食道がん

■はじめに

食道は長さが25−30cmほどの管状の臓器で内側は粘膜で覆われています。この粘膜から発生した悪性腫瘍が食道がんです。粘膜の下には血管やリンパ管に富んだ粘膜下層がありその外に筋肉の層があります。食道がんは非常に転移をしやすいがんのひとつであり特にリンパ節転移が多いのが特徴です。その深さ、リンパ節転移の程度、他の臓器への転移の3つの因子で進行度が決定します。そしてその進行の程度によって治療方針が決定されますが、食道がんは悪性度が高く早期に転移を起こすため、手術のみならず放射線、抗がん剤を含めた集学的治療が必要になる場合があります。

治療前には食道透視、内視鏡検査、超音波検査、CT、骨シンチグラフィー、PET-CTなどの検査を行い、進行の程度を判断します。また、肺機能検査、心機能検査などにより全身状態を評価し、治療法が複数ある場合、そのメリット、ディメリットを本人家族に十分説明し、相談し、その上で治療方針を決定いたします。

図1 食道がんの進展と深さ
図2 がんはリンパ流や血流にのってリンパ節、全身の臓器(主に肝、肺)へと転移します
図3 食道がんの進行度 食道がん治療ガイドラインより引用

■治療

@内視鏡的治療

がんの深さが粘膜の浅いところに留まっている(粘膜筋板に達しない)場合に適応となります。最近は技術、器具の向上により内視鏡的粘膜下層剥離術が開発され、広範囲の病変も一括で切除できるようになりました。ただし、広がりが食道の全周に及ぶものは切除後に狭窄になり易いとされています。

A手術治療

進行度IからVの方が対象となります。進行度Vではがんが周囲の臓器に食い込んでおらず、遠隔転移のないものが適応となります。手術は食道と転移の可能性のあるリンパ節を切除します。食道がんの多くは胸の中にある部分に発生するので、切除するには胸を開く必要があり、また主に胃を使い再建するため腹部も開け、さらに首の切開も必要となります。このため大きな手術となるため体にはかなりの負担となり、手術時間は5−8時間かかります。手術の問題点としては死亡のリスクが3-5%と消化器の手術の中では高率であり、肺炎や縫合不全などの合併症があることです。

また、手術では食道の大部分がなくなり、胃も管状に作り変えられるため、手術前に狭窄で食事が食べられなかった方以外では術後の食事量は減少します。手術自体の体への負担も大きいため、順調に食べられるのは半年を過ぎてからという人が多く、体重も10kgほど減少します。

しかし、現在のところ手術がもっとも根治性の得られる治療法とされています。

図3 典型的な胸部食道がんの手術 食道と胃の一部を切除し胃を用いて再建します。

B化学放射線療法

抗がん剤を用いながら、放射線を病巣にあてる治療法で2ヶ月ほどかかります。内視鏡治療の適応となる方と、遠隔転移がある方以外のすべての病期で適応となります。しかし、切除可能な方では外科手術が標準治療となり、手術が難しい場合や、臓器の温存を希望される方に施行します。

副作用として、吐き気、食欲不振、食道炎、造血機能の低下、肺炎、胸水、心臓の機能の低下などがあります。全身状態がとくに悪い方や、症状を抑える目的の方には抗がん剤を用いない放射線のみの治療が行われることもあります。

C化学療法(抗がん剤治療)

食道から遠い場所に転移がある方や、残念ながら再発してしまった方に用います。また、手術前や術後に再発を減らす目的で使用することもあります。現在食道がんに多く使用されている抗がん剤は、5-FUとシスプラチンという薬で、あわせて使用することも多く、点滴で行ないます。抗がん剤は分裂・増殖が盛んな細胞に作用するので正常細胞でも血液を作る骨髄や粘膜などにも影響します。そのため副作用が出現し、骨髄抑制(貧血、白血球減少、血小板減少)や吐き気、下痢、倦怠感などがあります。また、シスプラチンには腎臓の機能を低下させる副作用があり、腎臓の機能を評価して行います。副作用の程度は個人差がありますが、副作用を軽減させる薬もあわせて使用したり、量の調節を行ないなるべく無理のない形で治療を行ないます。