埼玉医科大学雑誌 第44巻 第2号 (2018年3月) 67-75頁◇論文(図表を含む全文)は,PDFファイルとなっています

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原 著
帯状疱疹後神経痛の予防を目的とする 帯状疱疹の初期治療についての検討
― 最近の3年10ヶ月間に治療した140症例の後方視的研究 ―

清水 健次,川崎 潤,丸尾 俊彦,小山 薫
* 埼玉医科大学総合医療センター 麻酔科

〔平成28年12月19日 受付 / 平成29年10月20日 受理〕


A study on the treatment of the acute phase of herpes zoster for prevention of the post-herpetic neuralgia:
A retrospective study of 140 cases treated during the last 3 years and 10 months


Kenji Shimizu, Jun Kawasaki, Toshihiko Maruo, Kaoru Koyama,
* Department of Anesthesiology, Saitama Medical Center, Saitama Medical University

【背 景】帯状疱疹の初期治療において,いろいろな治療法が広く用いられている.しかしながら,その後の難治性疼痛であるいわゆる帯状疱疹後神経痛に悩まされるケースが存在する.急性期帯状疱疹治療についての明確な指針は示されていない.この研究は,急性期帯状疱疹治療についての鎮痛薬の影響と神経ブロックの治療開始時期について評価をおこなった.
【方 法】140例をサブグループに分け,急性時期の帯状疱疹痛管理について後方視的に鎮痛薬の影響と治療介入のタイミングを評価した.研究I:治療内容によって140症例を4つのグループに分けた:グループ1は,オピオイドと神経ブロック(以下NB)と鎮痛補助薬(以下AA)を用いた58例,グループ2は,NBとAAを用いた38例,グループ3はオピオイドとAAを用いた21例,グループ4はAAのみで治療をおこなった23例とした.研究II:140症例を,神経ブロックをおこなった(グループ1+2)と神経ブロックをおこなわなかった(グループ3+4)に分けた.研究III:140症例を,オピオイドを使用した(グループ1+3)とオピオイドを使用しなかった(グループ 2+4)に分けた.そして,研究I - IIIを発症後一ヵ月までに治療を開始した早期治療群とその後の一ヵ月に治療を開始した後期治療群の2群に分けた.研究IV:神経ブロックの有効な開始時期を追究するため,96例の神経ブロック症例をカットオフ日数20 - 40日と変化させ,感度分析をおこなった.更に,研究I - IVにおいて,すべてのグループ間で,発症3・6ヵ月後のVisual Analogue Scale(VAS)値を比較した.VAS低下速度を評価するため,各グループの経時データにつき,対数線形回帰モデルを適応した.Log(VAS)=β01(月数)感度分析も,最適なカットオフ日数を評価するためにおこなわれた.
【結 果】発症30日以内に治療が開始されている全ての(早期)群で,6ヵ月後のVAS値が低かった.回帰分析により早期治療群の回帰係数β1は,0.260〜0.302の範囲でより高い値を示し,後期治療群では0.204〜0.214の範囲で低い値を示した.早期治療群の方がより早く痛みを軽減することが明らかにされた. 発症後30日以内の治療が最適であることは感度分析の結果から明らかとなった.そして,34日までの神経ブロック治療が望ましいと推測された.
【結 語】急性期帯状疱疹の治療において,強い痛みを早期に緩和する必要がある.発症後一ヵ月以内の神経ブロックの開始又は,早期のオピオイド投与が重要であることが示唆された.

J Saitama Medical University 2018; 44(2): 67-75
(Received December 19, 2016 / Accepted October 20, 2017)

Keywords: Herpes zoster, zoster-associated pain, postherpetic neuralgia, opioids, nerve block


(C) 2018 The Medical Society of Saitama Medical University