埼玉医科大学雑誌 第38巻 第1号別頁 (2011年8月) T1-T7頁 ◇論文(図表を含む全文)は,PDFファイルとなっています. PDF (1.1 MB)
近藤 美喜子 医学博士 甲第1080号 平成20年3月28日 (埼玉医科大学) 目的:麻薬性鎮痛薬フェンタニルと静注用NSAIDフルルビプロフェンアクセチル(以下FP)の相互作用を見るために,Target Controlled Infusion(以下TCI)を利用して皮膚切開時50%の体動を抑制するフェンタニル濃度(以下Cp50incision)がFPによって,どのくらい低下するかを検討する事と,予測及び実測フェンタニル血中濃度からフェンタニルTCIソフトウエアSTANPUMPTMの精度を評価する事である. 対象と方法:文書による承諾を得た婦人科腹腔鏡手術予定患者54名を対照群(C群)とFP投与群(F群)の2群に分けた.全身麻酔導入気管挿管後,C群は生食をF群はFP1 mg/kgを静注した.麻酔の維持はプロポフォール,フェンタニルによる全静脈麻酔とした.プロポフォールTCI濃度は予測血中脳内濃度5 μg/mlで平衡維持した.フェンタニルTCI濃度は両群とも第一例目を3 ng/mlで開始し以降は体動の有無により次患者の濃度を0.5 ng/ml上下させるup-down法にて両群のCp50incisionを求めた.STANPUMPの精度は合計103サンプルの実測フェンタニル濃度と予測フェンタニル脳内(血中)濃度を比較して検討した(回帰直線,予測値と実測値の平均値の差の検定,TCI精度指標のMDPE,MDAPEで評価). 結果:Cp50incisionは予測血中濃度がC群で1.83±0.58 ng/ml(Mean±SD以下同),F群では0.75±0.45 ng/ml(p=0.0048),実測血中濃度は C群で1.51±0.97 ng/ml,F群で0.51±0.14 ng/ml(p=0.039)でどちらもF群が低かった. 考察と結論:1 mg/kgのFP執刀前投与はフェンタニルCp50incisionを約30%に低下させた.STANPUMPTMの予測値の精度は悪かった.
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