埼玉医科大学雑誌 第40巻 第1号別頁 (2013年8月) T13-T20頁 ◇論文(図表を含む全文)は,PDFファイルとなっています.

PDF (1.7 MB)

Thesis
プロテオーム解析による咀嚼筋腱腱膜過形成症患者の側頭筋腱に特異的に発現するタンパク質の同定

中本 文
臨床医学研究系 口腔外科

医学博士 甲第1228号 平成25年3月22日 (埼玉医科大学)


【目的】
 咀嚼筋腱腱膜過形成症は,側頭筋の腱や咬筋の腱膜などが過形成するために,筋の伸展を妨げて開口制限を呈する新しい疾患である.組織学的には正常な腱組織の過形成とされているが,病態について不明な点も多い.本研究では,腱組織のプロテオーム解析により本疾患に特徴的に発現するタンパク質を見出し,病態を解明することを目的とした.

【対象と方法】
 対象は,疾患群として本疾患患者3名,対照群として開口制限のない顎変形症患者3名の側頭筋腱組織とした.各組織に対してタンパク質の二次元電気泳動を行い,マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization)/飛行時間型質量分析計(Time of Flight Mass Spectrometry)(MALDI/TOF MS)を用いたペプチドマスフィンガープリンティング分析(PMF分析)を行なった.

【結果】
 同定された24のタンパク質のうち,対照群との比較において疾患群で特徴的な発現がみられたのは,fibrinogen fragment D,β-crystallin A4,myosin light chain 4の3つであった.

【結語】
 本研究で特徴的な発現がみられたタンパク質が組織の線維化や腱細胞の機能低下,ストレスに関与していることから,組織学的には正常に見えても,タンパク質レベルでは正常でないことが考えられ,これらのタンパク質が本疾患の有用な診断マーカーとなることも考えられた.


(C) 2013 The Medical Society of Saitama Medical University