埼玉医科大学雑誌 第48巻 第1号 (令和3年8月) 12-17頁◇論文(図表を含む全文)は,PDFファイルとなっています.
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原 著
透析患者における遊離皮弁再建手術症例を伴う頭頸部癌治療の有用性の検討
井上 準*,久場 潔実,林 崇弘,小柏 靖直,蝦原 康宏,中平 光彦,菅澤 正
埼玉医科大学国際医療センター 頭頸部腫瘍科・耳鼻咽喉科
〔令和2年7月9日受付/令和3年2月1日受理〕
我が国の透析患者数は年々増加し2017年には33万人を超え,透析技術・管理の進歩に伴い長期生存が可能となっており,高齢透析患者の増加と共に悪性腫瘍の治療機会が増加することが予想される.当然ながら,透析患者に対する手術治療に関してはさまざまな合併症やリスクがあるが,頭頸部癌領域において透析患者に関する手術治療に関する報告は少ない. そこで,今回我々は透析中の患者に対して侵襲の高い頭頸部癌外科治療を行った場合の利益やリスクを知ることを目的として,透析中の患者に当院で遊離皮弁再建を伴う頭頸部癌手術を行った症例について検討を行った.対象は,2007年4月から2018年12月まで当院で遊離皮弁再建手術を行った慢性透析患者10例とした(男性6例,女性4例,平均年齢71.3歳),原発部位は口腔癌7例,喉頭癌1例,下咽頭癌1例,顎下腺癌1例であった.維持透析期間は平均3.7年で術後合併症は60%に認めた.3年粗生存率は30%,3年疾患特異的生存率は54.9%であった.当院舌遊離皮弁再建症例との比較では3年粗生存率で有意に舌再建症例の方が良好な結果であった(P=0.01)が,一方3年疾患特異的生存率では有意差を認めなかった(P=0.38).また,局所制御率は90%と良好な結果であった. 術後合併症のリスクは増加するものの,予後,局所制御に関しては癌の良好な制御が得られるため,透析患者においても遊離皮弁再建を伴う頭頸部癌外科治療は有用であると考える.
J Saitama Medical University 2021; 48(1): 12 -17
(Received July 9, 2020/Accepted February 1, 2021)
Keywords: head and neck cancer, free flap reconstructive surgery, maintenance dialysis, complications
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(C) 2021 The Medical Society of Saitama Medical University |
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