市来嘉伸1、田口亮1、梅咲徹也1、柳原章寿1、二反田博之1、坂口浩三1、石田博徳11国際医療センター呼吸器外科肺癌における所属リンパ節は、腫瘍特異的リンパ球が活性化、増殖する重要な場所である。免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の登場により、所属リンパ節の重要性はさらに高まっている。一方で、肺癌の根治手術を行う際リンパ行性転移の可能性を考慮し、所属リンパ節は全て摘出されてきた。ICIが優れた臨床効果を発揮している現在、系統的リンパ節郭清について再考する必要があるのではないかと考え、系統的リンパ節郭清が癌免疫応答に及ぼす影響について免疫学的に解析する。今回、肺癌症例切除症例の腫瘍内浸潤リンパ球、所属リンパ節リンパ球、末梢血リンパ球を採取し、それぞれのリンパ球の中で腫瘍特異的リンパ球であるCD103+ CD39+ CD8 T細胞がどの程度存在するか、flow cytometryで解析する(CD103:E-カドヘリンのリガンド、CD39:エクトネクレオチダーゼ )。腫瘍特異的リンパ球の割合を、末梢血、所属リンパ節、腫瘍内リンパ球で比較し、腫瘍や所属リンパ節により選択的に浸潤しているか。さらに、末梢血、所属リンパ節、腫瘍内リンパ球それぞれからCD103+ CD39+ CD8 T細胞をsortingし、T細胞受容体(TCR) のレパトア解析を行い、それぞれのリンパ球にどのくらいの種類の腫瘍特異的リンパ球が存在するか解析する。また、新鮮ヒト肺癌組織を重度免疫不全マウス(NSGマウス)に移植したinvivoモデルを用いて、末梢血、所属リンパ節、腫瘍内リンパ球それぞれの存在下で、腫瘍増大抑制効果を比較するともに、新鮮ヒト肺癌組織移植NSGマウスにICI投与を行い、それぞれのリンパ球がICIの効果に与える影響についても解析し、癌免疫時代到来後のリンパ節郭清の意義を考えたい。得意な技術(ノウハウ)肺癌細胞初期培養による肺癌細胞株の樹立、腫瘍特異的細胞障害性T細胞(CTL) cloneの樹立。CTLのkilling assay、CTL cloneを用いた癌抗原の同定、腫瘍内浸潤B細胞が認識する癌抗原の同定知的財産・論文・学会発表学会発表市来嘉伸肺扁平上皮癌切除症例におけるCD103陽性リンパ球浸潤の検討第62回日本呼吸器学会学術講演会2022.4.22-4.24市来嘉伸免疫チェックポイント阻害剤投与症例における臨床病理学的検討第39回日本呼吸器外科学会学術集会2022.5.20-21論文IchikiY,et al.An analysisofthe immunological tumor microenvironment ofprimary tumorsandregional lymphnodes insquamous cell lung cancer.Transl Lung Cancer Res.10(8):3520-3537,2021Ichiki Y,et al.Immuneprofile analysis ofperipheral blood andtumors of lung cancer patientstreatedwith immunecheckpoint inhibitors.Transl Lung Cancer Res.11(11):2192-207,2022.Ichiki Y,et al.Prognostic significance of lymphnodedissectionfor lung cancer surgery: a narrativereview.JThorac Dis.15(4):2253-2260,2023.構成員研究概要− 257 −肺癌手術における系統的リンパ節郭清が癌免疫応答に及ぼす影響についての解析国際医療センター呼吸器外科市来嘉伸キーワード肺癌、癌免疫、リンパ節郭清、CTL、tcr
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