埼玉医科大学雑誌 第30巻 第3号 (2003年7月) T73-T79頁 ◇論文(図表を含む全文)は,PDFファイルとなっています. PDF
(2.3 MB) 神経因性疼痛は末梢神経あるいは中枢神経の機能異常により生じる機能性疼痛である.その発症メカニズムは複雑で治療に難渋することも多い.今回我々はラットを用いて坐骨神経切断モデルを作製し,その坐骨神経切断部に末梢神経再生促進因子である酸化型ガレクチン-1を0.84μg,単回直接投与した.そして末梢神経傷害後の神経再生と神経因性疼痛の発症抑制の関連および酸化型ガレクチン-1の神経因性疼痛治療としての可能性について検討した. 坐骨神経を切断して酸化型ガレクチン-1を投与した14日後に,自傷行動を判定した.また後根神経節を含む坐骨神経およびその入力相当レベルの脊髄を摘出して,抗サブスタンスP受容体(NK1R)抗体を用いたウェスタンブロット解析と,抗サブスタンスP抗体,抗NK1R抗体,抗P0(末梢神経ミエリン糖蛋白)抗体を用いた免疫組織化学染色を行った. 酸化型ガレクチン-1投与により自傷行動スコアは有意な低下を示し,さらに坐骨神経切断端の神経線維の伸長促進,抗P0抗体の発現の増加,後根神経節での小型細胞の維持,サブスタンスPの発現の増加,脊髄でのサブスタンスPの発現の増加とNK1Rの発現の減少が認められた.以上のことから酸化型ガレクチン-1が末梢神経切断後に後根神経節の小型細胞の維持を介して神経因性疼痛の発症を抑制する可能性が示唆された. Keywords: 神経因性疼痛,酸化型ガレクチン-1,サブスタンスP,サブスタンスP受容体(NK1R),坐骨神経切断モデル
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