埼玉医科大学研究シーズ集
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医学部− 80 −奥田晶彦1、鈴木歩1、浦西洸介11ゲノム基礎医学染色体の数を半分にするための減数分裂は生殖細胞でのみ見られる特殊な細胞分裂の様式であり、成熟した精子・卵子形成のための最も重要なステップであると言えます。なお、生殖細胞といえども、通常の体細胞と同様に、体細胞分裂により細胞数を増やすことができます。しかし、生殖細胞が、どのような分子基盤でもって、細胞分裂の様式を、体細胞分裂から減数分裂に切り替えるのかについてはほとんどわかっていません。そのような状況の中、私たちは、偶然ではありましたが、ES細胞が、生殖細胞ではないにも関わらず減数分裂を開始する能力を有しており、そのES細胞が持つ潜在能力は、非典型的ポリコーム複合体の一つであるPRC1.6により強力に抑制されていることを見出しました。さらに私たちは、生殖細胞においても体細胞分裂期にある生殖細胞では、PRC1.6複合体が減数分裂の開始を抑制しており、生殖細胞が減数分裂を開始する際には、下図に示すように、複合体の構成因子の一つであるMAXタンパク質等の量を減らすことでPRC1.6複合体の減数分裂に対する抑制を減弱させていることを明らかにしました。現在は、生殖細胞が、どのようにして、減数分裂の開始時にMAXタンパク質の量を低下させているのかを明らかにすることを主な目的として研究を行っています。これらの研究が一部の不妊症の原因解明へと繋がっていくことを期待して日々研究活動に邁進しています。得意な技術(ノウハウ)ES細胞及びその他の培養細胞における遺伝子改変タンパク質間相互作用解析等の生化学的解析次世代シーケンサ解析から得られる大量のデータ処理知的財産・論文・学会発表論文Uranishi K, Hirasaki M, Kitamura Y, Mizuno Y, Nishimoto M, Suzuki A, Okuda A.Two DNA binding domains of MGA act in combination to suppress ectopic activation of meiosis-related genes in mouse embryonic stem cells. Stem Cells(2021)39,1435-1446doi: 10.1002/stem.3433Suzuki A, Hirasaki M, Hishida T, Okamura D, Wu J, Ueda A, Nishimoto M, Nakachi Y, Mizuno Y, Okazaki Y, Matsui Y, Izpisua Belmonte JC, Okuda A.Loss of MAX results in meiotic entry in embryonic and germline stem cells. Nat Commun (2016) 7, 11056 doi: 10.1038/ncomms11056Hishida T, Nozaki Y, Nakachi Y, Mizuno Y, Okazaki Y, Ema M, Takahashi S, Nishimoto M, Okuda A.Indefinite self-renewal of ESCs through Myc/Max transcriptional complex-independent mechanisms. Cell Stem Cell(2011)9, 37-49 doi: 10.1016/j.stem.2011.04.020構成員研究概要生殖細胞減数分裂体細胞分裂PRC1.6 MAX減数分裂機構の解明ゲノム基礎医学教授奥田晶彦キーワード

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