医学部⚫⚫⚫⚫− 52 −周防諭11医学部薬理学ドーパミンやノルアドレナリンといったアミン神経伝達物質は、動物の行動・代謝の制御に重要な働きを持ちます。私は、アミンシグナル伝達の制御機構を分子・細胞レベルで解明するために、モデル生物、線虫C. elegansを用いて研究してきました。線虫個体内でアミンシグナルを検出する系の構築を行い、その系を用いて、ドーパミンとオクトパミンが餌への応答に関与することを明らかにしました。(Suo et al. 2009 EMBO J)。さらに、このシグナル伝達は、アセチルコリンによる筋収縮の制御していること(Suo and Ishiura 2013 PloS One)と、体の大きさを規定していること(Nagashima et al. 2016 Dev Biol)を明らかにしました。この一連の研究により、餌への反応を規定するアミンシグナルの相互作用とその生理的意義を明らかにしました。現在は、画像解析によって線虫の行動を分析することで、行動の性差とその分子機構の解析を行っています。C. elegansには、自家受精できる雌雄同体と、雌雄同体と交配するオスがいます。オスの方が雌雄同体に比べ、運動量が大きいことを見出しました。さらに、ドーパミンは、オスでは自発運動を増加させ、逆に雌雄同体では自発運動を減少させることで、行動の性差を生み出していることを明らかにしています(Suo et al. 2019 J Neurosci)。この性差は適応的に重要で、交配相手を探す必要があるオスでは運動量が多く、餌から離れないでじっとしている方がいい雌雄同体の運動量が低くしていると考えられます。さらに、雌雄同体の運動量が内在する精子に依存することも見出しています(Suo 2023 bioRxiv)。得意な技術(ノウハウ)線虫の行動解析、遺伝学的解析蛍光顕微鏡知的財産・論文・学会発表論文⚫Suo, S. (2023) Sperm regulates locomotor activity of C. elegans hermaphrodites. bioRxiv.Suo, S., Harada, K., Matsuda, S., Kyo, K., Wang, M., Maruyama, K., Awaji, T., Tsuboi, T. (2019) Sexually Dimorphic Regulation of Behavioral States by Dopamine in Caenorhabditis elegans. J. Neurosci. 39, 4668-4683.Nagashima, T., Oami, E., Kutsuna, N., Ishiura, S., and Suo, S. (2016) Dopamine regulates body size in Caenorhabditis elegans. Dev. Biol. 412, 128-138.Suo, S., and Ishiura, S. (2013) Dopamine modulates acetylcholine release via octopamine and CREB signaling in Caenorhabditis elegans. PloS One 8, e72578.Suo, S., Culotti, J.G., and Van Tol, H.H.M. (2009) Dopamine counteracts octopamine signalling in a neural circuit mediating food response in C. elegans. EMBO J. 28, 2437-2448.線虫、行動、性差、神経伝達物質、受容体構成員研究概要線虫の神経伝達薬理学准教授周防諭キーワード
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