過分化メラノーマ細胞の免疫学的特徴を解明

過分化メラノーマ細胞の免疫学的特徴を解明

2024.12.19
リサーチハイライト

より手堅いメラノーマの治療法開発に向けて

埼玉医科大学医学部安藤優希枝さん(医学部6年、研究医養成プログラム履修生(微生物学))、堀内大講師(微生物学)、村上孝教授(同)らの研究グループは、免疫学的特徴が解析可能な新しいメラノーマのフェノタイプ スイッチモデルを樹立しました。
安藤優希枝さん、堀内大講師、村上孝教授らの研究グループは、殺細胞剤スタウロスポリンの低用量曝露によってメラノーマ細胞が過分化状態に変化(フェノタイプ スイッチ)し、細胞死を回避すること(細胞死抵抗性)を見出しました。さらに過分化メラノーマ細胞はリンパ球の攻撃にも抵抗性を示すものの、免疫チェックポイント分子のはたらきを阻害することで、免疫学的排除が可能になることを明らかにしました。本研究で樹立した過分化メラノーマモデルは、難治性メラノーマの治療抵抗性機序の解明や新規治療法開発に役立つことが期待されます。
本研究成果は、国際学術誌 「OncoImmunology」に掲載され、2024年12月8日にオンライン公開されました。
図:過分化メラノーマ細胞の誘導と、過分化メラノーマ細胞の免疫感受性
図:過分化メラノーマ細胞の誘導と、過分化メラノーマ細胞の免疫感受性
i)マウスメラノーマ細胞株B16F10を低用量スタウロスポリンに曝露すると、ほとんどの細胞は細胞死に至る。一方、生存したわずかな細胞は細胞形態が大きく変化し、メラノサイト分化抗原を高発現した過分化状態となる。過分化状態の細胞は通常の細胞と比較して細胞死に対する抵抗性が高い。ii)この過分化メラノーマ細胞は、抗原特異的リンパ球に認識されるものの、細胞傷害を受けない。iii)過分化メラノーマ細胞は免疫チェックポイント分子PD-L1を高発現している。抗PD-1抗体によってPD-L1/PD-1の結合を阻害すると、過分化メラノーマ細胞は抗原特異的リンパ球による排除が可能になる。