希少がんの子宮がん肉腫で抗HER2療法の有効性を確認~希少がんの治療開発への道を開く~

希少がんの子宮がん肉腫で抗HER2療法の有効性を確認~希少がんの治療開発への道を開く~

2023.04.19
リサーチハイライト
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)中央病院(病院長:島田 和明)は、がん細胞の増殖に関連するタンパク質HER2を持っている子宮がん肉腫の患者さんに対して抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(注1)の有効性を評価する第II相医師主導治験のSTATICE(スターチス)試験を国内7施設で実施しました。その結果、高発現の患者さんの54.5%、低発現の患者さんの70%で、腫瘍の30%以上の縮小(奏効)が認められました。本試験結果は、子宮がん肉腫に対し抗HER2療法が有効である可能性を世界で初めて示したもので、米国学術雑誌「Journal of Clinical Oncology」に米国時間2023年3月28日付(日本時間3月29日)で発表されました。
 
また、同時に国立がん研究センター研究所(所長:間野博行)は、埼玉医科大学国際医療センター(病院長:佐伯俊昭、埼玉県日高市)と協力し、子宮がん肉腫の患者さんの腫瘍組織を重度免疫不全マウスに移植したPDX(Patient-Derived Xenograft)モデル(注2)を作製し、STATICE試験でトラスツズマブデルクステカンを投与した2名の患者さんについて、PDXモデルでの効果と患者さんでの実際の効果を比較しました。その結果、PDXモデルと患者さんで同一(有効)の結果が得られ、PDXモデルで化学療法の効果を予測できることが示されました。本研究の成果は、米国学術雑誌「Clinical Cancer Research」に同日付で発表されました。
 
本研究成果により、HER2タンパクの発現を有する子宮がん肉腫患者さんにおいて、トラスツズマブデルクステカンが新たな治療選択肢となり得ることが示され、さらに大規模な臨床試験の実施が難しい希少がんでのさらなる有効な治療法の開発の加速化が期待されます。
 
(注1)トラスツズマブ デルクステカン
第一三共株式会社によって開発された抗体薬物複合体であり、抗HER2抗体にトポイソメラーゼ阻害薬と呼ばれる薬剤が結合した抗がん剤。乳がんと胃がんで保険が適用されています。
(注2)PDX(Patient-Derived Xenograft)モデル
免疫による拒否反応を起こさせないようにするため、人工的に重度免疫不全状態としたマウスに患者さんから採取した組織を移植したマウスモデルです。
 
詳細はPDFにてご覧ください