埼玉医科大学雑誌 第35巻 第1号別頁 (2008年12月) T1-T8頁 ◇論文(図表を含む全文)は,PDFファイルとなっています.

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Thesis
mRev-Erbβ プロモーター/エンハンサー領域の同定とその概日リズム性発現機構の解析

徐 海源
埼玉医科大学 生理学

医学博士 甲第1051号 平成19年3月23日 (埼玉医科大学)


Transcription and regulation of the mouse Rev-Erbβgene
Haiyuan Xu (Department of Physiology, Saitama Medical University, Moroyama, Iruma-gun, Saitama 350-0495, Japan)

 略語:BMAL1 (Brain and Muscle Arnt-like 1)
BMAL2 (Brain and Muscle Arnt-like 2)
CLOCK (Circadian Locomotor Output Cycles Kaput)
NPAS2 (Neuronal PAS Domain Protein 2)
PER (Period)
CRY (Cryptochrome)
ROR (Retinoic acid receptor-related Orphan Receptor)
E4BP4 (Adenovirus E4 promoter binding protein 4)
DBP (D-site of Albumin Promoter Binding Protein)
RORE (ROR/Rev-Erb Response Element)

要旨:時計遺伝子Bmal1は暗期にピークのある概日リズム性の発現がある.このリズム性発現はBmal1遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域にある2箇所のROREにROR/REV-ERBファミリー(RORα,RORβ,RORγ,REV-ERBα, REV-ERBβ)に属する転写因子が作用し形成されていると考えられている.この中でREV-ERBβは恒常的抑制作用を有するオーファン核内受容体として知られているが,その機能や発現制御機構に関する報告は少なく,特にプロモーター/エンハンサーに関する詳細な研究はなされていないことから,マウスRev-Erbβプロモーター/エンハンサーをクローニングしその解析を試みた.
 マウスゲノムデーターベースではRev-Erbβ転写開始点の下流にギャップが存在することから,このギャップを挟むようにPCRプライマーを設計し,プロモーター領域から第1エクソンおよびイントロン含む約2.1 kbの領域(mRev-Erbβ-F-L)をクローニングした.さらにNIH3T3の培養細胞系でルシフェラーゼアッセイとリアルタイムモニタリングを用いて,時計遺伝子による転写制御機構とリズム性発現に関する解析を行った.
 mRev-Erbβ遺伝子の第1エクソンを含む上流約1.3 kbの領域 (mRev-Erbβ-promoter/enhancer(1.3 K))には典型的な時計遺伝子結合配列はなかったが,第1イントロン領域(mRev-Erbβ-promoter/enhancer (del-673))には3箇所のE-boxとD-boxが存在した.mRev-Erbβ−F-Lは,Bmal1/CLOCK,BMAL2/NPAS2およびDBPによって転写が促進された.リアルタイムモニタリング法では mRev-Erbβ-promoter/enhancer(1.3 K)にはリズム性の発現がなく,mRev-Erbβ-F-Lおよび mRev-Erbβ-promoter/enhancer(del-673) にはリズム性発現が見られ,しかも mRev-Erbβ-F-L の振幅が大きかったことから,第1エクソンを含む上流域はプロモーターとして,第1イントロンはリズム性発現を制御するエンハンサーとして働いていることが明らかとなった.

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Keywords: Circadian rhythm, REV-ERBβ, BMAL1/CLOCK, clock genes, transcriptional regulation


(C) 2008 The Medical Society of Saitama Medical University