p13)転座においては,転座によるETV6およびACS2遺伝子の破壊,機能低下が発癌および病態に関与しているものと推察される.特に症例2では両側アリルのETV6が転座に関与しておりETV6の機能喪失が生じていると考えられ興味深い.以前より ETV6-AML1を生ずるt(12;21)(p13;q22)では白血病の進行に伴い高率に残存ETV6アレルの欠失が起こる33)ことからETV6の機能欠失が病態の進行に関与する可能性が指摘されてきた.また他にもETV6遺伝子の破壊や局在部位の変化が癌化に関与すると考えられる転座例が報告されている.
 CML,AML,MDSで認められるt(12;22)(p13;q11)転座ではETV6は22q11のMNlと融合し,ETV6-MN1MNI-ETV6融合遺伝子が発現しているがETV6-MN1は機能的ドメインをコードせず,MN1-ETV6が癌化に関与すると推察される9).その後,Poirelらはt(12;22)を有する白血病細胞株MUTZ-3ではETV6-MN1およびMN1-ETV6融合遺伝子の発現を認めず,ETV6の5’非翻訳領域に転座切断点があり,残存ETV6アレルも部分欠失していることから,ETV6の喪失が癌化に関与すると推察している34).Sutoらはt(6;12)(q23:p13)を有するcALL由来細胞株で,ETV6-STLが主に転写されるが機能的ドメインを持たず残存ETV6アレルも部分欠失していることを報告7)しており,ETV6の機能の喪失が癌化に関与している可能性があると考えられる.またCoolsらによって,t(4;12)(q11-q12;p13)を有するAMLでは全例でETV6の機能的ドメインを保持するBTL-ETV6が検出されたが,BTL (BRX like Translocated in Leukemia)はN末端に親水性アミノ酸のストレッチ構造を有するため,融合蛋白は細胞質に局在し,結果としてETV6の機能低下が生じて発癌に関与すると推察している12).以上の様にETV6の機能低下および喪失が示唆される報告が少なからず存在するが,ETV6の癌抑制遺伝子としての役割を証明するには至っていない.
 またETV6の転写抑制因子としての機能に関する報告が近年,増えつつある.トリ白血病を起こすトリ白血病ウイルスE26ゲノムは癌遺伝子v-etsv-mybから構成され,v-etsのヒトホモログとしてets1が単離された.Ets1のC末端には85アミノ酸からなるwinged helix-turn-helix motif(ets DBD)が存在し,同領域を介してGGAA/Tを含むETS結合コンセンサス配列に結合し転写因子として働くことが知られている.現在まで約30種類の遺伝子がets DBDを有することが報告されets familyを形成している.骨軟部腫瘍や白血病におけるets family遺伝子異常は良く知られており35)ets familyに属し,マウスFriend白血病のproto-oncogneであるFli-1は,Ewing肉腫の90%で認められる t(11;22)転座によりEWS-Fli-1融合遺伝子として発現し,Fli-1依存性の転写活性が亢進している36)ETV6Drosophila yan/pokと相同性が高く転写抑制因子と考えられ,ETS結合コンセンサス配列に結合して転写を抑制したり,HLHを介した蛋白相互作用により転写抑制的に機能することが推察されてきた3)
 Kwiatokowskiらはtwo-hybrid法を用いてETV6とFli-1とが会合していることや,in vitroETV6がFli-1依存性のプロモーター活性を阻害し,完全な阻害にはETV6のHLHのみでは不十分でありDBD領域も必要であることを報告している.さらにETV6がFli-1プロモーターに存在するETS結合配列に結合し転写を抑制することや,その際にはETV6のHLHが必須であることが示されている37).  
 このようにETV6融合蛋白も,正常ETV6に結合して機能低下を起こしたり,他のets familyの転写活性に影響を与える可能性がある.HLHを介する蛋白相互作用としてはGABPαやETV6を除いてets family間のオリゴマー形成は見られず,ETV6のHLH構造の特殊性によるものと推察される.またDrosophila yanがMAPKカスケードにおいてリン酸化を受け転写抑制活性を変化させること38)から,今後,シグナル伝達系におけるETV6の役割も解明されると思われる.以上,ETV6の転写抑制因子としての性格が徐々に明らかにされてきているが,真に生体内でETV6が癌抑制的に機能しているかは今後の課題である.
 一方,ACSは細胞内で脂肪酸が利用される際に必須であるアシル化を司る酵素で,ミトコンドリアにおける脂肪酸のβ酸化および細胞内脂質合成に必須の酵素である.さらにACSによる生成物であるAcyl CoAは細胞内蛋白の装飾39),蛋白輸送に重要な役割を担っており40),またProtein kinase C活性や甲状腺ホルモン受容体の調節因子41-42)であることも知られている.現時点ではACS2の造血における役割は不明であるが,我々は現在までに赤芽球系コロニーおよび顆粒単球系コロニー,急性白血病におけるACS family (ACS1-4)の発現解析を行い報告してきた43).赤芽球コロニー構成細胞ではACS2のみの,顆粒単球系コロニー構成細胞ではACS2以外のACS1,3,4の発現を認めた.さらに急性白血病ではPML-RARAキメラ遺伝子を発現しているAPL全例にACS2の発現を認めたことからAPL細胞株であるNB4の発現パターンを検討した.その結果,NB4ではATRA非添加時にはACS2-4を発現しているが,ATRAによる分化誘導8時間後からACS2の発現のみが低下し,ACS3の発現が亢進することが判明した(投稿準備中).以上よりACS2は赤芽球のみならず前骨髄球レベルで分化,増殖に重要な役割を果たしていると考えられるが,病態解明には,今後,更なるACS2の機能解析が必要と考えられる.

