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埼玉医科大学雑誌 第29巻第2号 (2002年4月) 168頁 (C) 2002 The Medical Society of Saitama Medical School

特別講演

主催 埼玉医科大学病理学教室 ・ 後援 埼玉医科大学卒後教育委員会
平成14年2月1日 於 埼玉医科大学第一講堂

私立医科大学医学部における病理部門のあり方について

黒 田 誠


(藤田保健衛生大学医学部)


 藤田保健衛生大学医学部における病理部は,これまで病理学教室から出向の形で人員を確保してきたが,昨年4月より教授職を設けて病理部として完全に独立する体制を開始した.藤田保健衛生大学医学部の病理部が果たす主たる役割としては, 1)国公立大学ではなしえない実学に基づいた教育,診療,研究を実践する, 2)良い臨床医を育て地域医療に貢献する, 3)地域の診断病理の核となる,の3つがあげられる.臨床医と病理医の連携は診断に不可欠であるが,藤田保健衛生大学では病理部は臨床の一部門として位置付けられている.
 病理部における卒前教育としては 1)コアカリキュラムに基づく臨床医学総論としての検査の基本およびPBL, 2)いわゆるポリクリ(一週間), 3)国家試験対策があるが,学生に病理検体の取り扱いを理解させ,病理診断の重要性を認識させることは大切である.また,病理標本の作製方法を理解させ,病理診断や切り出し,術中迅速診断を体験できるように工夫している.症例があれば病理解剖を見学させ,春休みや夏休みを利用して病理部での病理研修も引き受けている.一方,卒後教育は臨床各科(16科)とのカンファレンス(精神科と眼科を除くすべての科)などを通じて実践的に学んでいくことになるが,まずは卒後5年で受験できる認定病理医試験合格を目標にしてトレーニングさせている.交見会には必ず症例を呈示させ,臓器別セミナーで収集した標本を用いて勉強する機会も与えている.また,病理医に医療機関内の医療監査的役割が要求される時代が来ることはそう遠くないと思われるが,精度管理にも重点を置くようにしている.
 学外では関連病院と提携し,地域の診断病理の核として年間約6000例の症例(主として消化管の生検症例)を病理側としてオープン医療の形で行なっている.研究会は中部支部交見会,東海病理医会,東海骨軟部腫瘍研究会,東海脳腫瘍病理研究会,皮膚病理研究会など数多くのものがあるが,積極的に参加している.地域医療としての貢献も大切な点であるが,病理部が地域医療を実践していくためには,地区の病理医への協力,剖検システムやセミナーを通しての医師会への協力,主として卒業生を対象(開業医,病院)とした病理診断での協力,支部の病理症例のコンサルテーションなどを充実させていくことが大切と思われる.
(文責 清水道生)

(C) 2002 The Medical Society of Saitama Medical School