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埼玉医科大学雑誌 第29巻第4号 (2002年10月) 253頁 (C) 2002 The Medical Society of Saitama Medical School

特別講演

主催 埼玉医科大学免疫学教室 ・ 後援 埼玉医科大学卒後教育委員会
平成14年6月24日 於 埼玉医科大学第五講堂

慢性感染症に対する免疫療法の開発

牧野 正彦

(国立感染症研究所ハンセン病研究センター・病原微生物部長)


 国立感染症研究所ハンセン病研究センター・病原微生物部長の牧野正彦先生をお招きして,「慢性感染症に対する免疫療法の開発」と題してお話をしていただきました.先生は,現職に移られる前は,鹿児島大学難治性ウイノレス疾患研究センターに所属しておられましたので,ウイルス・細菌双方をターゲットとして表題に沿ったお話をしていただきました.
 HTLV-I感染によって,一部の宿主は,脱髄性神経疾患であるHTLV-I-associated myelopathy/tropical spastic paraparesis (HAM/TSP)あるいは成人T細胞白血病(ATL)のどちらかを発症します.しかし,これらの患者から分離されたHTLV-Iの遺伝子構造に大きな差はなく,同一病原体が全く異なる二つの病気を引き起こすと考えられます.この現象を患者のT細胞応答性の違いから捉えると,HAM/TSP患者においてはウイルス抗原に対して高応答性を示すのに対して,ATL患者ではT細胞,特にCD8+T細胞の機能的欠陥がそれら病気の発症に関与することが分かってきました.これらは,HAM/TSPの免疫治療を行なうことによってATLの発症が誘導される可能性を示唆します.すなわち,HTLV-I感染に対するT細胞応答性をコントロールすることによって,これら疾患の免疫療法を確立することができます.先生は,APC-T細胞相互作用のAPC側,とりわけprofessional APCである樹状細胞(DC)に焦点を当て,この応答においてDCの果たす役割が大きいことを示されました.
 一方,ハンセン病患者は,M. lepraeの単一細菌感染症であるにもかかわらず,幅広い病型スペクトルを示します.らい腫型(L型)と類結核型(T型)のハンセン病はそのスペクトル上において両極に位置し,M. lepraeに対する細胞性免疫応答性の違いによって説明付けられます.特にL型患者は,M. lepraeに対して有効なT細胞応答を誘導できないことが知られていますが,DCをAPCとしてM. leprae菌膜画分を抗原提示させることによって,T細胞にIFN-γ産生を誘導し得ることが明らかとなりました.このことは,今後のハンセン病に対するワクチンの開発および免疫療法の確立における有用な手がかりとなりうることが示されました.
 本セミナーは免疫学講座が企画する「第3回免疫アレルギー学セミナー」でもあり,参加された先生方の活発なご討論を頂きました.この場を借りて御礼申し上げます.

(C) 2002 The Medical Society of Saitama Medical School