埼玉医科大学雑誌 第38巻 第1号別頁 (2011年8月) T17-T25頁 ◇論文(図表を含む全文)は,PDFファイルとなっています.

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Thesis
アペリン-12の胃酸分泌とヒスタミン分泌増加作用に関する研究 ―ラット胃内腔及び血管灌流単離胃を用いた検討―

大野 志乃
臨床医学研究系 内科学 消化器・肝臓内科

医学博士 甲第1166号 平成23年3月25日 (埼玉医科大学)


背景:アペリンはウシの胃から抽出,分離されたペプチドであり,オーファン受容体APJに対する内因子リガンドとして発見された.アペリンとAPJレセプターは全身に広く分布している.アペリンは心血管系など多数の臓器の調節因子として重要な役割を担っていると推測されるが,アペリンの作用は十分に解明されていない.この研究は胃酸分泌におけるアペリンの作用を明らかにし,その作用のメカニズムの一部を解明した.

方法:胃内腔灌流ラットを作成し,蠕動ポンプを使用し胃に生理食塩水を灌流させた.アペリン-12,-13または-36の胃酸分泌への作用を検討するためにラットへ静脈投与を行った.さらにヒスタミン及び迷走神経の関与を明らかにするためアペリン投与15分前に前投薬としてファモチジン(0.33 mg/kg),5分前に硫酸アトロピン(0.1 mg/kg)静脈投与が施行された.またヒスタミン分泌に対するアペリンの作用を検討するために単離血管灌流ラット胃を作成した.灌流液中のヒスタミンはラジオイムノアッセイ(RIA)により測定した.単離胃の胃粘膜中のヒスチジンデカルボキシラーゼ(HDC)mRNA はreal time RT-PCRにより測定した.

結果:アぺリン-12(20−100 μg/kg)は用量依存性に胃酸分泌を増加させた.1)アペリン-12(100 μg/kg)は胃酸分泌を203%まで増加させた.2)アペリン-13と-36では酸分泌の増加は認められなかった.3)ファモチジンはアペリンの酸分泌刺激作用を完全に抑制した.4)アペリン-12(100 μg/20 ml/10 min)は単離血管灌流ラット胃で278%のヒスタミン分泌増加を認めた.またアペリン-12は単離血管灌流ラット胃においてHDCmRNAをコントロールと比較して480%まで増加させた.硫酸アトロピンは胃酸分泌においてアペリンの作用を抑制しなかった.アペリン-12はガストリン投与による酸分泌刺激の増加を増幅した.

結論:この結果はアペリン-12が胃酸分泌刺激を増加させその機序にヒスタミン分泌と合成の増加を介していることを示しており,アペリンが胃酸分泌に関与していること,あるいは胃酸分泌の調節因子のひとつであることを示唆しているものと思われる.



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