臨床的意義不明なバリアントを網羅的に解析する ことで遺伝子診断の迅速化を実現
2023.05.02
リサーチハイライト
埼玉医科大学 ゲノム医療科・小児科の大竹明特任教授、順天堂大学 難病の診断と治療研究センターの杉浦歩講師、岡﨑康司教授、近畿大学 理工学部生命科学科の木下善仁講師(順天堂大学 難病の診断と治療研究センター)、および千葉県こども病院の村山圭部長(順天堂大学 難病の診断と治療研究センター)らの共同研究により、臨床的意義の不明なバリアント*1VUS*2)の網羅的解析により、意義付けすることで、遺伝子診断の迅速化を実現しました。
また、
RNAシーケンス*3やプロテオーム解析*4を組合わせて行うことによって、従来の遺伝子診断法のパネル解析*5や全エクソーム解析*6では診断がつかなかった症例を確定診断に導くことができました。本成果により、遺伝子診断の迅速化が図られると共に評価済みの遺伝情報をデータベース登録することで公共データベースの拡充に寄与しました。
本論文はJournal of Medical Genetics誌(Impact Factor[JCR]:5.945)のオンライン版に2023年4月13日付で公開されました。
*1バリアント:バリアント(Variant)とは、その遺伝子のDNA配列における特定の変化や多様性を指します。これにより、遺伝子の構造、機能、または発現に違いが生じ、個体の特性や特徴、あるいは特定の疾患等に影響を及ぼす可能性があります。バリアントは、いわゆる遺伝的な突然変異も内包する言葉です。バリアントの研究は、疾患の遺伝的基盤を理解するために必要不可欠であり、遺伝子検査や個別化医療に利用されます。バリアントは、良性(benign)、病的(pathogenic)、あるいは臨床的意義不明なバリアント(VUS)などに分類されています。
*2VUS:臨床的意義不明なバリアント(Variant of Uncertain Significance:VUS)とは、ある人のDNAに特定の遺伝子のバリアントが見つかっているが、それが健康や疾患のリスクに与える影響がまだ理解されていない状態を指します。良性(benign)あるいは病的(pathogenic)として分類されず、さらなる研究や検査が必要です。VUSとなっていることで診断がつかず、これが確定診断の大きな足枷となっています。
*3RNAシーケンス:オミクス解析のひとつであるトランスクリプトミクスはRNAの発現を対象とした解析です。トランスクリプトミクスの解析方法として、RNAシーケンスが最も主流な方法となっています。主にメッセンジャーRNA(mRNA)を対象として、全遺伝子の発現を網羅的に解析するものです。
*4プロテオーム解析:オミクス解析のひとつであるプロテオーム解析(プロテオミクス)は、タンパク質の発現を対象とした解析です。プロテオミクスの解析方法として、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC-MS)が最も主流な方法となっています。生体内のタンパク質を対象として、全タンパク質の発現を網羅的に解析するものです。
*5パネル解析:パネル解析(Panel sequencing)は、特定の疾患の原因遺伝子を特異的に抽出して、配列解読する解析手法です。特定の遺伝子のみを検索対象とすることで、迅速な診断や低コスト化を実現できますが、対象となる遺伝子以外に異常がある場合は、診断がつきません。例として、がん遺伝子パネル検査はがんゲノム医療の中で実用化され、迅速な遺伝子診断と治療選択につながっています。
詳細はPDFにてご覧ください
また、
RNAシーケンス*3やプロテオーム解析*4を組合わせて行うことによって、従来の遺伝子診断法のパネル解析*5や全エクソーム解析*6では診断がつかなかった症例を確定診断に導くことができました。本成果により、遺伝子診断の迅速化が図られると共に評価済みの遺伝情報をデータベース登録することで公共データベースの拡充に寄与しました。
本論文はJournal of Medical Genetics誌(Impact Factor[JCR]:5.945)のオンライン版に2023年4月13日付で公開されました。
*1バリアント:バリアント(Variant)とは、その遺伝子のDNA配列における特定の変化や多様性を指します。これにより、遺伝子の構造、機能、または発現に違いが生じ、個体の特性や特徴、あるいは特定の疾患等に影響を及ぼす可能性があります。バリアントは、いわゆる遺伝的な突然変異も内包する言葉です。バリアントの研究は、疾患の遺伝的基盤を理解するために必要不可欠であり、遺伝子検査や個別化医療に利用されます。バリアントは、良性(benign)、病的(pathogenic)、あるいは臨床的意義不明なバリアント(VUS)などに分類されています。
*2VUS:臨床的意義不明なバリアント(Variant of Uncertain Significance:VUS)とは、ある人のDNAに特定の遺伝子のバリアントが見つかっているが、それが健康や疾患のリスクに与える影響がまだ理解されていない状態を指します。良性(benign)あるいは病的(pathogenic)として分類されず、さらなる研究や検査が必要です。VUSとなっていることで診断がつかず、これが確定診断の大きな足枷となっています。
*3RNAシーケンス:オミクス解析のひとつであるトランスクリプトミクスはRNAの発現を対象とした解析です。トランスクリプトミクスの解析方法として、RNAシーケンスが最も主流な方法となっています。主にメッセンジャーRNA(mRNA)を対象として、全遺伝子の発現を網羅的に解析するものです。
*4プロテオーム解析:オミクス解析のひとつであるプロテオーム解析(プロテオミクス)は、タンパク質の発現を対象とした解析です。プロテオミクスの解析方法として、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC-MS)が最も主流な方法となっています。生体内のタンパク質を対象として、全タンパク質の発現を網羅的に解析するものです。
*5パネル解析:パネル解析(Panel sequencing)は、特定の疾患の原因遺伝子を特異的に抽出して、配列解読する解析手法です。特定の遺伝子のみを検索対象とすることで、迅速な診断や低コスト化を実現できますが、対象となる遺伝子以外に異常がある場合は、診断がつきません。例として、がん遺伝子パネル検査はがんゲノム医療の中で実用化され、迅速な遺伝子診断と治療選択につながっています。
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