未破裂脳動脈瘤

未破裂脳動脈瘤があるといわれた方へ

ある日とつぜん、「脳の中の動脈の瘤がある、破裂したらくも膜下出血になる」、といわれたら、誰しもが驚き不安になってしまうことと思います。最近脳ドックなどで偶然見つかる機会も増えている「未破裂脳動脈瘤」ですが、「念のため」と検査を受けて動脈瘤がみつかってしまい、そのために悩む方も少なくありません。

現在、未破裂脳動脈瘤の手術治療は、日本のみならず世界で数多く行われています。ただ、動脈瘤1つの破裂を防ぐために、結果的には破裂しない動脈瘤がその数十倍以上の手術が行われている、というのが現状です。これは、出血するかどうかを100%予知することができない以上、また患者さんの不安を取り除くという意味では、ある程度はしかたのないことであるといえます。しかし理想的には、不要な手術は避けなければなりません。当科は急性期脳卒中診療に全力で取り組んでおりますので破裂脳動脈瘤の治療数は非常に多いのですが、未破裂脳動脈瘤の治療数は他の施設よりむしろかなり少ないといえます。(当科は、新聞社や雑誌社からの手術件数ランキング本への協力依頼はお断りしています。手術適応基準が明確でないまま手術件数のみで未破裂脳動脈瘤の治療を評価することは不適切であると考えているためです。ちなみに当科の手術件数はホームページに公表しております)

当科の未破裂脳動脈瘤に対する治療方針は、「まず予防手術が不要と思われる方にはしっかりと外来で経過観察を行って安心して日々の生活を送れるように支援する」ことです。そして未破裂脳動脈瘤の治療適応を厳格にしています。過去4年間、当科の基準に基づいて外科治療が適切と判断し患者さんにお勧めした結果、未破裂脳動脈瘤に対する治療は49例行われました(患者さんのご希望により他院を紹介した5名を含めます。この間、当科では破裂脳動脈瘤に対する外科治療は4倍以上(210件)行っています)。
 同期間中、結果的に外科治療なしの経過観察を選択した360人強の未破裂脳動脈瘤の患者さんを外来で経過をみさせていただき(うち18人の患者さんでは追跡が不十分でした。この18人の患者さんに出血が生じた可能性は否定できません)、平均3年間の追跡にて出血が3例の方に生じました。しかしこれらは巨大脳底動脈瘤や内頚動脈紡錘状動脈瘤という全て特殊なケースで出血率も高いが治療のリスクもとても高いという症例でした。すなわち、偶然見つかる脳、動脈瘤の大部分はすぐに治療を行う必要はありません。

しかしまた別の側面として、動脈瘤は一度みつかると消えてなくなることはまずないということ、そしてもし破裂した場合は重大な結果になる可能性が高いこと、も事実です。さらに患者さんにとっては一生続く問題である、ということも無視できません。治療が無事に終了すれば出血のリスクはほぼゼロになるわけですから、治療によって患者さんが得られる安心感はとても大きいものがあります。いずれにしても、正しく情報を得ることによって無用な不安を和らげ、本当の必要性に対してのみ備えることが望ましいと考えます。
 当科では、まずこのような未破裂脳動脈瘤があるといわれお困りの方に対して、最新の知見を詳しく説明することから始めます。そのうえで、患者さんやご家族とじっくり、治療方針を検討いたします。そのまま外来で経過をみるにしても、あるいは治療をするにしても、十分に説明を尽くすことが大切であると考えています。

以下は一般的な説明です。脳動脈瘤は、もし出血を起こすとくも膜下出血を起こします。くも膜下出血は、3分の1から4分の1の方が亡くなり、また命が助かったとしても重い後遺症が残る可能性が高く、たしかに怖い病気ではあります。このくも膜下出血発症を予防するための治療として、血圧を下げたり、喫煙などの生活習慣を改善したりすることがまず大切です。さらに出血するリスクが一定以上あると考えられる患者さんに対しては、「クリッピング術」という開頭手術や、「コイリング術」という血管内手術を、検討することになります。
 こうした動脈瘤は見つかったら必ず手術をしなくてはならないわけではなく、脳動脈瘤を知らないうちに持っている方は、100人中2,3人ほどいらっしゃることもわかっています。こうした動脈瘤のほとんどは一生のうちに出血を起こすことはありません。ただし、

などに応じて、お一人お一人で危険性が違ってきます。

こうした点について説明するのが未破裂脳動脈瘤外来であり、そういった最新の情報を詳しく説明し専門家としての意見をお伝えする外来です。わたしたちは、たとえ未破裂の動脈瘤が見つかっても、正しい情報を聞いてよく理解することによって、必要以上に怖がらずに生活の質が保てるものと考えています。そこで、どうしたらよいか困っている方に詳しくかつわかりやすく説明することを心がけ、患者さんと一緒に一番適切と思われる治療法を考えていきたいと考えています。受診希望の方は、毎週月曜日・火曜日の大宅宗一医師あるいは火曜日の印東雅大医師の未破裂脳動脈瘤外来を受診されてください(予約は不要です)。時間のある場合にはその他の曜日でも診察いたしますので、soichi@saitama-med.ac.jpまでメールをお送りください。