埼玉医科大学研究シーズ集
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共通部門− 299 −徳元康人11アドミッションセンター環境が生存に適さなくなった場合に、休眠状態に入ってエネルギーの消費を抑え困難な時をやり過ごす戦略は生物界に普遍的に見られる。われわれ哺乳類の体内には休眠状態で長期間保持されている組織特異的な体性幹細胞や抗原特異的な免疫記憶細胞などがある。こうした休眠細胞が元々は活発に細胞分裂を繰り返していた細胞から派生してきたということは既によく知られているが、どの様にしてこのような休眠細胞が作られるのかについてはほとんど分かっていない。私はストレスを受けた細胞が細胞死を回避するために休眠することを選択するメカニズムが存在するのではないかと仮想し、その現象をストレス惹起性休眠獲得(Stress-TriggeredAcquisitionof Quiescence; STAQ)と名付けた。このSTAQ細胞仮説に基づき、活発に増殖している初代培養細胞に適切なストレスを与えることによって細胞分裂を停止した休眠細胞に分化誘導出来るかどうか試みた。低酸素ストレス下で培養することによって活発に増殖しているラットのオリゴデンドロサイト前駆細胞を、休眠状態の中枢神経系体性幹細胞であるアダルト型オリゴデンドロサイト前駆細胞様の細胞に分化させることに成功した。またヒトの末梢血から採取したナイーブT細胞を活性化した後で活性化因子飢餓と低酸素ストレスに晒すことにより、増殖を停止したメモリー様のT細胞へ分化させることにも成功した。抗がん剤に抵抗性を示すがん幹細胞の生成メカニズムも、抗がん剤をストレッサーとみなせば、STAQ細胞化で説明できる可能性がある。得意な技術(ノウハウ)哺乳類細胞の初代培養低酸素培養知的財産・論文・学会発表論文(1)QuiescenceofadultoligodendrocyteprecursorcellsrequiresthyroidhormoneandhypoxiatoactivateRunx1.ScientificReports7,1019(2017)(2)Inductionofmemory-likeCD8+TcellsandCD4+TcellsfromhumannaiveTcellsinculture.Clinical&ExperimentalImmunology207, 95-103(2022)特許出願等(1)特願2014-008780「アダルト型オリゴデンドロサイト前駆細胞の製造方法」2014年(2)特願2021-079296「メモリーT細胞の製造方法」2021年STAQ細胞、体性幹細胞、免疫記憶細胞、がん幹細胞構成員研究概要STAQ細胞の作製アドミッションセンター講師徳元康人キーワード

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