埼玉医科大学医学教育センター設立に際して

 今回設立の医学教育センターは、入学試験から医師の生涯教育まで、すべての教育課程を包括するものである。従来医学教育学室を設置していたが、それを大きく発展させ、機能を拡大したものと考える。
 医学教育といってもその内容は時代とともに変遷している。教員主導から学生主導に変化していることを明確に認識する必要がある。教育は学生のためにという教員の意識改革が必要で、これに関しては毎年行っている医学教育に関するワークショップが重要である。一方学生も、医師になるために積極的に勉学に励む固い意欲を持つことが必要で、大学としてはそれができるような環境を整備することが重要と考える。その一つとして交換留学生制度を施行しているが、双方向性の交換留学で、学生時代から国際性を身につけることを望んでいる。
 具体的には、高校と連係した入試委員会、入学した学生が勉学意欲を持てるようなカリキュラムの工夫、各学年の進級判定・卒業判定に関する合理的な委員会、さらに医師国家試験対策の充実を目標とする。医師国家試験と関連して文部科学省、厚生労働省が掲げる望ましい将来の医師像に関する情報、あるいは各大学の取り組みの情報などを入手・研究することも重要である。
 卒後教育に関して、平成16年度から卒後2年間の臨床研修必修化が実施される。大学医学部は専門性が高度なため、研修医のためのプライマリケア教育には不適であるという声もあるが、本学では高度の専門性と同時に、本学の持つ地域医療実践の特性を生かし、研修医のための教育カリキュラムを整備する必要がある。しかも研修医が安心して研修に励むことができるように、研修終了後の教育システムについても考慮している。
 また医学の進歩に貢献すべく、大学院課程で研究に従事することも大切で、病態の解明・治療の進歩に役立つ研究ができるよう配慮するのもこの医学教育センターの役割である。
 さらに生涯教育として、本学で研修した者が医療内容の充実した医師として、患者さんのため、あるいは地域医療のために活動できるような教育カリキュラムを作成したいと考えている。
 この医学教育センターは明確な目標を持ち、その実行にあたって強力に前進することを期待している。 

 医学教育センターに求められること

 埼玉医科大学医学教育センターは、新しい時代に相応しい機能を持った組織として、多くの期待を背負って平成15年8月1日に発足しました。
 医学教育センターは、入学試験から、卒前教育、大学院教育、そして卒後研修を含めた生涯教育と、本学の教育を総合的に統括し、効率的に教育をおこなうことを目的とし、そのための研究、企画、運営をおこなう組織であります。
 目的を達成するために、教育に関わる広範な役割を8部門に分け、各部門がそれぞれ抱える問題を明確にし、その解決と改善をめざします。その中には、教育に関わる情報を収集・分析し、現場にフィードバックする役割を果たす「教育情報部門」、教える側の教育に対する意識を高め、よりよい教育システムの構築に向けての「Faculty Development 部門」や自らの組織や機能を点検し、改善する「評価部門」も含まれています。
 ところで、教育に対する考え方は急速に、大きく変化しています。これまで、教育とは「教えることである」と考えられていましたが、ひとりの教師が、多くの学生を相手に知識を伝授する、いわゆる「座学」型の教育はすでに、時代の傍流となっています。それにかわって、「自ら学習すること」が重要視され、そのための教育技法が工夫されています。ことに医学教育においては少人数教育が主流とされ、自ら体験し主体的に考え、行動することが求められています。このような変化に適切に対応する体制を整備することも医学教育センターに課せられた役割であります。
 いずれにしても、教育は時間のかかる仕事です。あたかも水が砂に吸い込まれるように、その成果は漠としてとらえどころがないように見えます。しかし、じっくりと時間をかけて熟成するお酒のように、良い教育環境と適切な育成によって、必ずそれに見合った成果があがるものでもあります。
 医学教育センターにはいろいろの役割が求められていますが、本学の教育目標である「すぐれた臨床医」の育成をめざし、医学教育センターを中核として本学の総力が結集されれば、必ずや、社会の附託に答え得る「すぐれた臨床医」が本学から生まれるものと信じております。