− 211 −赤堀太一1、高井泰1、矢部慎一郎21埼玉医科大学総合医療センター産婦人科2埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター得意な技術(ノウハウ)卵子幹細胞の分離培養、3次元培養法、フローサイトメトリー知的財産・論文・学会発表・Akahori T, et al. Female fertility preservation through stem cell-based ovarian tissue reconstitution in vitro and ovarian regeneration in vivo. Clin Med Insights Reprod Health. 2019;13:1179558119848007. ・赤堀太一, 高井泰: 卵子幹細胞(oogonial stem cells: OSCs)を用いた妊孕性温存法の開発. 妊孕性温存のすべて, 柴原浩章編. 東京, 中外医学社, 482-489, 2021現代の日本は、高齢化による人口減少という問題に直面している。出生数が減少を続けている一方で、不妊症患者数は増加しており、妊娠を希望する女性の数は増加している。しかし、生殖医療の治療成績は改善していない現実がある。今後予想される不妊症患者の高齢化、重症化に対応するには新たな生殖医療技術の革新が必要である。さらに、近年では悪性腫瘍に対する治療法の開発が進みがん治療の成績は向上している。これにより、がんサバイバーのQOLの回復、維持が課題となっている。特に、若年性悪性腫瘍患者に対するがん治療後の妊孕性温存は喫緊の課題である。我々の研究グループは、これまで存在しないとされてきた、雌性生殖幹細胞である卵子幹細胞の分離培養法を報告した。さらに、顆粒膜細胞を多く含む卵巣組織由来の体細胞の培養に成功し、自己の卵巣組織から分離培養したこれらの細胞を3次元培養することにより、完全に自己の組織由来の人工卵巣組織を体外で再生することができた。本研究では、この再生卵巣組織を用いて卵子幹細胞に適切な微小環境を構築し、これを分化誘導することにより、受精可能な成熟卵子を体外で作成する技術開発を目的とする。この医療技術により、遺伝子導入の不要な、自己の遺伝情報を持つ自身の卵子を任意に作成することができ、より効率の良い安全な生殖医療技術を患者に提供できる様になる。さらに、医原性不妊のリスクに直面する小児・AYA世代の若年がん患者への大きな福音となる。ひいては、人口減少が切実な問題となっている本邦の未来に光明をもたらすことが期待される。卵子幹細胞・再生医療・生殖補助医療構成員研究概要卵子幹細胞を用いた新規不妊治療法の開発産婦人科非常勤講師赤堀太一キーワード
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