解 剖 体 慰 霊 祭


令和7年度 埼玉医科大学解剖体慰霊祭

(令和
7年11月30日発行 埼玉医科大学学内報 第242号 より転載)


 

 

◇◇◇ 令和7年度解剖体慰霊祭 ◇◇◇

 

 令和7年11月1日(土)、第53回埼玉医科大学解剖体慰霊祭が創立30周年記念講堂においてしめやかに執り行われました。  

 今年度は、ご遺族、ご来賓、教職員、医学部、保健医療学部の学生等、約400名が参列し、令和6年7月1日から令和7年8月31日までの間にご献体いただいた262柱(篤志献体53柱、病理解剖69柱、法医解剖等140柱)の御霊に祈りを奉げました。  

 ご芳名奉読後、総合医療センターの別宮好文病院長が芳名録を祭壇に捧呈し、祭主である竹内勤学長が追慕のことばを、医学部2年 髙橋直暉さんと保健医療学部臨床工学科2年 屋良明実さんが学生代表として感謝のことばを述べました。その後、参列者全員が祭壇に献花し、総合医療センター病理部東守洋教授の閉会の挨拶の後、閉式となりました。  

 私達、全ての教職員・学生は、献体された多くの方々の崇高な思いと命の尊厳を各自の礎として、改めて心に刻むとともに、ご献体頂いた皆様のご遺志と、ご遺族の方々のご理解に深く感謝し、これからも精進を続け、故人のご遺徳にお応えすることを誓いました。

 


追慕のことば  

 埼玉医科大学 学長 竹内 勤  

 本日は、ご遺族ならびにご関係の皆様にご臨席を賜りまして、解剖体慰霊祭を開催できますこと、心より感謝申し上げます。解剖体慰霊祭は、2020年に新型コロナウイルス感染症が発生して以来、感染対策に万全を期し、出席者を制限し、時間を短縮してこの会を執り行ってまいりました。いまだに散発的な発生はみられますものの、コロナ前と同様の解剖体慰霊祭を執り行うべく準備を進めて参りました。関係各位のご尽力に感謝を申し上げますと共に、多くの皆様をお迎えして本日慰霊祭を執り行えることを大変嬉しく存じます。  

 この一年間に、多大なるご理解とご貢献を賜りました262名の皆様に、ここに謹んで追慕と哀悼の意を捧げます。医学のさらなる進歩のため、そして医学と医療に従事する人材を育成するため、ご貢献いただいた皆様の崇高なるご遺志に対し、心からの敬意と感謝を捧げるものであります。また、ご遺族の皆様におかれましては、強い絆で結ばれました方を亡くされた深い悲しみの中にもかかわらず、ご遺体の解剖をお許しいただきましたこと、重ねまして感謝申し上げます。  

 医学・医療を志すものにとって、解剖を通じて人体の構造と機能を学ぶことは、何にも変え難い貴重な学習の機会です。人工知能や仮想現実など、学ぶ・考える機会を増やす意味では価値がありますが、生命の大切さを理解する上で、実際の体験には遠く及びません。特に、人体の解剖は、医療の専門家となるために欠くことのできないものです。それに臨むにあたっては、真摯な心構えを以って、実際には、全身全霊を研ぎ澄まして、五感すべてで学ぶもので、荘厳な学習の場となります。同時に、献体された方々やそのご遺族に思いを寄せることによって、医の倫理についても深く学ぶ機会となります。これから医療人を目指す学習者だけでなく、すでに医療に従事している医師、医療従事者、研究者にとりましても、病気の原因を明らかにし、より良い治療法を開発し、広く社会に貢献して行く動機や意志を、さらに高める、大変貴重で重要な場です。  

 ご献体をいただきました故人の方々、そしてご遺族の皆様から、医学・医療の進歩と発展のためお力添えを頂きましたことに対し、改めましてここに感謝を申し上げます。皆様のおこころざしを心の糧として、私ども、教職員と学生一同は、これからも精進を続けることを決意し、故人の御遺徳にお応えすることを、ここにお誓い申し上げます。  

 心安らかなご冥福をお祈り申し上げ、追慕の言葉とさせていただきます。    

                                         令和7年11月1日

                                         埼玉医科大学 学長 竹内 勤

 