第 3 章

末梢性 T 細胞悪性リンパ腫におけるt(4;12)(p16;p13)染色体転座切断点の解析とETV6-FGFR3融合転写産物の単離18)

第1節 緒 言

 末梢性T細胞性悪性リンパ腫(PTCL)における染色体異常の報告は少なく1p36,14q11,+8q等の異常が散発的に報告されているのみでPTCLの発癌機構については未知の点が多い.今回,著者は過去に報告されていないt(4;12)(p16;p13)染色体異常を有する PTCL症例を経験し,12p13切断点が造血器腫瘍にける好発転座遺伝子ETV6が存在することから責任遺伝子および新規融合遺伝子の単離を行った.ETV6のリンパ性悪性腫瘍における関与は,小児preB-ALLに認められるETV6-AML1 4,5)やt(12;14)(p11;q32)を有するB細胞性悪性リンパ腫44)およびT-ALLにおけるETV6-JAK2 8)等が報告されているが,PTCLにおける報告はなく,本研究はPTCLの発癌機構および造血器腫瘍におけるETV6の関与を考える上で重要である.また4p16切断点には多発性骨髄腫で認められるt(4;14)(p16.3;q32)の責任遺伝子であるfibroblast growth factor receptor 3FGFR345)が存在していることから,FGFR3の関与を疑い,本症例における転座切断点の解析をFISH法で,さらにRT-PCR法でETV6-FGFR3融合遺伝子の発現の有無を検討した.

