埼玉医科大学研究シーズ集
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医学部− 22 −鈴木正11教養教育多数の粒子が相互作用しながら量子力学に従ってどのように時間発展するか、という問題をさまざまな角度から研究しています。以下に主な研究課題を紹介します。1)絶対零度で量子揺らぎによって引き起こされる相転移を量子相転移と言います。量子相転移近傍ではさまざまな物理量が発散などの特異な性質を示すことが知られています。私は量子相転移近傍でパラメターが時間変化する時の、系の時間発展に関心を持っています。これまでに、パラメターが時間に線形に変化する場合に、系の励起密度が従うスケーリング則を明らかにしました。2)量子アニーリングは、大学の時間割作成や従業員のシフト管理などの最適化問題を解く量子計算法の一つです。近年、量子アニーリングを含め、量子計算の開発が加速しており、実用化が近づいています。私は量子アニーリングの基礎研究を行っています。これまでに、有限温度環境のもとでの量子アニーリング、D-Wave社の量子アニーリング機の理論解析などの研究で成果を上げています。3)どんな物理系も環境から完全に孤立させることは不可能です。私は有限温度の環境と相互作用している量子多体系(開放量子多体系)の時間発展の研究も行っています。私はこの研究のために新しい数値シミュレーションの手法を独自に開発しました。この最先端の手法を用いて、有限温度の環境と結合した1次元量子スピン系において、磁場が線形に時間変化する場合のスピン系の振る舞いを明らかにしました。4)熱力学は巨視的な物体が従う法則として完全に確立しています。しかし、粒子の微視的な運動法則(量子力学または古典力学)から熱力学の法則を証明することは現代物理学に残された未解決課題です。私は量子力学に基づいて熱力学第二法則を導出する研究を行っています。得意な技術(ノウハウ)量子力学(非相対論的)、統計力学。量子スピン系の数値計算、特に行列積状態に基づく時間発展の数値計算。ランダム行列。知的財産・論文・学会発表学会発表SuzukiS. Classical simulation and theory of quantum annealing in a thermal environment. ICTP Conference on Adiabatic Quantum Computation / Quantum Annealing. 2022年6月23日.論文KingA, SuzukiS, et al. Coherent quantum annealing in a programmable 2,000 qubit Ising chain. Nature Physics. 2022, 18, 1324-1328, 10.1038/s41567-022-01741-6.量子多体系開放系量子相転移量子アニーリング構成員研究概要量子多体系の実時間ダイナミクス教養教育准教授鈴木正キーワード

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