神経免疫

神経免疫グループ
診療の内容
多発性硬化症など免疫性神経疾患に対して,免疫能の面から病態の検討を行ない,診断や治療を行なっている.
基礎的研究
1.テーマ
  実験的アレルギー性神経炎 (EAN)の予防および治療
業績
 EANはGuillain-Barre 症候群の動物モデルである.当教室では,EANを用いてGuillain-Barre 症候群に対する新しい治療の開発に努力している.すでに,抗IL-2R抗体がEANを抑制することを見出し,最近では大量免疫グロブリン,人参養栄湯(漢方)がEANを抑制することを報告している.
2.テーマ
 ダニ感染による実験的アレルギー性神経炎の作製
業績
 Blomia tropicalis(Glycyphagidea科)から得られたrecombinant allergenとP2蛋白のアミノ酸配列53-78とに90%以上の相同性があることを発見し,本邦に多く生息するGlycyphagus domesticus(Gd)をラットに接種して,実験的アレルギー性神経炎(EAN)の作製に成功した.今後,Guillain-Barre 症候群との関連についての検討も考慮している.
3.テーマ
 脳梗塞と白血球接着分子
業績
 すでに,慢性期脳梗塞患者においてリンパ球接着分子 (LFA-1α,MAC-1α, LFA-1β/MAC-1β),ならびにそのリガンドであるICAM-1が高値を示すことを報告した.
さらに,急性期脳梗塞患者において顆粒球ならびにリンパ球の接着因子を検討している.

臨床の研究
1.テーマ
  末梢性神経疾患における各種神経抗体
業績
 従来,末梢性神経疾患においてP2蛋白,GC,P0糖蛋白,GM1抗体を測定してきた.最近では末梢神経ミエリン糖蛋白(P0, Sulfatide, GM1, GD1a, GD1b, GQ1b, SGPG),糖脂質(PASII/PMP22蛋白, P0)に体する反応性を検討し,これら神経抗体の病因的役割について検討している.
2.テーマ
 Guillain-Barre 症候群における大量免疫グロブリン療法の検討
業績
 従来,Guillain-Barre 症候群の治療として大量免疫グロブリン療法を行い,良好な成績を得てきたが,最近は血漿浄化療法(二重膜濾過法 または免疫吸着法 )との比較検討試験を実施している.治療前後における電気生理学的検査,各種神経抗体,末梢血リンパ球サブセットを解析し,治療効果を総合的に検討している.
3.テーマ
 Guillain-Barre 症候群における免疫応答
業績
 Guillain-Barre 症候群における免疫応答機構を解明するため,末梢血リンパ球サブセット,P2感作特異T細胞、各種神経抗体、HLA抗原の検討し,さらにP2蛋白の合成ペプチドを用いて,P2感作T細胞ならにび抗P2抗体のエピトープ解析を行っている.
4.テーマ
 多発性硬化症における寛解再発のメカニズム
業績
 多発性硬化症において,経時的に末梢血リンパ球サブセットを測定し,寛解再発のメカニズムを検討している.症状安定期においてもCD4系の活性化CD4,helper細胞,helper-inducer細胞は増加し,一方,CD8系のsuppressor-inducer細胞は低下を示し,免疫応答の異常を認めている.最近では,このsuppressor-inducer細胞を分離し,細胞機能の測定を試みている.
5.テーマ
 感染後脳脊髄炎とウイルス性髄膜脳炎の免疫応答
業績
 臨床的に,初期の感染後脳脊髄炎とウイルス性髄膜脳炎との鑑別はしばしば困難であり,治療の選択に苦慮する.疾患活動期において,感染後脳脊髄炎とウイルス性髄膜脳炎の末梢血リンパ球サブセットを解析し,特にCD8系suppressor-inducer細胞,γ,δ細胞に注目して,これら細胞の測定が鑑別に有用であることを明らかにした.