埼玉医科大学雑誌 第32巻 第3号別頁 (2005年7月) T69-T76頁 ◇論文(図表を含む全文)は,PDFファイルとなっています.

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Thesis
マウス線維芽細胞3T3-L1細胞が脂肪細胞に分化する際の細胞内情報伝達経路の検討

富山 浩二
埼玉医科大学内科学内分泌・糖尿病内科部門
(指導 片山 茂裕 教授)

医学博士 乙第973号 平成17年3月25日 (埼玉医科大学)


 マウス線維芽細胞3T3-L1細胞は,isobutyl-methylxanthine(IBMX), dexamethasone(DEX), insulinによって効率良く脂肪細胞に分化する.Insulin受容体はチロシンリン酸化型の受容体の一つで,その生理作用の多くはphosphatidylinositol 3-kinase(PI3-kinase)によって介される.そこで特異的PI3-kinase阻害薬であるwortmanninを用い,その脂肪細胞分化に及ぼす影響を見た.Wortmanninはinsulinで3T3-L1細胞を刺激した際のPI3-kinase活性を濃度依存的に抑制し,また3T3-L1細胞の脂肪細胞への分化も同様に濃度依存的に抑制した.次に分化過程をDay 0-2の初期相とDay 2-4の後期相に分け,どちらか一方のみに薬剤を添加した場合の分化に及ぼす影響を見た.Wortmanninは分化の初期相,あるいは後期相のみに用いた場合も,3T3-L1細胞の分化を約50%に抑制した.同様の実験を3-Hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A(HMG-CoA)還元酵素阻害剤simvastatinで行ったが,wortmannin同様後期相のみに用いても分化は抑制された.これらの結果から,3T3-L1細胞の脂肪細胞への分化においてPI3-kinaseが重要な役割を演じていること,分化の過程における細胞内情報伝達経路は,その持続的な活性化のみでなく,初期相,あるいは後期相それぞれが単独でも重要であることが示唆された.

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