大学病院− 110 −三村俊英1、荒木靖人1、岡元啓太1、相崎良美1、飯塚悠太郎1、黒澤奈津子1、門野夕峰2、伊澤直広21リウマチ膠原病科、2整形外科・脊椎外科関節リウマチで炎症を起こしている関節では、滑膜線維芽細胞が活性化し増殖している。その原因の一つにエピジェネティクス制御の異常があるのではないかと考えて研究をすすめている。1.関節リウマチ滑膜線維芽細胞におけるヒストンH3K4メチル化の制御異常の解明エピジェネティクス制御機構の一つにヒストン修飾があり、H3K4メチル化は転写が亢進している遺伝子に見られる。関節リウマチ滑膜線維芽細胞において、H3K4をメチル化する酵素であるMLL1とMLL3の発現が上昇している事を見出した。MLL1の発現抑制や阻害剤投与により、サイトカインやケモカインの発現が抑制された。MLL1阻害剤の有効性を関節炎モデルマウスにより検討中である。2.関節リウマチ滑膜線維芽細胞におけるヒストンH3K36メチル化の制御異常の解明H3K36メチル化も転写が亢進している遺伝子に見られるヒストン修飾である。関節リウマチ滑膜線維芽細胞において、H3K36をメチル化する酵素であるSETD2、NSD2、NSD3、SMYD4の発現が上昇しており、サイトカインやケモカインの発現を制御している事を見出した。以上の事から、H3K36メチル化の制御異常が関節リウマチ滑膜線維芽細胞の活性化に関与している事が示唆される。3.関節リウマチ滑膜線維芽細胞における転写因子SOX11の役割の解明関節リウマチ滑膜線維芽細胞において、クロマチン構造が緩んでいる領域をFAIRE-seq法によりゲノムワイドに調べたところ、SOX11結合領域が見出された。SOX11の発現を抑制したところ、サイトカインやケモカインの発現が抑制された。SOX11が関節リウマチ滑膜線維芽細胞の活性化に関与している事が示唆される。得意な技術(ノウハウ)クロマチン免疫沈降法によるエピジェネティクス制御の解析知的財産・論文・学会発表論文1)Araki Y, Mimura T. Epigenetic dysregulation in the pathogenesis of systemic lupus erythematosus. Int J Mol Sci.25(2), 1019, 2024.2)Araki Yet al. Aberrant gene expression of histone lysine methyltransferases and demethylases in rheumatoid arthritis synovial fibroblasts. Clin Exp Rheumatol.36(2):314-6, 2018.3)Araki Yet al. Histone methylation and STAT3 differentially regulate IL-6-induced MMP gene activation in rheumatoid arthritis synovial fibroblasts.Arthritis Rheumatol. 68(5):1111-1123, 2016.図書1) Araki Y, MimuraT. Chapter 10 Epigenetic basis of autoimmune disorders in humans. Epigenetic in Human Disease. Edited by Trygve Tollefsbol. Elsevier. pp369-412, 2023.構成員研究概要関節リウマチにおけるエピジェネティクス異常の解明リウマチ膠原病科教授荒木靖人キーワード関節リウマチ、滑膜線維芽細胞、ヒストン修飾、転写因子
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