解 剖 体 慰 霊 祭 |
(令和6年11月30日発行 埼玉医科大学学内報 第237号 より転載) ![]()
◇◇◇ 令和6年度解剖体慰霊祭 ◇◇◇ 令和6年10月19日(土)、第52回埼玉医科大学解剖体慰霊祭が創立30周年記念講堂においてしめやかに執り行われました。 今年度は、ご遺族、ご来賓、教職員、医学部、保健医療学部の学生等、約400名が参列し、令和5年7月1日から令和6年8月31日までの間にご献体いただいた270柱(篤志献体78柱、病理解剖46柱、法医解剖等146柱)の御霊に祈りを奉げました。 ご芳名奉読後、大学病院の篠塚望病院長が芳名録を祭壇に捧呈し、祭主である竹内勤学長が追慕のことばを、医学部2年生中川優太郎さんと保健医療学部臨床検査学科2年酒本遥大さんが学生代表として感謝のことばを述べました。その後参列者全員が祭壇に献花し、法医学髙田綾教授の閉会の挨拶の後、閉式となりました。
私達、全ての教職員・学生は、献体された多くの方々の崇高な思いと命の尊厳を各自の礎として、改めて心に刻むとともに、ご献体頂いた皆様のご遺志と、ご遺族の方々のご理解に深く感謝し、これからも精進を続け、故人の御遺徳にお応えすることを誓いました。
本日は、ご遺族ならびにご関係の皆様にご臨席を賜りまして、解剖体慰霊祭を開催できますこと、心より感謝申し上げます。解剖体慰霊祭は、2020年に新型コロナウイルス感染症が発生して以来、感染対策に万全を期して、出席者を制限し時間を短縮して執り行って参りました。新型コロナウイルス感染症が2類感染症から5類感染症に移行され1年半が経過した本年は、コロナ前とほぼ同様の解剖体慰霊祭を執り行うべく準備を進めて参りました。関係各位のご尽力に感謝を申し上げますと共に、多くの皆様をお迎えして本日慰霊祭を執り行えることを大変嬉しく存じます。 さて、この一年間に、多大なるご理解とご貢献を賜りました270名の皆様に、ここに謹んで追慕と哀悼の意を捧げます。医学のさらなる進歩のため、そして医学と医療に従事する人材を育成するため、ご貢献いただいた皆様の崇高なるご遺志に対し、心からの敬意と感謝を捧げるものであります。
また、ご遺族の皆様におかれましては、強い絆で結ばれました方を亡くされた深い悲しみの中にもかかわらず、ご遺体の解剖をお許しいただきましたこと、重ねまして感謝申し上げます。
医学・医療を志すものにとって、解剖を通じて人体の構造と機能を学ぶことは、何にも変え難い貴重な学習機会です。人工知能や仮想現実など、科学の進歩は著しいものがありますが、生命の大切さを理解する上で、実際の体験には遠く及びません。特に、人体の解剖は、医療の専門家となるために欠かすことのできないものです。それに臨むにあたっては、真摯な心構えを以って、実際には、全身全霊を研ぎ澄まして、五感すべてで学ぶもので、荘厳な学習の場となります。同時に、献体された方々やそのご遺族に思いを寄せることによって、医の倫理についても深く学ぶ機会となります。これから医療人を目指す学習者だけでなく、すでに医療に従事している医師、医療従事者、研究者にとりましても、病気の原因を明らかにし、より良い治療法を開発し、広く社会に貢献して行く動機や意志を、さらに高める、大変貴重で重要な場です。
ご献体をいただきました故人の方々、そしてご遺族の皆様から、医学・医療の進歩と発展のためお力添えを頂きましたことに対し、改めましてここに感謝を申し上げます。
皆様のおこころざしを心の糧として、私ども、教職員と学生一同は、これからも精進を続けることを決意し、故人の御遺徳にお応えすることを、ここにお誓い申し上げます。 心安らかなご冥福をお祈り申し上げ、追慕の言葉とさせていただきます。 令和6年10月19日 埼玉医科大学 学長 竹内 勤
医学部 学生代表 中川 優太郎
