大学病院− 158 −田丸俊輔1、鷹野夏子11産婦人科ヒト胎盤絨毛細胞中の多くのマイクロRNA発現が、低酸素環境において変化することが知られていますが、そのような環境で、絨毛細胞の浸潤能がマイクロRNAによりどういった調節を受けるのかは未解明でありました。当研究室では、低酸素環境で、絨毛細胞の浸潤能を調節するマイクロRNAとその標的遺伝子を明らかにし、その機能を解析してまいりました。具体的には、ヒト絨毛外絨毛細胞株であるHTR-8/SVneoを低酸素濃度条件にすると、細胞浸潤能は低下し、マイクロRNA-135bの発現が増加することを明らかにしました。また、その標的遺伝子のうちケモカインの一種であるCXCL12の発現を、マイクロRNA-135bが直接抑制するという機構を介して、細胞浸潤能が調節されるということも発見いたしました。このメカニズムは、胎盤形成の過程に関わっている可能性があり、本研究の成果は、胎盤形成不全が病態の根底にある妊娠高血圧症候群や胎児発育不全といった疾患の病態解明にむけた一歩と考えております。また、前述のプロジェクトでは、低酸素条件で特にマイクロRNA-210の発現が最も増加し、in silicoの解析で鉄代謝に関連する重要な遺伝子の発現が大きく低下することも見出しました。低酸素条件下で変動する鉄は、細胞内でのエネルギー産生に必須である他、様々な酵素の活性中心としても働き、細胞機能維持にとても重要な微量金属であるとともに、妊娠高血圧腎症や胎児発育不全の胎盤では、鉄代謝が大きく変化することがこれまでに明らかにされています。したがって、このような疾患の病態形成に鉄代謝が関与する可能性を考え、その生理学的、病態学的役割を解明すべく研究を進めております。得意な技術(ノウハウ)qPCR, RT-qPCR解析,免疫染色,プロテオーム解析知的財産・論文・学会発表Tamaru S, Kajihara T, Mizuno Y, Mizuno Y, Tochigi H, Ishihara O.Endometrial microRNAs and their aberrant expression patterns.Med Mol Morphol. 2020;53:131-140.Tamaru S, Mizuno Y, Tochigi H, Kajihara T, Okazaki Y, Okagaki R, Kamei Y, Ishihara O, Itakura A.MicroRNA-135b suppresses extravillous trophoblast-derived HTR-8/SVneo cell invasion by directly down regulating CXCL12 underlow oxygenconditions.Biochem Biophys Res Commun. 2015;461:421-6.絨毛細胞,マイクロRNA,胎盤形成構成員研究概要絨毛細胞の機能と周産期疾患との関連産婦人科准教授田丸俊輔キーワード
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