感謝のことば      

 医学部 学生代表 髙橋 直暉  

 本日は、ご遺族並びに関係者の皆様におかれましては、お忙しい中、令和7年度解剖体慰霊祭にご臨席を賜り、誠にありがとうございます。医学部学生を代表いたしまして、感謝の言葉を述べさせていただきます。生前、医学の発展のために献体をご決断くださいました故人の皆様。そして、愛するご家族を失う深い悲しみの中でも、その尊い御遺志を尊重し、私たちに貴重な学びの機会を与えてくださいましたご遺族の皆様に、心より感謝申し上げます。  

 私たちは今年の4月より、解剖学実習を行ってまいりました。初めて解剖実習室の扉を開けた時の厳かな空気、そして実習を始めるにあたり捧げる黙祷の際に感じた、故人の皆様とご遺族への感謝の気持ちは、生涯忘れることはありません。昨年から教科書や講義で人体の構造と機能を学んで参りましたが、実際に御遺体と向き合わせていただいて、机上の学習では決して得ることのできない、本当に多くの発見がありました。事前の知識が覆される場面も多く、自分の目で見て観察したものが正解であるということに、この実習で改めて気づかされました。  

 私達が学んだのは、単なる医学知識だけではありません。人体の無限の多様性と生命がいかに神秘的で、尊いものであるか。そして、それぞれの方が歩まれた人生の重みを感じ取ることができたことは、私たちにとってかけがえのない経験となりました。この実習を通じて、将来医師として患者と向き合う際には、知識だけに頼った治療をするのではなく、一人一人の体と心に、真摯に向き合っていかなければならないのだということを改めて実感することができました。  

 私たちが医師となるまでには、まだ5年の歳月があります。しかし、この実習で学ばせていただいたことや、故人の皆様から受け取った思いは、決して色あせることなく、これからもずっと私たちの心の中にあり続け、医師としての人生の指針になることと思います。  

 最後になりますが、改めまして、ご献体くださいました方々、並びにご遺族の皆様に深く感謝申し上げます。私たちは、この貴重な経験を胸に、日々研鑽を積み、生命の尊さを心に刻み、病に苦しむ方々の心に寄り添える、人間性豊かな医師になることをここに誓います。 

 ご献体くださいました方々のご冥福を心からお祈り申し上げまして、感謝の言葉とさせていただきます。

 

 

感謝のことば  

 保健医療学部 学生代表 屋良 明実  

 解剖体慰霊祭にあたり、保健医療学部の学生を代表して感謝の言葉を述べさせていただきます。生前、医療人育成のため、医学・医療の発展のために、その大切なお身体を捧げてくださった方々に心より敬意と礼意を表します。そして、そのご遺志に対しご理解と同意を賜りましたご遺族の 皆様に深く感謝申し上げます。  

 保健医療学部には、看護学科、臨床検査学科、臨床工学科、理学療法学科の4学科があり、医療現場における専門家として十分な医療を提供することができるよう、それぞれの専門領域について日々勉強しております。  

 私は現在、臨床工学科の2年生です。将来、医療と工学の幅広い知識と技術を身につけ、患者様や医療スタッフから信頼される臨床工学技士になることを目指し、勉学に取り組んでいます。  

 臨床工学科では、「人体の構造と機能」という科目でヒトの体のつくりや働きを学修します。解剖学実習を行うことによって、実際に献体を観察し、直接触れることができたことは大変貴重な学びとなりました。  

 解剖学実習を通して、講義や教科書で学んだ知識が深まり、教科書だけでは理解できなかった構造をより詳細に理解することができました。私たちの体の中には、細い血管や小さな臓器が詰まっており、それぞれが複雑な働きをして生きているということに感動するともに、命の尊さを感じました。そして、人の命を預かる医療人になるという責任の重さを実感いたしました。  

 最後になりますが、私たち保健医療学部の学生は、ご献体いただいた方々、そしてご遺族の皆様に心から感謝の念と敬意を表します。また、その皆様へのご厚意と感謝の気持ちをわすれずに、それぞれの専門知識や技術、患者様やそのご家族に寄り添う心を身につけられるよう日々努力を重ね、社会に貢献できる医療従事者になることをお誓い申し上げます。  

 亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げ、感謝の言葉とさせていただきます。

 


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