第2節 対象と方法

1. 対象症例
 症例は63才,女性.持続する発熱と全身性の表在リンパ節の腫大を主訴に来院した.頚部リンパ節の生検で病理組織学的に悪性リンパ腫と診断された.免疫組織染色の結果ではリンパ腫細胞はCD3およびCD4が陽性,CD20, CD79a, CD56が陰性であり,HTLV-1抗体陰性でPTCL stageIVと最終診断された.初診時,骨髄生検で骨髄へのリンパ腫細胞の浸潤が2.8% に認められ,その際の骨髄細胞染色体解析46,XX,t(4;12)(p16;p13)[3]/49,XX,+i(1)(q10),t(4;12)(p16;p13),+10,+19[10]/49,XX,+i(1)(q10),t(4;12)(p16;p13),+11,+19[3]/46,XX[4]. の異常核型を認めた.CHOP療法施行後,全身の表在リンパ節の腫大は消失したが,骨髄染色体解析では46,XX, t(4;12)(p16;p13)[2], 46,XX[18]と異常クローンが残存していた.
2.FISH法によるt(4;12)(p16;p13)転座切断点の解析
 ETV6 の各exonを含有するcosmidクローン:179A6 (exon 1), 50F4(exon 2), 2G8 (exon3), 184C4 (exon4-5),および148B6(exon8)はP. Marynen博士(Leuven University, Leuven, Belgium)より供与を受けFISH解析のprobeとして使用した.4p16転座切断点の解析にはFGFR3を含有するcosmid pC385.12 46)をM.R. Altherr博士(Los Alamos National Laboratory, USA)より供与を受け使用した.各クローンの染色体上の存在部位をFig. 9に示す.前述した方法(第2章,第2節 対象と方法の項目参照)を用いて,各probeを作成し,骨髄細胞染色体に対してFISH解析を施行した.
3.RT-PCR法によるETV6-FGFR3 融合転写産物の検出
 患者の同意を得て骨髄total RNA 1μg からETV6- FGFR3融合mRNAおよびFGFR3-ETV6融合mRNAの発現を,TAKARA LA-PCR kit(TAKARA, Tokyo, Japan)を用いてRT-PCR法で検出した.使用したprimerと以下に示す.
ETV6-FGFR3 融合mRNAに対するprimer :
E93F1 : (5’-GGAAAAACCTGAGAACTT-3’)
FGF-RI : (5’-GACCAGTGGCCCTTCACG-3’)
ACS2-ETV6 融合mRNAに対するprimer :
FGF-F2 : (5’-ACGAAGACGGGGAGGACGAG-3’)
TEL-AS1 : (5’-GCTGAGGTGGACTGTTGGTT-3’).
PCRの条件は95℃で1分変性後,94℃で1分,58℃で20秒,72℃で1分30秒を40サイクル行い,伸長反応は72℃,10分とした.
4. 塩基配列解析と相同性解析
 RT-PCR産物は泳動ゲルより切り出して,PCRに用いたprimerを用いdye terminator法により直接塩基配列解析を行った.得られた塩基配列はBLAST server at NIH(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)上でGenBank (blastn)データベースに登録されている既知の配列と相同性の解析に供された.
5. 免疫組織染色
 患者リンパ節および正常リンパ節のパラフィン固定標本をウサギ抗FGFR3 C末端特異血清(sc-123; Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)を用いて免疫組織染色を行った.検出にはBiotinylated secondary antibodyおよび horseradish peroxidase-conjugated avidin-biotin system(Vector Laboratories, Burlingame, CA)を用いた.発色基質としてdiaminobenzidine tetrahydrochloride(DAB)(Vector Laboratories, Burlingame, CA)を用いた.

