埼玉医科大学雑誌 第32巻 第2号別頁 (2005年4月) T43-T51頁 ◇論文(図表を含む全文)は,PDFファイルとなっています.
PDF (2.4 MB)

Thesis
ビタミンD 結合タンパク(DBP)遺伝子多型と閉経後女性における骨量・骨代謝マーカーとの関連

清水 省志
埼玉医科大学産婦人科学教室
(指導:畑 俊夫教授)

医学博士 甲第931号 平成16年3月31日 (埼玉医科大学)



 骨は形成・吸収(リモデリング)を繰り返しながら,その構造,骨量,強度および体液のカルシウム濃度を維持している.加齢,閉経等により,リモデリングが破綻して骨量が低下し,骨の微細構造が変化して脆弱性が亢進した疾患が骨粗鬆症であり,高齢化社会が進むなか老後のQOLを左右する大きな因子と考えられる.
 加齢における骨粗鬆症との相関を示す遺伝子マーカーを検索するために,骨代謝に関連すると想定される遺伝性因子(Luteinizing Hormone-β subunit:LH-β,α2-macroglobulin:A2M,Tumor Necrosis Factor-α:TNF-α,Vitamin D-Binding Protein:DBP)に着目し,その遺伝子多型と骨量,骨代謝マーカーについて解析し検討を行った.
 健康なボランティアの閉経後女性236名(年齢41-91歳,閉経後1年以上,平均年齢±SD;64.3±9.2歳)の血液一般生化学検査,骨形成マーカーとしてアルカリフォスファターゼ,オステオカルシン,骨吸収マーカーとしてピリジノリン,デオキシピリジノリンそして脊椎骨密度データを用いた.
 LH-β遺伝子はエクソン2(Trp8Argおよび Ile15Thr置換),A2M遺伝子はVal1000Ile置換,TNF-α遺伝子はプロモーター領域の−308G/A,−857C/Tの2カ所の置換,DBP遺伝子はエクソン11(Glu416Asp およびLys420Thr置換)について検討したところ,LH-β遺伝子,A2M遺伝子,TNF-α遺伝子では多型と骨密度,骨代謝マーカーとの有意な相関は示さなかった.一方,DBP遺伝子多型では骨代謝マーカーであるアルカリフォスファターゼ,オステオカルシンおよびデオキシピリジノリンについて有意な相関が示された.DBPはビタミンDと結合し運搬する役割があり,骨代謝に影響をおよぼしている可能性が考えられるが,DBP遺伝子多型と骨密度との相関は有意ではなかった.
 本研究により,DBP遺伝子多型と種々の骨代謝マーカーとの相関を示し, 骨代謝回転状態や将来における骨粗鬆症発症の遺伝子マーカーの候補となりうることが示唆された.
Keywords: DBP,LH-β,A2M,TNF-α,遺伝子多型,骨粗鬆症,骨吸収,骨形成


(C) 2005 The Medical Society of Saitama Medical School