埼玉医科大学雑誌 第30巻 第2号別頁 (2003年4月) T1-T10頁 ◇論文(図表を含む全文)は,PDFファイルとなっています.
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Thesis
細胞間接着によるGab-1のチロシンリン酸化

篠原 将彦
埼玉医科大学総合医療センター第一内科学教室
(指導:吉田 行雄教授)

医学博士 甲第860号 平成15年3月28日 (埼玉医科大学)


 Gab-1はHGF/SF受容体であるc-Metや,EGFレセプター等の受容体型チロシンキナーゼによってチロシンリン酸化を受けるマルチプルドッキングタンパク質である.今回我々は,E-カドヘリンによる細胞間接着機構を解析するため,Gab-1のチロシンリン酸化について検討した.細胞間接着はGab-1のチロシンリン酸化を増加させ,その破綻はGab-1のチロシンリン酸化を減少させた.抗E-カドヘリン抗体は細胞間接着依存性のGab-1のチロシンリン酸化を減少させ,E-カドヘリンの発現はGab-1のチロシンリン酸化を増加させた.選択的なSrcファミリーキナーゼの阻害剤は細胞間接着依存性のGab-1のチロシンリン酸化を減少させ,この酵素の活性を阻害するC-terminal Src キナーゼのドミナントネガティブ変異体の強制発現はGab-1のチロシンリン酸化を増加させた.細胞間接着の破綻はGab-1のチロシンリン酸化を減少させ,同時に細胞間接着に反応するMAPキナーゼやAkt活性を減少させた.これらの結果からE-カドヘリン依存性の細胞間接着は,SrcファミリーキナーゼによってGab-1のチロシンリン酸化を増加させ,Ras/MAPキナーゼとPI3キナーゼ/Aktカスケードの活性を調節していることが示された57)


(C) 2003 The Medical Society of Saitama Medical School
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