本日は、ご遺族並びに、関係者の皆さまの御臨席を賜り、令和6年度解剖体慰霊祭が執り行われるにあたりまして、医学部学生を代表して、感謝の言葉を述べさせて頂きます。生前、ご自身の体を医学教育のために提供することを希望され、献体を成就された方々、そして、お志を理解し、解剖に同意してくださったご遺族の皆様に心より感謝申し上げます。 私達は4月より、人体の構造について学ぶ実習を行って参りました。ご遺体と対面した際、人体の解剖という貴重な経験をいただけることに深く感謝するとともに、一回一回の実習に真剣に向き合う覚悟を固めたことを覚えています。
実習室でご遺体に直接触れることで、講義や教科書で学んだ知識が深まり、教科書だけではわからない体の構造を鮮明に学ぶことができました。私達が普段食べ物を食べ、全身に血を送り、体を動かして生きている、その精密で理に適った仕組みが体中に詰まっていることに感動すると共に、当たり前のように生きていることがどれほど奇跡的なことかを実感しました。そして、その精密な仕組みが崩れて病気になってしまった時、元の元気な姿を目指して治療を行う医師という職業の意義を感じました。
実習の中で学んだことは医学的な知識だけではありません。実習を進めていくうちに、生まれる前の体の名残や手術や病気の跡、年齢に伴う体の変化が見つかり、その方の人生の一部を垣間見たような気持ちになりました。ご献体くださった方の人となりは存じ上げませんが、その方がどのような人生を送ってきたのか、考えずにはいられませんでした。
特に病気や手術の跡を見た時は、ご本人やご家族の大きな決断が伴う場面に、将来医師として関わることを思い、医師という職業の重みを実感すると共に、今後の学習に臨む気持ちを新たにしました。ご献体くださった方々のご厚意は私達にとって忘れがたく、また医師となる上で必要となる知識や心構えを深めるものとなりました。このご厚意に恥じぬよう、より一層精進して参ります。
この経験を私達一人ひとりがしっかり受け止め、患者さんやそのご家族に寄り添い、確かな医療を提供できる医師になることをお誓い申し上げます。医学の発展、また医学教育のために献体してくださった方々、そしてご遺族の皆様に改めて深く感謝申し上げますと共に、亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げて、感謝の言葉とさせていただきます。
解剖体慰霊祭にあたり、埼玉医科大学保健医療学部の学生を代表し、生前、その大事な御身体を捧げて下さった方々、そのご遺志を理解し、同意してくださったご遺族の方々に対し、心より深く感謝申し上げます。 保健医療学部には、看護学科、臨床検査学科、臨床工学科、理学療法学科の4学科があり、医療現場における専門家として患者様へ十分な医療を提供することが出来るよう、それぞれの専門領域について日々勉強しております。 私は現在、臨床検査学科の2年生です。将来、臨床検査技師として、患者様とそのご家族様、そして地域で暮らす全ての皆様の健康のために最善を尽くせる臨床検査技師を目指し、進歩していく医療知識や技術に引けを取らないように勉強に取り組んでおります。
臨床検査学科では「人体の構造と機能」という授業で、ヒトの体のつくりや働きを学修します。教科書だけではなく、実際に解剖学実習を通して、ご献体や標本をもとに学修に取り組み、大変貴重な学びを得ることができました。
この解剖学実習を通して、ご遺体を直接観察し学ばせていただくことによって、教科書だけでは理解できなかった構造をより詳細に理解することができました。そして、なにより、命の尊さを実感するとともに、人の命を預かる医療従事者になるという責任と、確かな覚悟をあらためて実感いたしました。
最後になりますが、私たち保健医療学部の学生は、ご献体いただいた方々の思い、そしてそのご遺志に賛同してくださったご遺族の皆様の思いに、心から感謝の念と敬意を表します。また、その皆様へのご恩と感謝の気持ちを忘れずに、それぞれの専門知識や技術、病気や怪我を抱える患者様やご家族様に寄り添う心を身に付けられるよう日々努力を重ね、社会に貢献できる医療従事者になることを、お誓い申し上げます。
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