埼玉医科大学雑誌 第41巻 第2号別頁 (2015年3月) T55-T62頁 ◇論文(図表を含む全文)は,PDFファイルとなっています.

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Thesis
急性冠症候群を疑う胸痛で経過観察を必要とする患者における血流依存性血管拡張測定の意義

米田 修平
国際医療センター 心臓内科

医学博士 甲第1259号 平成26年3月28日 (埼玉医科大学)


【緒言】
 血流依存性血管拡張(FMD: Flow-mediated vasodilation)は,超音波診断装置を用いて血管内皮機能を非侵襲的に計測する手法として普及している.特に最近,我が国において開発されたFMD測定に特化した超音波装置UNEXEF18Gにより,半自動的に測定することが可能となり,再現性が改善した.FMDと冠危険因子との関連性について様々な研究が行われている.しかし,急性冠症候群(ACS: Acute coronary syndrome)とFMDとの関連性は十分に研究されていない.そこで我々は,胸痛で来院しACSが疑われた患者のうち,緊急の冠動脈造影あるいは治療を要する症例を除外した患者のFMDを測定し,ACSにおけるFMD測定の意義を前向きに検討した.

【方法】
 対象は,胸痛を主訴に来院し,ACSが疑われ,FMD測定が可能であった41例(男性26例,女性15例,平均年齢65±11歳)である.超音波診断装置はUNEXEF18G(41例)を使用し,来院後48時間以内にFMDを測定した.ACSの最終診断は主に冠動脈造影によって行われた.

【結果】
 FMDはACS群(n=10)と非ACS群(n=31)でともに低値を示し,ACS群は非ACS群と比較し有意に低値を示した(2.0±1.0% vs. 3.6±2.7%,P=0.01).ACSの診断特性の評価においてFMDのカットオフポイントを4.1%とし,4.1%未満を陽性とした場合にACSの陰性予測値が高値を示した(感度100%,特異度39%,陰性予測値100%,陽性予測値34%;P=0.02).

【結論】
 ACS群では非ACS群に比してFMDが低値を示し血管内皮機能の障害が疑われた.FMD4.1%以上では胸痛患者においてACSの可能性を否定できる.


(C) 2015 The Medical Society of Saitama Medical University