埼玉医科大学研究シーズ集
41/304

医学部− 39 −林禅之11教養教育意識の哲学・倫理学に関係する、以下のようなトピック・問いについて、文献を読みながら考えています。1)意識と痛み:無意識的な痛みがありえるか?痛みは通常、意識的だと考えられています。しかし、現代のいくつかの意識理論によると、無意識的な痛みの存在が予想されます。無意識的痛みについて、それを肯定する意識理論(グローバル神経ワークスペース理論や高階思考説)と否定する意識理論(脳幹説や統合情報理論)のそれぞれの論証を批判的に検討しながら、それがどのような痛みであるのかを明確化しようと試みています。また、無意識的痛みがありうるのだとすると、どのような倫理的な含意を持つのかについても考えています。2)意識と自己同一性:「私」は意識に還元できるか?「時間を通じて同一である「私」とは、意識に他ならない」という仮説を検討しています。関連して、(a)無意識状態では自己は存在できないのか、(b)分離脳のように脳に介入することで自己は分裂するのか、(c)自己はコンピュータ上でも生きながらえることができるのか、といった問いに答えようとしています。また、意識の実存的な重要性についても考えています。3)神経オルガノイドの倫理:どのような神経オルガノイドが意識を持ちうるのか?ヒトiPS細胞などを用いて作出された「神経オルガノイド」について、どのようなタイプの神経オルガノイドならば意識を持ちうるのか、意識を持ちうるとしたらどのような問題が生じるのかなどについて考察しています。得意な技術(ノウハウ)現代英米圏の分析的な心の哲学をベースにしながら、応用倫理学のトピックについて考察すること。知的財産・論文・学会発表学会発表HayashiY,SatoR. Two Models of Consciousness and Practical Ethics of Neural Organoid Research. Tokyo Forum for Analytic Philosophy. 2023年11月10日.論文SawaiT, HayashiY, NiikawaT, ShepherdJ, et al. Mapping the Ethical Issues of Brain Organoid Research and Application. AJOB Neuroscience. 2022,13(2), 81-94, 10.1080/21507740.2021.1896603.意識痛み自己同一性分離脳神経オルガノイド構成員研究概要意識の哲学・倫理学教養教育助教林禅之キーワード

元のページ  ../index.html#41

このブックを見る