第3節 結果と考察

1. t(4;12)(q31;p13)染色体転座における転座切断点
 FISH解析により12p13切断点は,179A6(exon 1), 50F4(exon 2), 2G8(exon3)のシグナルがder(4)に,148B6(exon8)のシグナルがder(12)に残存して認められ,さらに184C4(exon4-5)用いると,分割シグナルがder(4)およびder(12)の両者に認められ,12p13切断点はETV6 intron 4-5内に存在すると考えられた.4p16切断点はcosmid pC385.12の分割シグナルがder(4)およびder(12)の両者に認められ,pC385.12内に存在すると考えられた.184C4(rhodamine)およびcosmid pC385.12(FITC)をcohybridizationすると,それぞれの分割シグナルがder(4)およびder(12)の両者に認められ,融合シグナル(黄色)として検出される(Fig. 10A).本法を用いたFISH標本で背景に存在する細胞を観察すると90%以上の間期核細胞では融合シグナルは認められず,分裂期異常染色体は骨髄浸潤リンパ腫細胞の細胞回転周期の亢進を表すものと考えられた.
2.ETV6-FGFR3融合遺伝子の単離と塩基配列解析
 RT-PCR法でETV6-FGFR3 融合遺伝子の発現を解析したところ,長短2種類の転写産物の発現を認めた(Fig. 11A).それぞれのPCR産物の塩基配列解析の結果,両者は ETV6のexon 5 内のnt 543までの配列にFGFR3のexon 10 内のnt 1270からの配列が融合を起こしていた.ETV6およびFGFR3の融合切断点には GT-AG ruleに従った 潜在的スプライス部位は見いだせなかったが,PCR法によるDNAレベルの切断点の解析で同部位における融合を検出し得なかったことから,選択的スプライシングによって生じたものと考えられる.長い1767 bp の転写産物では転座によるフレームシフトは生じておらずETV6のHLHドメインとFGFR3のチロシンキナーゼドメインを有する64 kD のキメラ蛋白に翻訳されると推定された. また過去の報告にないCAG tri-nucleotideの挿入がFGFR3 exon 11の始まりの部位に認められたが,これが先天性の多型を表すものか体細胞変異は不明である.その他,骨髄腫で好発する点変異は認められなかった.短い転写産物はFGFR3のexon 11スプライスアウトされたものであることが判明したが,これによりフレームシフトが生じて終止コドンが出現するためHLH ドメインのみを有する蛋白を生ずると考えられる(Fig. 11B).さらにFGFR3-ETV6融合転写産物の発現は認められなかった.
 今回,遺伝子解析に用いた検体はいずれも骨髄からのものであり,患者リンパ節においてもt(4;12)(p16;p13)が存在していることを検証するために,FGFR3のC末端に対する特異血清を用いてリンパ節生検標本に対する免疫組織染色を行った.その結果,患者標本ではFig. 10Bで示すように,残存リンパ濾胞を除きFGFR3の発現が認められた.一方で正常リンパ節ではFGFR3の発現が認められず(Fig. 10C),Chesiらの血液細胞におけるFGFR3の発現は非常に低レベルで殆ど認めないという報告45)と合致した所見であった.以上よりt(4;12)(p16;p13)転座ではリンパ腫細胞においてETV-FGFR3キメラ型蛋白を発現していると考えられた.
3.PTCLにおける ETV6-FGFR3融合遺伝子の意義
 近年, Chesiらはt(4;14)(p16;q32)を有する多発性骨髄腫において14q32上のIgH enhancer活性により転座を起こしたFGFR3の過剰発現が起きていること,さらに病期の進行に伴ってFGFR3の点突然変異が生じて活性化が起きていることから,receptor tyrosine kinase(RTK)であるFGFR3の癌遺伝子としての役割を論じている47)
 またETV6 関連転座ではRTKであるPDGFβRTRKCやprotein TKであるABL2, ABL, JAK2, およびSykが融合を起こし,いずれのETV6融合転写産物もETV6のHLHドメインとTKドメインの両者からなるキメラ蛋白をコードしている.これらのETV6融合転写産物ではETV6由来のHLHドメインを介したオリゴマー形成により恒常的にチロシンキナーゼが活性化されることやin vitroで形質転換能を有すること16,48-51)が知られている.今回のETV6-FGFR3融合遺伝子においてもHLHを介した恒常的活性化という点でほぼ同様の発癌機序を有すると考えられる.この様にETV6のHLHドメインは様々なRTKやPTKに融合して,それらを活性化しうることはETV6のHLHの立体構造を考える上で興味深い点であると思われる.
 さらにPeetersらはt(3;12)を有する骨髄増殖性疾患でETV6-MDS1-EVI1ETV6-EVI1の2種類の融合遺伝子が発現している36)ことを発見し,融合転写産物内にETV6の機能的ドメインが無いことから,ETV6プロモーターによるEVI1の異所性発現が癌化を起こすと推察している.さらにChaseらによってt(12;13)(p13;q12)を有するAML3例中1例でETV6-CDX2が発現していることが報告された.CDX2は尾椎体節形成に関与するホメオボックス遺伝子で成体では腸上皮に発現しているが骨髄では発現していない.大腸癌ではCDX2の発現が消失することが知られているが,白血病ではCDX2-ETV6の発現を認めずETV6 exon1-2にCDX2 exon2がインフレームで融合し発現しておりCDX2の異所性発現が癌化を起こすと考えられる33).今回,明らかになったETV6-FGFR3においても,通常では造血細胞に発現しないFGFR3ETV6プロモーターにより異所性に発現することが癌化に寄与すると考えられる.
 以上より今回のt(4;12)(p16;p13)転座によって生ずるキメラ蛋白はFGFR3のligand結合部位を転座切断により欠失しているが,N末端にはETV6由来HLHドメインが存在するため,HLHドメインを介した多量体化により相互的リン酸化し,異所性に発現したFGFR3のチロシンキナーゼドメインが恒常的に活性化することが癌化の原因であると推察される.今後は,この仮説を実験的に検証する必要があると考えられる.

