• Kチャネルの局在と機能の解明
  • プロジェクトリーダー

    中平健祐

  • 概要

     神経細胞の電気的活動は、さまざまなイオンチャネルによって担われています。これまでに数多くのイオンチャネル遺 伝子がクローニングされ、個々の遺伝子産物の機能の解析が進んできました。しかし、神経細胞においては多くの種類のイオンチャネルがそれぞれ細胞内の特定 の領域に分布しているため、全体像を明らかにするためにはイオンチャネルの細胞内局在について理解する必要があります。例えば、電位依存性Kチャネルには 現在20種以上の遺伝子が知られていますが、それぞれが異なる細胞内分布を示します。有髄軸索上のランビエ絞輪、無髄軸索、細胞体?樹状突起、シナプス後 膜、シナプス前膜などの機能的に異なる性質が要求される部位には、それぞれに特異的なチャネル分子が局在することによって特有の役割を果たしていると考え られます。

    電位依存性Kチャネル Kv4.2は、小脳顆粒細胞におけるA-type電流(一過性電流)を担う主要な分子であり、活動電位の発火を抑制することに よって細胞の興奮性の調節に関わっていると考えられています(Shibataら、J. Neurosci. 20、4145-4155 (2000))。このチャネルはin vivoでは細胞体と樹状突起、シナプス後膜近辺に分布しています。我々は、このイオンチャネルがいかにして細胞体から樹状突起、シナプスへと局在するの か、また、その制御メカニズムはどのようなものかということを明らかにするために細胞培養系を用いて研究をおこなっています。

    小脳のmicroexplant culture(微小組織片培養)では、培養経過にともない顆粒細胞が組織片外へと遊走し、5~7日程度で形態的な成熟をとげます。この過程でKv4.2 も発現してくるのですが、抗Kv4.2抗体で染色するとその発現は細胞体にとどまっています。
       
     →培養7日目の顆粒細胞
    樹状突起が伸びている
     →抗Kv4.2抗体による染色
    (スケールは異なる)樹状突起は染まらない

    我々は、Kv4.2が樹状突起に局在するためにはシナプス形成が必要なのではないか、と考え、in vivoで顆粒細胞にmossy fiberをのばしてシナプスをつくっている橋核の組織片を共培養する系を開発し、培養化でシナプス形成をおこなわせました。すると、シナプス形成にとも なって樹状突起・シナプスへのKv4.2の局在が観察されました。

       
     → Kv4.2とSynapsin-1(シナプスマーカー)の二重染色
    Kv4.2のシナプスへの局在が観察された(▽)
    阻害剤投与による実験から、このシナプス形成時における局在にはグルタミン酸による入力信号が重要であること、その信号はNMDA受容体と AMPA受容体を経由していることを明らかにしました。このことは、静的なものと考えられていたチャネルの細胞内局在が、活動依存的に制御されることに よって細胞の興奮性調節に一役買っている可能性を示唆しています。

    近年、チャネルタンパクにはさまざまな結合タンパクが存在し、活性や局在の制御をおこなっているという報告が多数あがっています。Kv4.2にもチャネ ルの局在に影響を及ぼす結合タンパクが報告されています。我々は、Kv4.2チャネルの局在調節のシグナル経路を明らかにすることで、神経細胞の活動調節 メカニズムに迫りたいと思っています。