埼玉医科大学雑誌 第36巻 第1号別頁 (2009年9月) T1-T10頁 ◇論文(図表を含む全文)は,PDFファイルとなっています.

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Thesis
全ゲノムSNP遺伝型情報を用いた自己接合性断片の推定と, その劣性遺伝疾患遺伝子同定への応用

福山 俊一郎
埼玉医科大学 臨床医学研究系 内科学 呼吸器内科学

医学博士 甲第1099号 平成21年2月13日 (埼玉医科大学)


 Homozygosity mappingは,近親婚家系DNAサンプルを用いて常染色体劣性遺伝疾患の疾患責任遺伝子を同定する手法である.同手法を適応するためには,患者両親が近親婚であることを家族歴から確認する必要がある.家族歴にはしばしば誤りがあり,また数代先の縁戚関係は忘れられてしまうことも多く,家族歴での検索には限界がある.近親婚の影響は,ASとして具現化されるため,感度,特異度の明確なAS同定法を確立すれば,各個人の近親婚の影響を客観的に評価でき,家族歴に関わらずHomozygosity mappingを適応できるはずである.本研究では,全ゲノムレベルのSNP遺伝型データを用いて,家族歴を使用せずに各被験者における近親婚の影響を検索するアルゴリズムを作成した.さらに本アルゴリズムを4例の近親婚のあるα1アンチトリプシン欠損症症例,2例の近親婚のないα1アンチトリプシン欠損症症例に適応し,疾患遺伝子解析を行なって良好な結果を得た.本アルゴリズムはhomozygosity mappingの応用範囲を拡大し,浸透率の低い劣性遺伝疾患,高齢で発症する劣性遺伝疾患など,従来の手法では解析困難であった劣性疾患の責任遺伝子同定を加速すると考えられる.


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