第 4 章

総 括

 今回の研究では2種類の新規ETV6関連転座における遺伝子異常について細胞遺伝学的に解析を行った.t(5;12)(q31;p13),t(4;12)(p16:p13)どちらの転座においてもETV6融合遺伝子の発現が認められたが,発癌における関与のあり方は異なると考えられる.すなわちt(5;12)(q31;p13)転座ではETV6ACS2の遺伝子破壊による機能的低下が発癌機構に関与していると考えられ,t(4;12)(p16:p13)転座ではETV6プロモーターにより癌遺伝子の異所性の発現が誘導され,さらにHLHを介した多量体化によるチロシンキナーゼの活性化が発癌に寄与していると考えられた.近年,TECプロモーターを用いたCMLモデルマウスの研究では,BCR-ABLキメラ蛋白を造血幹細胞レベルで発現させることにより,初めてCMLが再現できること52)が示され,造血器腫瘍の発生には腫瘍発生母地となりうる未分化な前駆細胞レベルで遺伝子異常が生じることが必須と考えられる.WangらのETV6 gene targetingによるETV6の機能解析ではホモ欠損マウスは胎仔期に死亡するものの卵黄嚢造血は影響を受けなかった53).さらに成体でリンパ球を産生できないRAG-2欠損胚盤胞(G418感受性)へG418耐性ETV6(+/−)ES及びETV6(−/−) ESを移植してキメラマウスを作製し,キメラマウス骨髄細胞の選択培地によるコロニー形成により,成体造血におけるETV6の役割を検討したところ,ETV6(−/−)ES由来の前駆細胞は認められず,ETV6は肝臓から骨髄への造血幹細胞の移行,造血の維持に必須であること54)を明らかにしている.このようにETV6は成体造血における幹細胞レベルより発現することが,多様な造血器腫瘍の発生に関与することを可能にしていると考えられる.
 さらにETV6関連転座の頻度を高める原因としてETV6遺伝子のgenome不安定性が示唆されている.Satoらは12p13染色体異常を有するAML/MDS,ALL,悪性リンパ腫における12p13切断点のFISH法による解析の結果,23例中12例でETV6遺伝子内に再構成を認め,さらに詳細な検討では微細な欠失や転座が発生していることを見いだした55).また我々はYamamotoとの共同研究により,12p13に5番長腕が付加した染色体異常を有するMDSにおいて,ETV6内での転座切断が初診時に認められたが,病期の進行に伴ってETV6が完全欠失したことをFISH法で明らかにし,ETV6 内でのgenome不安定性が完全欠失に先立って亢進していることを見いだした19).最近,IshimaeらによりB細胞におけるアポトーシス刺激がin vitroETV6 内のDNA2重鎖切断を引きおこし,その結果ETV6-AML1融合が発生すること56)も報告されている.また今回の研究結果でもETV6 の転座切断点はbreak cluster regionという一定の領域に集中せず,ETV6 の転座切断点の多様性とgenomeの不安定性が種々の転座の発生に寄与していると考えられる.

 結 語

 造血器腫瘍におけるETV6遺伝子異常による発癌機構は多様性に富んでいる.その理由として,未分化造血細胞におけるETV6のプロモーター活性による癌遺伝子の発現,ETV6内のHLH構造による多量体化,ETV6 のgenome不安定性やETV6 の転写抑制的作用による癌抑制的機能が考えられる. 

 謝 辞

 稿を終えるにあたり,御指導,御高閲を賜りました埼玉医科大学第1内科別所正美教授に深謝いたします.また実験に協力頂いた埼玉医科大学染色体検査室の横山泰子女史,宮崎洋美女史および第1内科研究室,内田優美子女史に深謝します.また貴重な御意見を賜りました第1内科非常勤講師山本昭子先生および,第1病理学教室茅野秀一先生,第1内科医局員の先生方の御協力に深謝いたします.

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(C) 2002 The Medical Society of Saitama Medical School