埼玉医科大学雑誌 第40巻 第1号別頁 (2013年8月) T1-T11頁 ◇論文(図表を含む全文)は,PDFファイルとなっています.

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Thesis
インドメタシン起因性小腸潰瘍形成過程におけるアドレノメデュリンの作用機序についての検討

可児 和仁
臨床医学研究系 内科学

医学博士 甲第1227号 平成25年3月22日 (埼玉医科大学)


【背景】
 アドレノメデュリンは血流増加作用,抗炎症作用などを有することが報告されている.今回,インドメタシン小腸潰瘍形成過程におけるアドレノメデュリンの発現変化とその受容体の発現につき検討するとともに,アドレノメデュリン・アンタゴニストを用いて小腸潰瘍形成に及ぼす影響について検討した.

【方法】
 インドメタシンを連日2日間皮下注射して小腸潰瘍を作成し,アドレノメデュリンおよびその受容体であるcalcitonin receptor-like receptor (CRLR)とreceptor activity modifying protein (RAMP)-2の発現を検討した.同時にアドレノメデュリン,CRLR,RAMP-2 および炎症性サイトカインであるCXCL-1 mRNAの発現をreal time RT-PCR法を用いて検討した.また,アドレノメデュリン・アンタゴニストAdrenomedullin(22-52)peptideの作用についても検討した.

【結果】
 インドメタシン小腸潰瘍形成はday2が有意に強かった.炎症性サイトカインであるCXCL-1 mRNAの発現も同様に有意に高かった.アドレノメデュリン,CRLR,RAMP-2の発現は上皮細胞,間質細胞,筋肉に広く発現し,day2ではアドレノメデュリンmRNAの発現は有意に高かった.CRLR,RAMP-2mRNAの発現も高い傾向にあった.Adrenomedullin(22-52)peptideは濃度依存性にインドメタシン小腸潰瘍の形成を増悪させた.

【結論】
 本研究により,インドメタシンによる組織障害発症時には内因性アドレノメデュリンおよびその受容体の発現が増加し,内因性アドレノメデュリンの増加はインドメタシン小腸潰瘍形成に対し抑制的に働くことが示唆された.


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