埼玉医科大学雑誌 第39巻 第1号別頁 (2012年8月) T1-T7頁 ◇論文(図表を含む全文)は,PDFファイルとなっています.

PDF (496 KB)

Thesis
漢方薬六君子湯の健常成人における血漿中消化管ホルモン濃度への作用

高林 英日己
臨床医学研究系 内科学 消化器・肝臓内科学

医学博士 甲第1191号 平成24年1月27日 (埼玉医科大学)


【背景】
 漢方薬の六君子湯は数百年前に我が国において確立された調合薬である.これまで慢性胃炎によると思われる上腹部症状や食欲不振に対して処方されてきたが,最近では新たな疾患概念である機能性胃腸障害の患者への投与が試みられ,胃運動を改善し,その上腹部症状や食欲不振を改善することが報告されている.しかし,これらの作用メカニズムは十分に解明されていない.

【目的】
 六君子湯による上腹部症状改善作用のメカニズムを明らかにするために我々は消化管の運動や分泌機能の調節作用を有するアシルグレリン,デスアシルグレリン,ガストリン,コレシストキニン(CCK)の血漿濃度に対する六君子湯の効果を検討した.

【方法】
 C21人の健常成人を被験者として上記の消化管ホルモンの測定のために血液検体を空腹期・流動食(300 Kcal)摂取1時間後・2時間後に採取した.1週間六君子湯を服薬後に同様に採血検査を施行した.アシルグレリン,デスアシルグレリン,ガストリン,CCKは市販の測定キットにて測定した.

【結果】
 1週間の六君子湯投与により空腹期・食後2時間での血漿アシルグレリン濃度が六君子湯服薬前に比べて有意に上昇した.しかし,デスアシルグレリンおよびガストリンの血漿濃度には影響がなかった.1週間の六君子湯投与はCCKの空腹期の血漿濃度を低下させた.

【結論】
 これらの結果より,六君子湯は空腹期と食間(食後2時間)のアシルグレリンの血漿濃度を上昇させ,空腹期のCCK血漿濃度上昇を低下させることが示唆された.六君子湯は少なくとも部分的にアシルグレリンとCCKの分泌への作用を介することで食前および食間の食欲亢進を促すことが示唆された.


(C) 2012 The Medical Society of Saitama Medical University